REPORT
刊行物・研究報告
コラム
2014.12.19
FG-GlobalCityStatus
2014年7月から2014年12月にウェブ上で発信した『FG-GlobalCityStatusコラム』シリーズは、以下よりお読みいただけます。
01 | 02 | 03
01「アジア-福岡-東京という新しい価値の潮流」
福岡市は、古くから海外との交流玄関口として2000年に及ぶ歴史を有する地にあります。
現在は、人口150万人の日本で第6番目の大都市であり、1300万人が暮らす九州地方における拠点都市として、人口増加率や若者比率が高い活力にあふれた都市です。
また、住環境に優れたコンパクトシティであることから、福岡のまちづくりは、国連ハビタット福岡本部から、都市化が進むアジアの人口100万人規模の都市づくりの参考指標となる「福岡モデル」として紹介されています。
発展著しい東アジア地域と日本を結ぶ玄関口にあり、日帰りも可能な空路3時間以内の海外都市圏人口比較では、福岡市(福岡空港)は東京(成田・羽田)を大きく上回ります(図1-1・1-2)。これらの都市圏だけで7千万人を超える人が暮らし、その背後には数億の市場が広がります。
現在は、人口150万人の日本で第6番目の大都市であり、1300万人が暮らす九州地方における拠点都市として、人口増加率や若者比率が高い活力にあふれた都市です。
また、住環境に優れたコンパクトシティであることから、福岡のまちづくりは、国連ハビタット福岡本部から、都市化が進むアジアの人口100万人規模の都市づくりの参考指標となる「福岡モデル」として紹介されています。
発展著しい東アジア地域と日本を結ぶ玄関口にあり、日帰りも可能な空路3時間以内の海外都市圏人口比較では、福岡市(福岡空港)は東京(成田・羽田)を大きく上回ります(図1-1・1-2)。これらの都市圏だけで7千万人を超える人が暮らし、その背後には数億の市場が広がります。
資料:福岡空港ビルディング株式会社(2014年7月現在)
資料:福岡空港ビルディング株式会社、成田国際空港、羽田空港国際線旅客ターミナル、「Demographia」(2014年)、各都市数値
*内訳はページ下の別表参照
*内訳はページ下の別表参照
日本の人口減少が見込まれる中、海外に活路を見出す国内企業は、三大都市圏(東京・名古屋・大阪)に集中する機能や資源の再配置を考える必要が出てきています。多くの企業の本社がある首都圏の次の拠点として、アジアに近い福岡市は、非常に重要な位置にあることが見えてきます。
福岡市には、既に多くの企業等が支店・支社を構えていますが、これまでの国内各地の営業拠点の1つという位置付けに加えて、世界、アジアの中の福岡という特別な意味を持つ拠点となる可能性を有しています。
福岡市には、既に多くの企業等が支店・支社を構えていますが、これまでの国内各地の営業拠点の1つという位置付けに加えて、世界、アジアの中の福岡という特別な意味を持つ拠点となる可能性を有しています。
また、アジアの大都市は、域内総生産の内訳において、製造業比率の高い都市が多くなっていますが(図1-3)、日本は、依然として研究開発分野などの高い「付加価値力」を強みとしており、価値の高いものづくりのために、アジアと日本を結び付ける架け橋として、今後も福岡市の役割は増していくと考えられます。
資料:Global MetroMonitor(2012)
*福岡市は福岡市経済計算による市単独の割合
*福岡市は福岡市経済計算による市単独の割合
福岡市は、今年春、国家戦略特別区域に指定され、国の規制改革等の施策が、総合的かつ集中的に展開されます。特に、福岡市は「スタートアップ都市」として、創業や企業の新たな事業に取組やすくするさまざまな支援策が検討されています。
特区における優遇策を活用しながら、アジアを視野に、新たな事業を展開するメリットが、さらに大きくなると考えられます。
海外の高度人材や起業家、投資家の目が、福岡市に注目する機会が増えることも予想されます。
特区における優遇策を活用しながら、アジアを視野に、新たな事業を展開するメリットが、さらに大きくなると考えられます。
海外の高度人材や起業家、投資家の目が、福岡市に注目する機会が増えることも予想されます。
資料:Monocle’s Quality of Life Survey
福岡市は、今年、英モノクル誌が選ぶ「世界で最も住みやすい25の都市ランキング」において、初めてベスト10入りを果たしました(図1-4)。高い生活の質でしっかりと世界に存在感を示し、評価を得ています。
アジア各都市と結び付きを強めながら、福岡市の存在感は、今後ますます高まっていくと期待されます。
アジア各都市と結び付きを強めながら、福岡市の存在感は、今後ますます高まっていくと期待されます。
資料:福岡空港ビルディング株式会社(2014年5月)
*所要時間は最速便 *注釈のある都市以外は「Demographia」(2014年)による都市圏人口 *「済州」は済州特別自治道人口(済州特別自治道統計・2013年12月)
