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コラム
2020.04.22
FUKUOKA Growth 2020 -福岡市2000年代の進運-
The Evolution of Fukuoka City in the 2000’s
「Fukuoka Growth」は、福岡市の成長性を示すさまざまなデータを紹介し、国内、世界における福岡市の存在感を高め、ビジネスや交流を促進することを目的として、情報戦略室が発行する無料のデータブックです。
日英併記で、世界の人々に福岡市を紹介するツールとなります。「Fukuoka Growth」で紹介したデータは、国内外からの問い合わせや福岡市を紹介する書籍など各所で活用されています。
「Fukuoka Growth」は、これまで2年おきに、2014年、2016年、2018年の3回発行しました。そして、シリーズの第4弾となる『FUKUOKA Growth 2020 福岡市2000年代の進運』を新たに発行いたしました。本レポートは、福岡市が成長を加速した2000年以降の軌跡を、人口、経済活動、国際化、生活の質、といった視点でデータを分析し、考察しています。
『FUKUOKA Growth 2020』 |
ダウンロード (pdf/約7.1MB) | |
発行日 | 2020年3月 | |
仕様 | ● 図表(福岡市の20年間の推移や他都市との比較を視覚化) ● 日本語・英語併記 ● 冊子(B5サイズ・108ページ) |
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ポイント | ● 2000年代、福岡市は特に国際化に関する指標が大きな伸び ● グローバルなネットワークの強みで、国際貿易や交流が大きく増加 ● 主要大都市の中でも高い経済成長率 ● 福岡市の人口増加率は国内トップクラス・東京一極集中に一石 ● 市民の高い満足度が示す住みやすさと「生活の質」 |
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担当 | ● 畠山 尚久 ● 山田 美里 ● 中島 知世 ● 唐 寅 |
✔新たな人材の可能性としての高齢者
✔多様な価値の創出可能性が広がる外国人
福岡市は、将来的な人口増が見込まれる数少ない大都市ですが、人材の構成は変化し、ますます多様化していくことが予想されます。若い世代(特に女性)比率の高さ
福岡市は、国内主要大都市の中でも、仙台市や京都市と並んで若者の割合(15-29歳比率)が高く、特に女性の比率は最も高くなっており、若い女性が多いという特性を有しています。(図1)
年齢別の社会増減(転入者-転出者の差)をみても、「20-24歳」の転入超過が特に多く、特に、近年は増加傾向にあります。大学卒業後の就職などで福岡市に転入してくる人が多いことがうかがえます。「15-19歳」も転入超過が多く、高校卒業後に大学入学などで福岡市へ転入する人が多いことを示しています。(図2)
大学生等の学生数は、政令指定都市では4位となる76,000人あまりを数え、人口千人あたり学生数は、京都市、東京23区に次ぐ大都市中3位です。(図3・4)
学生など若い人の転入は、これからの無限の可能性を秘めた世代、人材が集まっていることを示し、2020年代は、若い世代の多くが福岡市に残り、さまざまな分野で中心的役割を担い、他の世代を牽引しながら活躍することが期待されます。
女性若者比率の高さが示すように、福岡市は、女性の多さが強みです。就業面でみると、女性の有業率は幅広い年代で7割を超えており、2002年と比較してほとんどの年代で上昇しています。(図5)2002年にみられた「30-34歳」の有業率の落ち込み=いわゆるM字カーブの底にあたる部分は、主に結婚・出産によって離職せざるを得ない状況によるものですが、2017年には、落ち込みは「35-39歳」側へシフトするとともに、落ち込み自体浅くなり、台形に近付いています。晩婚化、出産年齢の上昇により、年齢的なシフトが起きた一方で、育児介護休業法*2の施行や企業等の職場環境改善などにより、結婚、出産後も仕事を続ける人が増えていることが背景にあると考えられます。
働き活躍する女性が増えることは、都市の活力を維持、高めるためにも大きな力となり、国も、「すべての女性が輝く社会づくり」を推進していることから、福岡市は、多くの女性が活躍する都市として、さらに存在感が高まる可能性があります。
人材供給源としての九州と東京圏
福岡市の転入超過は、特に九州からが多くなっていますが、対東京圏では、転出超過傾向であるものの(図6)、国勢調査の「5年前居住地」でみた東京圏からの転入者は、30代や40代の働き盛り世代、子育て世代が、2010年から2015年で増加傾向にあり、同じく福岡市から東京圏に転出した人は減少し、転出入差が、2015年にはプラス(=転入者が転出者を上回る)を示しています。(図7)対東京圏では、大学卒業後など若い人を中心に出ていく人が多いものの、社会人として経験を積んだ世代で福岡市に転入する人が増えていることは、人材の確保や地域の価値創出という点で明るい兆しといえます。
高齢者、外国人など新たな人材活用の可能性
