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コラム
2022.05.25
FUKUOKA GROWTH 2022
「Fukuoka Growth」は、福岡市の成長性を示すさまざまなデータを紹介し、国内、世界における福岡市の存在感を高め、ビジネスや交流を促進することを目的として、福岡アジア都市研究所 情報戦略室が発行する無料のデータブックです。
2014年以降2年おきに発行しており、この度、シリーズの第5弾となる『FUKUOKA GROWTH 2022 福岡市の人口集積-選ばれる都市』を発行しました。
本データブックは、住みやすさと高い成長性が両立する都市・福岡市の成長性を、人口集中、生活の質、都市の成長、といった視点から、データでわかりやすくご紹介しています。
『FUKUOKA GROWTH 2022』 |
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発行日 | 2022年3月 | |
仕様 | ● 図表(福岡市の成長指標や他都市との比較を視覚化) ● 日本語・英語併記 ● 冊子(B5サイズ・100ページ) ● 引用可能(「(公財)福岡アジア都市研究所(URC)」と出典を明示すれば、 報道や調査研究で引用可能。※第三者提供の写真・画像を除く。) |
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ポイント | ● 福岡市は政令指定都市の人口増加数・増加率ともに1位 ● 市民の96.5%が「住みやすい」と感じる生活の質の高さ ● 外国人、若者など多様な人材が集積 ● コロナ禍でも堅調な国際貿易 ● 数々の指標が示す生活の質の向上と都市の成長による好循環 |
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担当 | ● 畠山 尚久 ● 山田 美里 |
福岡市民の97.7%が、福岡市を「好き」と答えています。
福岡市民の96.5%が、福岡市が「住みやすい」と答えています。
福岡市民の93.0%が、福岡市に「住み続けたい」と答えています。
いずれも、90%を超える高い割合です(図1)。
福岡市は、人口増加率が政令指定都市で1位となるなど、高い成長性が注目されていますが、福岡市に住む人にとっての満足度の高さも大きな特徴です。
都市の評価は、人口の規模や経済的な指標だけでは測れません。社会の変化や価値観の多様化により、都市の評価指標も変化しています。世界では、QOL(Quality of Life)、すなわち「生活の質」が重要な評価基準となり、社会の豊かさや生活の質の指標も加味されます。特に、最近では、そこに暮らす人々の満足度・幸福度(Well-being*)の観点から、国を、地域を見つめ直そうとする動きが広がっています。
福岡市民の90%以上が、福岡市を好きと感じ、住みやすさを実感している事実は、福岡市に対する市民の満足度の高さを表しています。それは、生活の質に関するさまざまな指標からもうかがい知ることができます。
*Well-being(ウェルビーイング)とは、16世紀のイタリア語「benessere(ベネッセレ)」が始源であり、「よく在る」「よく居る」という意味をあらわす概念(日本版Well-being Initiativeより)
生活環境のうち、福岡市民の満足度が特に高いものは、食、買い物、自然環境、医療環境、交通などです(図2)。そのほかの多くの項目が、5年前から数値を伸ばしており、福岡市の生活の質は、さらに高まりつつあります。
満足度の高い項目は、都市の利便性と自然環境の豊かさの両立、優れたバランスに起因するもが多いようです。自然環境の豊かさについては、大都市でありながら海や山に近い地理的な特性に加え、身近な自然を感じられる場所として、都市公園の数が増え続けていることも影響している可能性があります(図3)。
コストと時間の節約で生まれるゆとり
豊かな自然の恵みである農産物や水産物が集まり、新鮮な食品を安価に購入できることは、食の満足度の高さの要因の一つです。支出に占める食費の割合であるエンゲル係数は、大都市の中で最も低く抑えられています(図4)。
福岡市の物価は主要大都市の中で最低水準です(図5)。住居費も、東京や大阪など国内3大都市圏と比較すると安価です(図6)。加えて、通勤時間は、30分未満が約6割を占める(図7)など、職住接近の住環境が整っています。
このように、福岡市は、利便性は高く、生活コストは低い、暮らしやすい都市といえます。生活コストを抑え、通勤などの時間の束縛が軽減されることで、日々の生活にゆとりをもって向き合うことが可能になります。
安心して暮らせる環境
医療環境の満足度も高く、身近な診療所から大規模な総合病院まで、市内各所に医療機関が立地しており、市民が受診する際の利便性の高さが評価されていると考えられます。医療従事者も多く、人口あたり医療従事者の数は主要大都市で最多です(図8)。