*所要時間は最速便 *注釈のある都市以外は「Demographia」(2014年)による都市圏人口 *「済州」は済州特別自治道人口(済州特別自治道統計・2013年12月)
資料:成田国際空港、羽田空港国際線旅客ターミナル(2014年5月)
*所要時間は最速便 *注釈のある都市以外は「Demographia」(2014年)による都市圏人口 *「済州」は済州特別自治道人口(済州特別自治道統計・2013年12月) *「ユジノサハリンスク」は全ロシア人口センサスにおけるユジノサハリンスク市並びに同市管轄区人口(2010年) *「ウラジオストク」はウラジオストク市の数値(2012年・ウラジオストク市) *「ハバロフスク」はハバロフスク市人口(2009年・ハバロフスク地方HP)
*所要時間は最速便 *注釈のある都市以外は「Demographia」(2014年)による都市圏人口 *「済州」は済州特別自治道人口(済州特別自治道統計・2013年12月) *「ユジノサハリンスク」は全ロシア人口センサスにおけるユジノサハリンスク市並びに同市管轄区人口(2010年) *「ウラジオストク」はウラジオストク市の数値(2012年・ウラジオストク市) *「ハバロフスク」はハバロフスク市人口(2009年・ハバロフスク地方HP)
02「コンパクトシティ福岡の役割」
世界的に都市部へ人口が集中する傾向が強まっており、OECDの予測では、2050年までに世界人口の7割が都市部で生活する見通しです。人口100万人以上の大都市圏域は、特にアジア地域に多く、国・地域別にみると、中国が90を超え最多で、日本も上位10カ国に含まれます(図2-1)。
資料:Demographia World Urban Areas (May 2014 Revision)
*上位10カ国及び東アジア・東南アジアの国・地域のみ
※オランダは福岡空港より直行便があるため特掲
*上位10カ国及び東アジア・東南アジアの国・地域のみ
※オランダは福岡空港より直行便があるため特掲
アジア・東南アジアの大都市圏は規模が大きく、数千万人が暮らすメガシティが多く存在しますが、700万人の規模を超えると、その都市は集積の不経済を伴う可能性があるとの指摘もあります ((OECD テリトリアル・レビュー 「グローバル経済における都市の競争力」2006年、p.2))。また、欧米諸国と比較して、アジア各国では、人口上位2圏域の差が大きく、最大都市圏に過度な集中が多くみられます。最大都市圏に住む人の割合は、例えば韓国のソウル-仁川圏域には国民の半数近くが居住するほか、アジア各地のメガシティも軒並み20%以上の集中度となっています(図2-2)。
資料:Demographia World Urban Areas (May 2014 Revision)
今後も、各国・地域の最大都市(メガシティ)には、人やモノ、投資が集中し、経済活動の中心となることは間違いありませんが、過度な集中が限界を超え、都市基盤の整備が追い付かず、生活環境の悪化や貧富の格差が拡大する問題も懸念されます。
成長著しいアジア各国においては今後、メガシティではない、第二、第三の比較的小規模な都市圏域が、それぞれの特性や強みをいかしながら、経済成長を牽引することが求められます。
成長著しいアジア各国においては今後、メガシティではない、第二、第三の比較的小規模な都市圏域が、それぞれの特性や強みをいかしながら、経済成長を牽引することが求められます。
福岡市は、国内第5位の都市圏域を持ち、人口減少社会の日本にあって、人口増加率は国内で最も高く、今後も成長が見込まれる都市です。急速に肥大化したアジアのメガシティ群と比較すると、面積は2、3割程度とシンガポールや香港並みのコンパクトさを維持しています。また、人口密度も1平方キロあたり5千人以下とアジアの主要都市と比較すると低く、市街地と自然環境のバランスのとれた適度な居住環境を保っています(図2-3)。
資料:国勢調査(2010年)
*はDemographia World Urban Areas (May 2014 Revision)による都市圏域
*はDemographia World Urban Areas (May 2014 Revision)による都市圏域
都心部に機能が集中し、公共交通機関による移動が容易な職住が近接した都市環境は、「人」の暮らしやすさと「ビジネス」のしやすさを兼ね備えています。
福岡市に住む外国人は、9割以上が、「(どちらかと言えば)住みやすい」と、その生活環境を評価しています(図2-4)。
福岡市に住む外国人は、9割以上が、「(どちらかと言えば)住みやすい」と、その生活環境を評価しています(図2-4)。
資料:福岡市外国籍市民アンケート(2011)
福岡の都市の規模は、アジア諸国の第2の都市圏域と同等です。今後、持続的な成長が課題となるアジア諸国において、経済発展と環境保全のバランスが取れた、健全な地方都市の成長モデルとしての役割を、福岡は担っています。
今年、福岡市は国家戦略特区「創業のための雇用改革拠点」に指定されました。
福岡市においては、メガシティではその巨大さがゆえに難しい、集中的な戦略の実行が期待されます。コンパクトな福岡市だからこそ可能な「大胆」かつ「スピーディ」な特区メニューを展開し、国際的な創業の拠点としての機能を強化しながら、アジアモデルのコンパクトシティとしての地位を盤石にするチャンスが訪れています。