一方、今も人口が増え続けている福岡市ですが、今後は、年齢構成が変化していくことが予測されます。(図8)2015年には「40-44歳」を中心に働き盛り世代が多くなっていますが、2025年にはピークは「50-54歳」中心となる見込みです。
若者、女性の活躍とともに、今後は高齢者など幅広い世代が活躍できる社会となることが重要です。2017年の65歳以上の有業率は、24.5%で約4人に1人の割合ですが、2002年からは5ポイント近く上昇しており、元気な高齢者の増加にともない、高齢者が長年培ってきた知識や技術をいかして活躍する場が広がることが期待されます。(図9)
このほか、福岡市は、在住外国人が増え続けており、人口に占める割合も徐々に高まり、この中には、次代の人材として、大学で学ぶ多数の留学生も含まれます。(図10)大学以外にも専修学校、日本語学校に多数の学生、生徒がおり、卒業後も福岡市で活躍する人材が増えることが予想されます。
福岡市の若者、女性比率の高さは、将来的な活力の維持、成長において大きな強みとなりますが、これに加え、増え続ける外国人や高齢者の活躍の場が広がることで、成長力はさらに高まります。また、九州とともに、大きな人材供給源となり得る東京圏からの人材の獲得も、今後さらなる拡大が期待されます。
地域の成長の指針である付加価値は、人が創り出すものです。世界規模で、人材の獲得競争が激しくなる中で、福岡市は、男性、働き盛り世代含め、多様な人材が、それぞれの強みをいかして活躍する都市として、これまで以上に多様な価値を創出する可能性を秘めています。
*1 働き方改革:「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が2019年4月から施行され、「長時間労働の是正」「正規・非正規の不合理な処遇差の解消」「多様な働き方の実現」という3つの柱からなる。
*2 育児介護休業法:妊娠・出産・育児・介護などが必要とされる時期に、離職する事なく働き続けられる環境を整備するための法律で、子どもの看護休暇が半日単位で取得可能になるほか、妊娠・出産・育児・介護などを理由とするハラスメント防止措置を義務化している。
✔域外との交流や経済拡大
✔都市の規模が拡大する中で抑えられる負荷
高い成長性を示す福岡市が、これまで、どのような分野が伸びてきたのか、2000年を100として、さまざまな指標について、その伸びの度合いを検証します。
※実数でなく指数のグラフであることに留意ください人材の集積と急速なグローバル化(図1)
福岡市の指標について、2000年を100とした伸びをみると、全ての基準となる総人口は、2019年時点で118.7と高い水準となっており、特に、女性が121.3と高くなっています。全国的にみても、福岡市の人口増加率は、大都市の中でもトップクラス(FG01図表2)です。
特に高い伸びをみせたのが、在住外国人の数で、258.2(2018年)と2000年比で2倍以上の増加となっています。近年は特に伸びが大きくなっており、今後も、人材面での福岡市のグローバル化が加速するとみられます。
全国的な少子高齢化の進展の中で、福岡市も、死亡者数が151.8(2017年)と高くなっているものの、出生数は110.7(2017年)と2000年から増加していることも特徴となっています。
また、市外からの転入者数が107.5(2017年)と、市外への転出者数94.6(2017年)を上回っています。こうした人の動きが、福岡市の人口の高い伸びにつながっているといえます。
港湾を持つ強みと経済成長(図2)
経済・産業面での指標では、特に、博多港の貿易額が418.9(2018年)と2000年から4倍以上の高い伸びを見せています。福岡市は、海に面し、さまざまな恩恵を受けていますが、貿易においても、国際拠点港湾*1である博多港を持つ強みが十分に発揮されているといえます。また、博多港の国際コンテナ輸送量が180.2(2017年)と大きく伸びており、国際拠点港湾であると同時に中枢国際港湾*2でもある博多港が、物流面でも大きな役割を担っていることがわかります。
福岡市が生み出す価値の総和である市内総生産額は、111.4(2016年)と、総人口の伸び(118.4)と同水準で高く、経済活動においても成長を続けていることがわかります。
一方、水産業における博多港水揚額や製造業出荷額は、2000年比でマイナスとなっており、経済が成長している中で、福岡市の産業構成では変化が進んでいることがうかがえます。
交通網の充実と国際ターミナル機能強化による交流拡大(図3)
運輸・交通の指標では、総人口の伸び(118.7)を上回る指標が多く、それだけ福岡市へ出入りする人の移動=交流人口が増加したことを示しています。
特に、福岡空港国際線乗降者数は、246.3(2018年)と2000年比で2倍以上となっており、国内線乗降者数が102.6(2018年)であることから、福岡空港乗降者数全体の伸び(120.9・2018年)の大部分が、国際線乗降者数によるものということがわかります。船舶による定期航路乗降数も含め、福岡市のグローバル化が大きく進展しているといえます。
また、福岡都市高速の通行量も146.9(2017年)と大きく伸びています。2012年に首都高速都心環状線に次ぐ国内2 番目の本格的な環状道路(内回りと外回りの双方向通行が可能)が完成したことにより、人やモノの移動時間が短縮され、利便性がますます向上したことから、今後もさらなる通行量の増加が見込まれます。