このように、福岡市民の満足度が高い項目については、さまざまな指標から裏付けることができますが、相対的に満足度が高くない項目も、関連指標の推移を見ると確実に改善していることがわかります。
「犯罪の少なさ」に関しては、福岡市の刑法犯認知件数は、2015年比で約半分と大幅に減少しています(図9)。また、交通事故件数も、近年急速に減少しています(図10)。
高い生活の質が生み出す好循環
福岡市は、都市の成長と生活の質の好循環を生み出すことを戦略としています(福岡市基本構想)。人口、経済指標などにみられる成長性と、市民の生活環境に対する満足度の高さは、福岡市が戦略に沿って確実に前進していることを示しています。
福岡市の生活の質の高さが、国内外から多くの人を惹きつけ、さらなる都市の成長エンジンとなることが期待されます。新たな秩序や価値観が広がる世界においても、多様な人々が、多様な満足感、幸福感を実感できる都市であり続けることで、福岡市の持続的な成長が可能となります。
国内には多くの外国人が暮らしています。都市別の在住外国人数は、首都圏や大阪圏など三大都市圏の都市が多いですが、福岡市はこれらに次ぐ規模で、地方都市では最多です(図1)。
福岡市の在住外国人数は、増加傾向が続き、2020年には4万人近くにまで増え、2021年はコロナ禍の影響によりやや減少したものの、依然として高い水準を保っています(図2)。2005年と比較すると2倍近くで、伸び率は東京23区、大阪市、名古屋市を上回ります(図3)。
進む出身国・地域の多様化
福岡市に住む外国人は、中国出身者が3割超で、ベトナム、韓国、ネパールなども一定割合を占めており、アジアを中心に、出身国・地域の多様化が進んでいます(図4)。
在住外国人数上位大都市の、出身地域を比較すると、いずれもアジア地域が多いものの、福岡市は、特にネパールを含む「その他アジア」の割合が高いのが特徴です(図5)。
外国人と日本人の次世代人材が集まる福岡市
在住外国人の年代構成をみると、福岡市は、20代以下(合計)が過半数を占め(54.8%)、他都市と比較しても、若い世代の多さが際立っています(図6)。福岡市は、若者率が最も高い都市(シリーズ02・図2)ですが、在住外国人も、若い人材が多く、次代を担う人材が豊富で多様な都市といえます。
福岡市は学生が多い都市で、福岡市内や近隣市町の大学等で学ぶ留学生が多いことが、若い外国人人材が豊富な要因の一つで、留学生数は2000年の2倍以上に増えています(図7)。
都道府県別の留学生数では、福岡県は東京都、大阪府に次ぐ規模で、大学や専修学校、日本語学校などの教育機関で、多くの外国人が学んでいます(図8)。
福岡市経済の一翼を担う外国人就業者
在住外国人の増加とともに、福岡市で働く外国人も増加しており、福岡市近隣市町の福岡都市圏全体で、35,000人以上の外国人が働いています(図9)。2020年には、2011年の3.5倍にまで増加しており、外国人は、福岡市経済において重要な役割を担っています。
多様性✕多様な可能性 “ダイバーシティ・ネクスト”の福岡市へ
福岡市には出身国・地域も多様な多くの外国人が暮らし、日本人とともに次代を担う若い人材が集積していることで、多様な人材、感性が交わり新たな可能性が広がることが期待されます。
天神ビッグバン、博多コネクティッドが進行し、福岡市の都心部には新たなオフィスが増えていますが、既に完成したビルに外資系企業が進出するなど、これから福岡市に暮らす人、働く人は、ますます多様化していくことが予想されます。
福岡アジア都市研究所は、2020年度の総合研究「ダイバーシティ・ネクスト」の中で、人の属性の多様さに加え、価値観や選択肢が多様であることが、都市のイノベーションを生み出すエンジンになると位置付けました。多様なバックボーン、価値観を持つ人が集まることで、新たな価値の創造が促されるだけでなく、変化やリスクに柔軟に対応するレジリエントな社会の構築にもつながります。
福岡市が持つ人材の多様性を、これからの都市の成長に結び付けていくことが重要です。
福岡市の人口は1,612,392人で、2015年からの人口増加数、人口増加率とも、政令指定都市の中で1位です。
大都市の中でも高い世代の比率
年齢構成をみると、福岡市の年少人口(15歳未満)は13.4%、生産年齢人口(15~64歳)は64.5%で、大都市(政令指定都市+東京23区)の中で3位であるのに対し、65歳以上の老年人口は、21都市中19位で、福岡市は、高齢化が比較的緩やかで、若い人が多く住む都市であることがわかります。(図1)
若い人の中でも、15~29歳の人口比率(若者率)は、福岡市は17.6%で、大都市の中で最も高く(図2)、特に、女性の若者率は、全人口の1割近くと高く、福岡市が若い女性の多いまちであるという事実を示しています。
若い世代の転入で成長する福岡市と東京23区
