REPORT
刊行物・研究報告
総合研究
2019.06.10
Society 5.0 ~福岡市における「人」が中心の未来社会~
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発行日 | ● 2019年3月 | |
仕様 | ● 冊子(A4サイズ・95ページ) | |
担当 | ● 菊澤 育代 ● 畠山 尚久 ● 中村 由美 |
Society 5.0
~福岡市における「人」が中心の未来社会~
革新技術の発展は我々の社会において目覚ましい発展を遂げる中、Society 5.0という未来社会に注目が集まっています。政府の掲げるSociety 5.0とは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会の次に来る新たな社会として位置付けられ、昨今、耳目を集めるIoTやAI、ビッグデータ等、革新技術との親和性が想像されます。
技術が生活の端々に根付くことで、我々の生活の利便性や快適性が増すことが期待されていますが、Society 5.0の実現には、技術それ自体の機能や性能を語るだけでなく、技術が適用される社会の受け入れ方や、人々の反応・変化を踏まえたうえで、新たな価値が創造されるという認識を高めていく必要があります。
本研究では、個々の技術が成しうることを突き詰める代わりに、ひと・社会を基点に、技術が現実社会においていかにその機能を発揮しうるのか、影響を与えうるのかを、データや関係者への聞き取り結果を交えて検討しました。
【レポート内容一部抜粋】
福岡市を「人口動態」、「産業特性」、「都市構造」の3つの観点で見ると、生産年齢人口の減少や人口増による消費の増大、情報産業の集積、コンパクトな都市構造等の特性が浮かび上がります。それらの特性に対応しうるSociety 5.0の多様な可能性を視野に入れつつ、本報告書では、「テレワークを通じた柔軟な働き方の実現と企業の生産性向上」、「情報システムの活用による循環型社会の構築」、「Society 5.0における都心部の機能変化」の3つのテーマに絞り、「人が中心」のSociety 5.0を検討しました。
テレワークの課題や利点、効果等について検証するため、URCの研究員3名がテレワークトライアルを実施しました。その結果、「生産性の向上」に関しては、「計画的、集中的な作業実施による業務効率の向上」に効果が高く、また、「ワークライフバランスの実現」においては、移動時間の短縮に効果が認められました。
事業系ごみの排出抑制・分別促進には、排出者(レストランやコンビニ等)および消費者が、排出傾向を認知し、ごみの排出にかかる経済的負担や環境影響についての理解の促進ならびにデータ処理の生産性向上のため、関連データの一元管理およびデータの見える化が有効であることが示されました。
福岡市の事業所は、博多区・中央区に多くあり、特に「天神地区」「博多駅地区」に事業者・従業者ともに集積しています。天神地区は、半径500m圏で、市内の事業所の9.3%、従業者の11.1%を占め、博多駅地区も同様に、市内の事業所の8.2%、従業者の11.7%を占めています。
人の集まる都心部において、例えば「ショッピング」における新たな技術領域を見てみると、キャッシュレス決済による外国人利用の促進、ビッグデータ・AIを用いた小規模店舗のオンラインリテールの拡大、情報銀行によるOne to Oneマーケティングの促進等、多様な可能性が考えられます。
革新技術を取り入れることによって拓ける新しい生活の質という視点で、人々の働き方、持続可能な消費のあり方、都心部での過ごし方という3つの切り口で検討を行いました。それら異なる研究領域で示された知見を横断的に俯瞰すると、次の3つに集約されます。
1. 技術革新がもたらす社会は、人々の意識改革・行動変革を求める
・誰しも、慣れ親しんだ習慣的行動への安心感や、新しい試みへの不安感を持つものですが、Society 5.0の達成に、人々の意識改革および行動変革は必須です。
2. 技術革新は、技術間の互換性および社会との統合性を求める
・標準規格の設定、技術の互換性の確保、技術の統合等により、利用者の利便性が高まり、利用拡大による経済的効果が期待できるようになります。
3. 技術革新は包摂性を求める
・新しい技術は、専門性や高額な対価を求めるものではなく、誰もが利用できる状態にあることが求められます。