このほか、各公共交通機関の乗降者数は、いずれも大きく伸びており、地下鉄が156.2(2018年)、JR線が136.3(2016年*市内駅乗降者数合計)となっています。西鉄各線や路線バスは、2000年比ではマイナスであるものの、近年増加に転じており、特に貝塚線は、千早地区や沿線に近いアイランドシティでの人口増加などにより、伸び率が急上昇しています。
福岡市は、公共交通機関や高速道路網、鉄路、海路、空路の広域ターミナルなどの充実により、人やモノの移動の利便性が高まり、人の交流や経済活動の活性化につながっていることがわかります。
人口増に対して抑えられた負荷(図4)
市民の暮らしにかかる指標では、総人口の伸び(118.7)を上回るのは、ガス使用量の137.0(2017年)のみで、人口の増加に対して、ガス消費量は増加したものの、電力や上水道使用水量などは、微増にとどまっています。市民の省エネ・節水意識の高まりや技術の進化によって、それぞれ使用量の上昇を抑えられているものと考えられます。このことは、ごみ収集量についても顕著で、2000年比で77.8(2017年)と、市民や企業等のごみ減量への取組み、リサイクル技術の進展などによって、人口は増えても、収集量は大きく減る結果につながったとみることができます。
市民の環境への意識の高まりや技術の進化によって、人口が大きく伸びたにも関わらず、負荷となる指標は抑えられ、より環境に優しい高い生活の質の都市へと進化していることがうかがえます。
以上みてきたように、福岡市では、2000年から約20年の間に、多くの指標が「右肩上がり」を示しており、成長性を裏付けていますが、特に、国際化・グローバル化に関する指標や域外の人との交流に関係する指標の伸びが目立ち、内外での福岡市の存在感は急速に高まりつつあるといえます。
時代は令和となり、2010年代も終わります。福岡市の成長を次の時代へ継続するために、新しい成長の可能性を常に探っていくことが重要です。楽観はできませんが、多くの人材が集まって、可能性はより高まっているはずです。
福岡市は、どのような成長をみせるのか。さあ、2020年代が始まります。
*1 重要港湾のうち国際海上輸送網の拠点として特に重要として政令により定められていた港湾
*2 中枢的な国際コンテナ港湾で、国際ハブ港湾をいう。長距離基幹航路等世界に巡らされた航路網を有し、高頻度の寄港サービスが提供されるとともに、国内各地と世界とを結ぶ拠点となる大水深で高規格な国際海上コンテナターミナル群を有する港湾。
✔満足度の高い項目をデータで裏付け
✔技術の進化とともに「生活の質」の形も変化
都市に住む人が増え、特に、アジアにおいては、各地で人口数百万人~1000万人を超えるメガシティも多数あります。
一方で、住む人にとっては、都市の住みやすさは、必ずしも人口規模だけでは計れず、特に、最近では、世界でQOL(Quality of Life)、すなわち「生活の質」が重要視されています。福岡市も、第9次福岡市基本計画の中で、「生活の質の向上と都市の成長の好循環を創り出す」を、基本戦略の一つと位置付けています。福岡市は、人口が政令指定都市の中で5位に上昇するなど、成長を続けている都市ですが、東京をはじめ、大阪市、名古屋市などと比較すると、都市の規模は大きくはありません。人口が増え続け、さまざまな機能、サービスが集まる大都市でありながら、天神や博多地区など、中心部に都市機能が集中する、コンパクトにまとまりのある、住みやすい規模の都市と言えます。
都市の利便性と住みやすさは、福岡市民の多くが実感しているところです。
福岡市が毎年実施している、「市政に関する意識調査」が今年度も実施され、概要(速報)が発表されました(PDF)。
この中で、「福岡市が好きか」「福岡市が住みやすいか」「福岡市にずっと住み続けたい」という3指標を調査しており、今年度も、それぞれが9割を超える高い割合を示しました。(図1)
この調査は、福岡市民から無作為に対象者が抽出され、実施されたものであることから、性別や年代に関わらず、多くの福岡市民が、「福岡市が好き」であり、「住みやすい」と感じ、「住み続けたい」と願っていることになります。
福岡市は、住む人の郷土愛が強いと言われますが、福岡市は、比較的居住者の入れ替わりが激しく、転入者比率の高い都市です。居住年数が「5年未満」の市民の割合は36.5%と、主要大都市の中で最も高く、短期間の居住者が多い都市でもあります。(図2)
そんな、福岡市に住み始めて間もない人も多い市民の、9割以上が「好き」「住みやすい」「住み続けたい」と回答していることから、郷土愛だけでなく、転入者も、比較的早い段階で、福岡市に住んでみた実感として、その魅力を感じ取っているともいえます。
データで裏付けされる市民の満足度
福岡市民の多くが住みやすさを感じていますが、実際にどのような点で満足をしているかについて、同様に市政に関する意識調査から、満足度の高い項目をみると、「新鮮でおいしい食べ物の豊富さ」「買い物の便利さ」「自然環境の豊かさ」「医療機関の充実」「人の親切や人情味」が上位5項目となっています。(図3)