福岡市においては、メガシティではその巨大さがゆえに難しい、集中的な戦略の実行が期待されます。コンパクトな福岡市だからこそ可能な「大胆」かつ「スピーディ」な特区メニューを展開し、国際的な創業の拠点としての機能を強化しながら、アジアモデルのコンパクトシティとしての地位を盤石にするチャンスが訪れています。
03「価値」をアジアへ、世界へ輸出する海上物流の拠点
福岡市は、アジアに近い港湾物流の拠点として重要な位置にあり、輸出入取扱貨物量、貿易額とも増加傾向が続いています。
取扱貨物量は、輸出、輸入とも最大の相手国は中国ですが、その他の国は輸入と輸出で傾向の違いがみられます(図表3-1)。輸入品目は、衣類や農水産品、材料、部品などの品目が、それぞれの産地、製造国から入ってきており、輸出品目は、完成自動車を除き、部品や原材料など製品として完成する前の段階のものが多くなっており、グローバルなバリューチェーンの中で、福岡市が重要な役割を担っていることがわかります(図表3-2)。
資料:平成25年博多港統計年報
資料:平成25年博多港統計年報
一方、総重量でみると、輸入量が輸出量の1.7倍あまりの量が入ってきているのに対し、金額面でみた場合、輸出額・輸入額の出入の状況は逆転し、輸出額は輸入額約1.8倍となり、8000億円以上の“貿易黒字”が生み出されており、付加価値の高い輸出品目が多い状況がうかがえます(図表3-3)。
輸入額は、中国のウエイトが大きくなっていますが、輸出額は中国とともに韓国のウェイトも大きくなっています。
輸入額は、中国のウエイトが大きくなっていますが、輸出額は中国とともに韓国のウェイトも大きくなっています。
資料:貿易統計(門司税関)
国内の他の港湾と比較すると、博多港は、貿易総量としては全体の23位に過ぎないものの、貿易額はベスト10入りし、特に輸出額の占める割合が高く、国内港湾の7位(貿易額上位港湾中2位)の比率です。輸出量に対して輸出額の高さが特徴で、重量単価では輸出量トップの名古屋港より高く、国内5位(同4位)となっています。海外港湾との参考比較として、米国において福岡都市圏と同規模の後背地人口を擁するシアトル港をみた場合、総貿易額では博多港はシアトル港を上回っています(シアトル港は全米貿易ランキングで24位)。輸出量については、博多港はシアトル港と同等であるものの、輸出量当たりの金額は2倍以上と価値が高くなっています(図表3-4)。
また、他の貿易額ベスト10港湾が周辺に重工業地域を擁していますが、福岡市は、工業地域を持たないなかで、高い輸出金額を「価値」によってささえていることがわかります。
資料:港湾別貿易額ランキング国土交通省・(2012年),2013, American Association of Port Authorities
*シアトルは2013年値・貿易額は1$=108円(2014年10月24日日本銀行公表レート)で計算
*シアトルは2013年値・貿易額は1$=108円(2014年10月24日日本銀行公表レート)で計算
資料:港湾別貿易額ランキング国土交通省・(2012年),2013, American Association of Port Authorities
*シアトルは2013年値・貿易額は1$=108円(2014年10月24日日本銀行公表レート)で計算
*シアトルは2013年値・貿易額は1$=108円(2014年10月24日日本銀行公表レート)で計算
博多港の貿易額でみた相手地域は、国内平均と比較して、輸出入ともアジアに特化した傾向となっており、経済成長が続くアジア地域の活力を取り込みながら、貿易黒字を生み出していることがわかります(図表3-6)。中国に対する輸出価額の多い品目は自動車、電気機器、科学光学機器などが上位で、韓国では電気機器、一般機械、プラスチックなどが上位を占めています(図表3-7)。
資料:貿易統計(財務省・門司税関)
資料:貿易統計(門司税関)
福岡市は、アジアのメガシティのような大規模な製造業の集積はなく、博多港の規模・設備は中国、韓国等の海外の大規模港湾と比較すると小さいものですが、国内・地域の付加価値力を背景に、大きな輸出額を生み出しています。
また、大都市で海上の物流拠点となる港湾を有していない都市も多い中で、福岡市は都心部に港湾を持つ世界でも稀な都市です。博多港は、アジアと日本を結ぶ重要な位置にあり、古くから貿易港として栄え、物流だけでなく海上国際航路におけるゲートウェイとして、国際旅客数は国内最多です。
近年では、上海との高速RORO船を活用した高速物流も実現し、東京港から貨物船で7日程度かかるものが、博多港からは最短28時間で上海に到着する定期便が就航するなど、速達面での優位性が際立っています。
アジアの活力を取り込むことは、国内経済の重要な課題です。博多港の持つ地理的近接性および速達性を活かしながら、今後もより高い「価値」でアジア・世界との結び付きを強めることは、福岡市の発展のための重要戦略であるといえます。