全国的に少子高齢化が進み、政令指定都市の中でも、人口の減少が始まっている都市がある一方で、福岡市の人口が増加を続けている要因の1つは、多くの若い人が転入していることです。
2020年の住民基本台帳の年齢別転出入状況をみると、若者率の対象年齢である15~29歳では、いずれも転入者が転出者を大きく上回っていること(転入超過)がわかります(図3)。多くの若い人が、大学等への進学や、就職を機に、福岡市に集まっている状況がうかがえます。福岡市の若者率は、特に女性で高いですが、男女別の年齢別転出入状況をみると、女性の転入超過がより大きい(参考)ことがわかります。
福岡市は、若い人を中心に、多くの人が集まっていますが、福岡市と同様、高い人口増加率を示す東京23区の年齢別転出入状況をみてみると、人数の規模は全く違いますが、若い人の転入超過など、福岡市の傾向と良く似ています。福岡市も東京23区も、域外から多くの若い世代を惹きつける都市であることが共通しています。
一方、福岡市は、若い世代以外にも、40代後半などで転入超過がみられるのに対し、東京23区は、転入超過は10代と20代のみで、その他の年代ではいずれも転出超過です。広く指摘される「東京一極集中」とは、23区内に限れば、若い人の集積を意味し、そのほかの世代も含めると、23区周辺のエリアを含む首都圏を指すことになります。
福岡市の成長は九州とともに
福岡市との転出入について、主な地域別に状況をみると、転入者が多いのは、福岡都市圏やその他福岡県内、そして九州他県など、九州内の地域です(図5)。
福岡都市圏との間では、転出超過となっていますが、年齢別で30代や40代が転出超過であることから(図3)、子育て世代が郊外に引っ越している状況がうかがえます。
一方、東京圏との間でも、転出超過です。
地域別の転出入状況を、さらに年齢別にみると、九州(福岡市外県内含む)との間では、15~29歳などで若い世代では転入超過であるのに対し、東京圏との間では、同じく若い世代で転出超過となっています。
福岡市の人は、進学や就職を機に東京圏へ行く人が多いものの、それを上回る多くの人が、九州から福岡市に転入し、結果的に、若い人が増える構図となっています。九州全域でみると、福岡市は、若い人材が東京圏などへ流出するのを防いでいるともいえます。
東京圏に関しては、若い世代以外は、転出入は相対的に拮抗しています。若い世代の東京圏への流出を防ぐことで、福岡市と九州にさらなる活力が生まれることが期待されます。
外からの人材と交わるからこそ生まれる新しい価値
若い世代で、進学や就職に際して、志を持って、福岡市に移り住む人が多くいる一方で、福岡市に住み続けている人も多くいます。市外から転入する人と、住み続ける人が交流し、それぞれの志が融合することで、新たな発見や価値が生まれることが期待されます。
若い人が集まることは、次代の人材が活躍する機会が広がることを意味します。国内大都市の中で、最も若い人材の比率が高い福岡市は、それだけ未来の大きな可能性を秘めた都市であるといえます。
福岡市の人口は1,612,392人で、政令指定都市の中では5番目に位置しています。(図1)
2015年からの福岡市の人口増加数は73,711人、人口増加率は4.79%で、いずれも政令指定都市トップです。福岡市は、国内で最も人口が増加している都市の1つといえます。 (図2・3)
一方、政令指定都市には含まれませんが、東京23区は、1000万人近い人口が集中する日本最大の都市でありながら、2015年から2020年の人口増加率は福岡市を上回っています。 コロナ禍で、2020年の東京23区への人口流入の動きに変化が見られたものの、周辺の神奈川県、埼玉県、千葉県の一部を含めた首都圏への人口集中は加速 しています。
福岡市の人口増加は、2010~2015年から継続しており、政令指定都市の人口上位の都市の中で、10年間同じ勢いで増え続けているのは福岡市だけです。(図4)
東京23区とともに、国内3大都市圏の中心都市である大阪市、名古屋市も、この5年間で増加数が伸びており、特に大阪市は6万人超と、増加が加速しています。
一方、各地方圏の中心都市である札幌市、仙台市、広島市の人口は増加していますが、福岡市ほどの勢いはなく、2015~2020年の増加数は、やや落ち着いてきた印象です。
周辺地域から大都市への人の流れはこれまで各地でみられてきましたが、首都圏など3大都市圏、そして福岡市への人の流れが際立ち始めています。福岡市は、九州の中心都市から、さらに次のステージへと成長=Growthしつつあります。
東京23区、大阪市、名古屋市を中心とする3大都市圏には、日本の人口の約半数が集中しています。
その中で、東京23区から直線距離で約900km、大阪市から約500km離れた福岡市の人口が増加していることは、国土軸のバランサーとしての福岡市の役割が強まっていることを示しています。(図5)
3大都市圏から離れた福岡市 は、海を隔ててアジアの各地域とつながるゲートウェイの位置にあり、日本の中で、福岡市の相対的な位置付けは、今後ますます高まるとみられます。