このうち、「新鮮でおいしい食べ物の豊富さ」は、福岡市は山や海が近く、九州各地とのネットワークも充実していることから、多くの新鮮な農産物や水産物が市場に集まることも、その理由の一つといえるでしょう。野菜や果実、水産物の市場の取扱も多く、国内有数の規模となっています。(表1)
さらに、こうした新鮮で豊富な食べ物を安価で購入することができ、国内の大都市の中で最も食費を抑えられることも、満足度が高い要因といえます。(図4・図5)
次に、「買い物の便利さ」は、福岡市は、三大都市圏の各都市と比較しても、コンパクトな都心部に多くの商業施設が集中しているのが特徴です。小売業の売場面積の市(都区)内上位2区の占める割合は高く、福岡市の場合、「博多区」「中央区」だけで市内の5割近くを占め、それだけ都心部への集中度が高いことがわかります。また、この小売業の売場面積上位2区に「住む人」も多く、「博多区」「中央区」の人口の市内に占める割合は27.5%と、三大都市圏の都市と比較して高く、それだけ「商住接近」のまちともいえます。このほか、市内各地には、地域密着の多くの商店街や、スーパーやショッピングセンター等も多数立地しており、中心部の高い商業集積とともに、「買い物の便利さ」の高評価につながっているといえるでしょう。
次に、利便性とは異なる都市の「生活の質」に関わる「自然環境の豊かさ」についてです。身近な自然の豊かさとして、市の中心部から半径10kmの緑と水の割合を示していますが、福岡市は、「生活の質」の高さで評価される世界の都市と同等の割合となっており、「自然環境の豊かさ」への満足度の高さは、海や川、山が身近にある魅力を、市民も十分に感じ取っていると考えられます。(図6)
次に、「医療機関の充実」が高い満足度となっているのは、市民が、病気等で医療機関を利用する際に、実感としてあるものと思われますが、実際に、人口1,000人あたり医療機関従事者(医師・歯科医師・看護師・准看護師)の数は、主要大都市で最も多く、人口あたり医療施設数、病床数も、上位であることから、身近に病院、医師などが多いことが、市民の安心を生んでいるものとみられます。(図7)
満足度5位の「人の親切や人情味」については、明確に裏付けるデータ等はありませんが、この項目は、まさに市民一人ひとりが、エビデンス(高い満足度の証)といえるでしょう。
以上のように、福岡市民の高い満足度は、福岡市の「生活の質」の高さを裏付けていますが、現在の評価が高い項目だけでなく、下位の項目はさらなる満足度向上が必要であることはいうまでもありません。
また、今年度は、上位5項目に次ぐ満足度の高さである「自然災害の少なさ」も、各地で毎年のように大規模災害が発生している昨今の状況を踏まえると、都市における防災面でのさまざまな備えを強化することも、「生活の質」向上と、より強く関わるようになると考えられます。(参考:URC2019年度総合研究「防災」)
Quality of Lifeの進化で、世界で存在感を
一方で、「生活の質」を構成する要素は、時代の変化とともに、今後は、これまでとは異なる視点も必要になると考えられます。時代の変化に合わせて進化しながら、より多角的な「生活の質」向上を目指すことが求められます。
特に、情報通信などの技術の進化はめざましく、サイバー空間とフィジカル空間が融合し、人が中心の新たな社会ステージ~Society 5.0*1~がさらに進展すると、人々の生活スタイルも大きく変化することが予想されることから、将来に向けて、市民の高い満足度を維持するために、次代の「生活の質」の検討も必要となります。
最新技術の活用によって、生活課題が改善、解決されることも期待されおり、さらなる市民生活の質的な向上が期待されるほか、生活の利便性を高める技術や働き方を支援する技術、バリアフリーでシームレスな移動を支援する技術などへのアクセスの高さも、今後は「生活の質」に関わってくると考えられます。
転入者が多い福岡市は、毎年多くの人が、福岡市の魅力に接して、高い「生活の質」を認識しています。
今後も、多くの市民にとって、さらに高い「生活の質」が感じられる都市を目指し、市民だけでなく、外国人を含む来訪者にとっても、高い「まちの質」が感じられるような、魅力的な都市となることが重要です。市民にとっての高い「生活の質」と、来訪者が感じる「まちの質」によって、より多くの人が福岡市に引き付けられ、福岡市の都市の成長につながります。
そして、都市の機能と住みやすさのバランスの取れた、次代のQuality of Lifeで、世界における福岡市の存在感を高めていくことが重要です。
*1 Society 5.0とは、2016年に策定された国の「第5期科学技術基本計画」で未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組」が掲げられ、情報社会(4.0)の次に来る新たな社会として、技術による社会そのものの変革としての意味合いを持つ
✔経済活動によるグローバル・ネットワークの時代
✔「グローバル・シティ」は都市の個性~福岡市らしさ~が重要
「太宰府」と聞いて、「太宰府天満宮」を思い浮かべる人も多いと思いますが、歴史を遡れば、大宰府政庁は、太宰府天満宮よりも歴史は古く、平安京(京都)や平城京(奈良)よりも古い時代に置かれていました。福岡は、1300年以上前から、海外の要人らを迎える「国際都市」でした。福岡市で遺構が確認された「鴻臚館」は、外国からの使節らを迎える大宰府政庁の迎賓館兼宿泊所として機能し、外国の通商に携わる人にも活用されていたようです。そして、太宰府市まで、幅員10mの官道が一直線に十数km続く、壮大な「外交ルート」があったとされます。今日、世界は「グローバル」という括りで語られるようになり、いかに世界とつながり、価値を生み出すかが、グローバル・シティ=国際都市の新たな宿命 となりました。
福岡市の国際化の進展は、URC2016年度総合研究「福岡のグローバルネットワーク」に、各種データとともに詳しく記載されていますが、国内地方都市で、最もグローバル化が進んだのが福岡市といえます(図1)。
福岡市のグローバル化についてみると、人的な面では、福岡市に住む外国人は、2003年から2倍近くに増え、出身国・地域別には、中国や韓国などが主流であるものの。近年はベトナムやネパールなど東南アジアも急増し、ますます多様化が進んでいます(図2・図3)。
主要大都市と比較すると、首都圏をはじめ、近畿圏、中部圏の三大都市圏の都市が上位を占め、その差は大きくなっていますが、福岡市は、地方都市としては、最も外国人が集まる都市となっています(図4)。三大都市圏との差は大きいものの、伸び率としてはこれらを上回る勢いで増え続けています(図5)。
日本では、外国人労働者の受け入れ拡大を目的とした改正出入国管理法が2019年4月1日に施行され、今後ますます在留外国人の増加が見込まれますが、地方都市でも、多様な人材が活躍できる社会づくりが求められます。
地方都市最大の在住外国人のいる福岡市は、既に多くの外国人のコミュニティも形成されており、新たに移住する外国人にとっても、溶け込みやすい都市であるといえます。
一方、2020年の東京オリンピックを控え、訪日外国人は増加の一途をたどっています。2018年には全国で訪日外国人が、初めて3000万人を突破しました。福岡市も、福岡空港や博多港から直接入国する外国人は増加を続けており、概ね全国の1/10の規模で、2018年には初めて250万人を突破しました(図6)。
2007年からの増加率は、全国平均(228.9%)を上回っており(255.4%)、福岡市の国際化が急速に進んでいる状況がうかがえます。このほかにも、新幹線等で、国内他都市から福岡市へ訪れる外国人も多数いると考えられます。
福岡市へ訪れる外国人の増加に伴い、福岡空港の乗降客数は過去最高を更新中で、国際線だけでも年間700万人に迫る勢いです(図7)。これは、国内の三大国際空港である羽田、成田、関西空港に次ぐ規模で、もちろん地方都市の空港としては最大です(図8)。
人的な交流、つながりとともに、国際都市として、お金やモノ、情報などのつながりもますます重要度が増しています。かつて、鴻臚館が外国との通商の窓口であったように、今も昔も、外国との交流は、通商、すなわち貿易・経済活動が重要な役割を担い、国際的なつながりを広めてきました。特に、現代は、「経済でつながり合うグローバル・ネットワークの時代」とも言えます。
福岡市のグローバル化について、経済的な面からみると、輸出入額は、博多港、福岡空港合わせて約4,7兆円(2018年)となっており、過去最高を更新中です(図9)。また、海上物流も、国際海上コンテナ取扱個数が95万TEU以上(2018年)と過去最高を更新中です(図10)。
アジアに近く、海運、空路どちらもグローバルなネットワークに直接つながるターミナルを市内に持ち、物流面でも重要な役割を担う福岡市の強みが発揮されている状況といえます。
貿易額からみた福岡市の輸出入の主要な相手国・地域についてですが、博多港の輸出先は中国、韓国、香港などが多く、福岡空港の輸出先は、中国、シンガポールなどが多くなっています。一方、博多港の輸入元は中国、アメリカ、韓国などが多く、福岡空港の輸入元は、台湾が多く、以下、中国、韓国などの順となっています(図11)。いずれも、アジア地域の占める割合が高く(図12)、福岡市の地理的特性やこれまでの経済活動におけるバリュー・チェーン(価値連鎖)の中で、アジア各地域と密接につながりを持ち続けていることがわかります。
以上のように、福岡市は、人的な交流や経済活動など、アジア地域と密接なつながりを持ちながら発展し、地方都市では国際化が最も先行している都市です。この勢いで、今後もグローバルなネットワークでの存在感を高めていくことが重要です。
ただし、福岡市は、三大都市圏と比較して、国際都市としての各種指標の集中度、規模は大きくはありません(『福岡のグローバル・ネットワーク』(URC2016年度総合研究報告書)P48)。知名度についても、福岡市は、依然として向上の余地があり、世界の主要な国際都市ランキング指標でも、「FUKUOKA」が扱われているものは、Global Power City Index(森記念財団)、MONOCLEなどに限られます。
人や経済の規模で存在感を示す都市がある一方で、規模にとらわれず、都市の個性や強みで、世界で存在感を示す都市もあります。福岡市も、強みや特性、先進性などで、世界にFUKUOKAを知ってもらい、さらにつながりを広げ、新たな価値を生み出す都市となることが、福岡市らしいグローバルな都市像といえます。
最近では、海外からの観光客が、交流面でも、経済波及効果の面でも、ますます重視されるようになり、国をはじめ各都市とも、誘致に力を入れていますが、観光への依存度が高い都市は、国家間の政治的な軋轢など、ひとたび問題が起きると、一気に観光客が激減し、地域に大打撃を受けるケースが散見されます。
観光振興も重要な課題ですが、グローバル・シティとして存在感を高めるためには、まず地域の活力を維持・発展させながら、世界とつながりを広げていくことが重要です。現代では、情報や価値をつなぐことは、鴻臚館の時代のように困難ではありません。都市の光る個性や強みは、世界中に、容易に届く時代です。グローバル・ネットワークの中で、まず都市の個性を磨いていくことが重要といえます。
2020年の東京オリンピックが終わった後、世界の目がやや日本から離れるであろう、翌年・2021年に、福岡市では、水泳の国際大会「FINA世界水泳2021」が開催されます。世界の目を再び日本へ、福岡市へ向けるべく、グローバル・シティ・福岡としての強みを磨いていくことが重要です。これからのグローバル・シティのあり方、その中で、福岡市は、どのポジション、地位を目指すべきかを模索しながら、福岡市の国際戦略、施策を検討していくことが求められます。
高い成長(回復)を遂げた福岡市にみる「人」が中心の経済活動
✔福岡市は主要大都市の中で特に高い成長率
✔「人」が中心の経済活動の可能性~人と技術の、融合と補完
福岡市の市内総生産*1は、最新の市民経済計算によると、約7.5兆円の規模を誇ります(2015年度)。2009年には約6.6兆円まで減少した後、ほぼ右肩上がりに増加を続けています(図1)。
福岡市は、第3次産業が盛んな都市と言われますが、経済活動別に生産額をみても、「卸売業」が約1.4兆円(構成比18.9%)で最も多いほか、「専門・科学技術,業務支援サービス業」(同12.2%)、「不動産業」(同11.7%)などが多くなっています(図2)。2006年度と比較すると、「専門・科学技術,業務支援サービス業」「不動産業」「保健衛生・社会事業」などの分野が大きく伸びるなど、サービス業を中心に多様化しており、最も高い構成比の「卸売業」の相対的な位置付けが、やや低下しています。
*1 市内総生産:1年間に市内で行われた各経済活動部門の生産活動によって新たに生み出された付加価値の額
福岡市の市内総生産額は、国内主要大都市*2では5番目の規模で(図3)、人口規模の順位より高くなっています。福岡市は、これまで「支店経済のまち」と言われてきましたが、地域で生み出す価値は、地方都市では最大です。東京都をはじめ上位都市との規模には差がありますが、人口規模の近い川崎市、京都市、神戸市と比較しても1兆円以上多く、唯一の7兆円台です。
*2 ここでは人口100万人以上の大都市
2009年以降高い伸び率を見せた福岡市の経済活動
図1に示したとおり、福岡市は、2009年度に市内総生産額が最低値となっていますが、これは他のほとんどの主要大都市で同様の傾向です(仙台市、横浜市のみ2008年度が最低値)。多くの都市は、2009年度以前から生産額が減少傾向にありましたが、2009年度に大きな落ち込みを招いた決定的な要因は、2000年代の経済を振り返る際に避けて通れない出来事、2008年9月に起きたいわゆる「リーマン・ショック」*3の影響と考えられます。この世界的な金融危機と同時不況は、国内経済にも大きな打撃をもたらし、その影響が本格的に現れたのが2009年度だったといえます。
国内各都市で市内(都内)総生産額が落ち込みましたが、各都市とも、民間企業等が改革や革新を進めるなどして総生産額は持ち直し、2015年度には、ほとんどの都市で2009年以前の水準を上回るまでに回復しています。2009年との総生産額の比較では、福岡市は仙台市に次ぐ伸び率となっています(図4左)。仙台市は、東日本大震災の復興事業等で、建設業等で高い伸びを示した特殊な事情があり、福岡市は、仙台市以外の都市と比較して、特に高い伸び率であったといえます。
各都市の伸び率と、経済活動の産業3分野の割合(2015年度)をみると、福岡市は、「第3次産業」の割合が最も高くなっています(図4右)。第2次産業割合の高い川崎市や京都市、神戸市なども順調に回復はしているものの、第3次産業が中心の福岡市の経済活動が、特に高い伸びを見せたことは、これからの日本経済のあり方についても示唆を含んでいます。第3次産業は、人が生み出す価値が基本要素です。世界中で効率化やさまざまな技術革新が進む中で、人のクリエイティビティ(創造性)がより重要な要素になっているとみることができます。
*3 リーマンショックとは2008年9月、米証券会社のリーマン・ブラザーズが経営破綻し、信用度の低い人を対象とした高金利の住宅担保貸付「サブプライムローン」問題による金融機関の損失拡大など、世界的な金融危機を引き起こした。米国を中心に消費や投資が急減し、その影響は世界中に広がり、世界同時不況となり、日本でもさまざまな影響を受けた。
福岡市は、人のチカラでより高い価値を創出する次代の産業構造へと進化を続けていますが、このことは、福岡市の税収面にも顕著に表れており、市税収入額は、2009年以降一貫して右肩上がりであり、2013年以降は6年連続で過去最高を更新中です(図5)。
2009年からの伸び率でみても、主要大都市の中で最も高くなっています(図6)。
Society 5.0*4時代における人と技術が融合・補完し合う福岡市のポテンシャル
福岡市のように、人のチカラで次代の価値を創造する経済活動が、都市の成長を促す一方で、ICT(情報通信技術)や昨今話題のAI(人工知能)の活用が広がることで、人の仕事がなくなるのではないかという懸念を指摘する人もいます。実際、技術の革新によって、経済活動、人々の仕事のあり方にもさまざまな変化が生じると予想されます。
「平成28年版情報通信白書」(総務省)によれば、「ICTの進化と未来の仕事(PDF)」の中で、AIは「少子高齢化による労働供給の減少が懸念される我が国では、介護や物流等の幅広い産業分野において、人手不足解消の切り札となる」とされ、経済活動の一翼を担う重要な存在として位置付けられています。雇用に与える影響については、「それまで人が行っていた業務をICTが代替する雇用代替効果と、ICTを利活用することによる 付加価値の向上や新規事業の創出によって雇用を増やす雇用創出効果の両面を持っている」とされます。雇用面においては、プラスマイナスの両面、つまり、求められる人材の内容が変わってくるということのようです。
野村総合研究所が、オックスフォード大学と行った2015年の共同研究*5(https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf)によると、「人工知能やロボット等による代替可能性が低い職業」であげられている職業は、専門的な知識、技術が必要な職種など、まさに人のクリエイティビティをいかす仕事があげられているほか、タレント、演出家、幼稚園教諭など、人がやることで、より付加価値の高いものを生み出す仕事なども並んでいます。これらの多くは、人が創り出す価値=第3次産業に分類されます。一方で、同じ研究の「人工知能やロボット等による代替可能性が高い職業」は、第2次産業と関わりが深い分野が多くなっています。
2016年に策定された国の「第5期科学技術基本計画」では、「Society 5.0」として、革新技術が社会基盤として生活の端々に根付くことで、人が中心の、利便性や快適性が増す未来社会が描かれています。経済活動の面では、生産性の向上や効率化が図られ、AI等によって自動化される仕事がある一方で、人は、よりクリエイティビティを発揮する仕事に集中することが可能になり、人でしかできない仕事は、今後も残り続け、その重要度が増すと考えられます。
このようにみてくると、人が中心の産業構造である福岡市が、経済成長面で他都市をリードしていることは、偶然ではないように思われます。福岡市には、次代を担う情報通信業などの集積も進んでおり、ICTやAIを支えるエンジニアの活躍を後押しする「Engineer Friendly City Fukuoka(エンジニアフレンドリーシティ福岡)」の取組みの一貫として、8月には「Engineer Cafe – Hacker Space Fukuoka -」もオープンしました。
今後も、革新技術は、人のクリエイティビティを補助・支援していくでしょう。人と技術が融合、補完し合う新しい経済活動の形を模索しながら、福岡市は、他都市をリードするモデルとなる可能性を秘めているといえます。
*4 Society 5.0:サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(内閣府)。 平成30年度URC総合研究『Society 5.0~福岡市における「人」が中心の未来社会』参照。
*5 株式会社野村総合研究所, News Release『日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~』参照。
政令指定都市人口7位から5位へ急上昇
Rapid Rise from 7th to 5th in Population Among Designated Cities
✔国内成長都市の双璧は「福岡市」と「川崎市」
✔首都圏の勢いと、地方都市で頭一つ抜き出る福岡市
全国的に人口減少が続く中で、福岡市は、2019年6月現在、158.9万人で、現在も増加が続いています。*
2000年時点で134.1万人、この20年近くで約25万人も増加したことになります。2010年からの人口増加率では、全大都市(政令指定都市+東京23区の全21都市)で最も高い人口増加率を示すなど、国内随一の成長都市と言われる大きな要素となっています。福岡市と近い人口150万人規模の大都市は、ほかに川崎市、京都市、神戸市があります。
福岡市は、2000年当時、人口は政令指定都市7位で、同6位の京都市とは12万人以上、同5位の神戸市とは15万人以上の差がありました。その後、他の都市を上回る勢いで人口の増加が続き、まず京都市を抜き、その後神戸市を抜いて、政令指定都市5位の都市なりました。
2000年代に入り、国内の成長都市の双璧と言えるのが、福岡市ともう1つ、川崎市です。
直近の2018年の人口動態をみると、自然増減(出生数ー死亡数)、社会増減(転入者数―転出者数)ともにプラスなのは、福岡市と川崎市のみです。
多くの政令指定都市が、社会増(転入者数が転出者数より多い)である一方で、自然増減はマイナス(死亡数が出生数より多い)の都市が多く、図の中でも、右上の社会増、自然増いずれもプラスのエリアにあるのはこの2市のみです。
このことは、両市が、多くの子育て世代に選ばれ、転入、居住する人が増えていることを意味しており、少子高齢化が進む日本にあって、特筆すべきことといえます。
福岡市、川崎市の国勢調査(2015年)における、「5年前の居住地」についてみると、両市とも市外であった人の比率が15%前後の高い水準で、人口の流動性の高さ、市外から転入する人の多さが、両市の成長を支えていることがわかります。
人口150万人規模の4都市を巡る人の動き
福岡市と川崎市に加え、京都市、神戸市を含む人口150万人規模の4都市の、他都道府県との人の移動状況、どのようなエリアから人が集まっているかをみてみます。
他都道府県の転入者数から転出者数を差し引いた転出入人数の差で、都道府県間の人の流出、流入状況をみると、福岡市は、特に九州各県からの転入超過が顕著であり、山口県など中四国を含むエリアから多くの人が流入しているのがわかります。
これに対し、川崎市は、東京都からの転入超過が大きくなっているほか、関西エリアから、東日本地域にいたる広い範囲で転入超過となっており、首都圏に転居する人に住む都市として選ばれ、発展していることがわかります。京都市や神戸市は、近年人口そのものは増加していませんが、近隣の府県など西日本地域を中心に転入超過が見られるのに対し、東京都など首都圏への人口流出傾向が強いほか、京都市は隣接滋賀県や大阪府にも流出していることから、人口が伸び悩む結果となっている状況です。※本文中の青色太文字の各都市名をクリックすると、各都市の拡大図が見られます
福岡市と川崎市の性格の違い 地域の中心都市とベッドタウン都市としての特性
高い人口集積を見せる福岡市と川崎市ですが、同規模4都市市民の従業地との関係をみると、その都市を従業先として流入してくる昼間人口をその都市に居住する常住人口で割った昼夜間人口比率(昼間人口/常住人口)は、福岡市が110.8%で、大阪市(131.7),東京都区部(129.8),名古屋市(112.8)に次いで高い拠点性を示しています。福岡市の昼間人口は、170万人あまりで、居住人口を16万人以上上回ります
これに対し、川崎市は、昼夜間人口比率が88.3%と、全政令指定都市の中でも、低い水準です。多くの人が市外へ通勤し、昼間人口は約130万人と、居住人口を17万人以上下回り、両都市の昼間人口の差は40万人以上に開きます。川崎市は、隣接する東京都区部に通勤する多くの人が、通勤のしやすさ、住みやすさなどを理由に居住するベッドタウンとしての性格が強いといえます。
昼間人口:常住する人口から、その地域から通勤者又は通学者 として流出する人口を差し引き、その地域へ通勤者又は通学者として流入する人口を加えた人口
A地域の昼間人口=(A地域に常住する人口-A地域から通勤者・通学者として流出する人口)+A地域へ通勤者・通学者として流入する人口
三大都市圏以外の地方大都市の状況 ~最大の人口規模を誇る九州とともに
福岡市は、人口規模が近い国内4都市の中では、高い人口増加率(=人口の集積)、高い昼夜間人口比率(=地域の拠点性)が両立する唯一の都市です。
地方都市にあって、福岡市がなぜ、際立って成長を続けているか、国内三大都市圏である首都圏、中京圏、近畿圏を除いた地方の主要な中心都市である札幌市、仙台市、広島市、そして福岡市の、周辺地域、後背地方の人口の集積度を比較してみます。
地域における都市の拠点性を示す一つの目安として、10%通勤・通学圏の人口をみると、福岡市と札幌市が多くなっていますが、対象となる市町村エリア(面積)は、福岡市は札幌市の1/3ほどと、それだけ人口密度が高く、都市の集積度が高い状況です。
後背地方の比較では、九州地方は、人口規模、密度ともに他地方との差は大きくなっており、福岡市は、約1,300万人が住む九州との結び付きの強さから、多くの人が転入し、成長の大きな後押しとなっていることがわかります。
福岡市は九州から首都圏への人口流出を防ぐ役割を担っているとも考えられ、これからも九州とともに、相互に発展する関係を構築し、自律した経済圏を形成していくことが重要といえます。
(参考)札幌市、広島市の他都道府県転出入状況(「5年前居住地」をもとにした都道府県間の人の移動)はこちら
*仙台市は調査対象時期の間に東日本大震災が起きたことで、特異な人の移動があったためここでは割愛した
「東京2020」以降のニッポン 首都圏か地方(福岡)か
2020年が近付くにつれ、川崎市をはじめ、東京都などの人口増加が著しく、首都圏がさらに膨張を続けている状況です。国は、東京一極集中を是正すべく、地方創生を支援し、地方移住を後押しし始めていますが、「東京2020」以降、人やモノ、情報などの動向に変化が生じる可能性もあります。
全国に、政令指定都市は20都市ありますが、このうち10都市は三大都市圏に含まれる都市であり、国内の大都市圏域としては、福岡市を含む圏域は、三大都市圏域に次ぐ規模の集積があるといえます。
首都圏とともに、地方都市随一の成長都市である福岡市は、首都圏とは異なる選択肢として選ばれ続けており、東京一極集中に一石を投じる存在として、今後も存在感を高めていくことが期待されます。