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コラム
2024.07.16
アジアンシティ・ディスカバリー
アジアンシティ・ディスカバリー
東アジア、東南アジア地域は、今も人口の急拡大が続き、1,000万人を超える人口のメガシティが数多く存在します。
一方で、福岡市は、市域人口が約165万人(推計人口2024年5月時点)、都市圏人口でも約265万人(同)と、規模の上ではこれらのメガシティとは大きな差があります。
しかし、今は、規模で都市を評価する時代ではなく、コンパクトな都市でも高い生活の質や利便性を有し、世界で存在感を示している都市もあり、メガシティより人口規模は小さくても、存在感があり、個性豊かな魅力を持つ都市は、急成長する東アジア・東南アジア地域にも、今後増加していくと考えられます。
一方、東アジア・東南アジア地域の都市情報は、首都やメガシティのものが中心で、それらに続く都市の情報はあまり目にする機会はなく、まだ知らない都市が数多くあることも事実です。
「アジアンシティ・ディスカバリー」では、数多ある東アジア・東南アジア地域の都市群から、福岡市同様、メガシティではない規模の、“ネクスト・シティ”とも言える都市の情報を収集し、福岡市との近似性や違い、福岡市との交流可能性などを「探索」していきます。
シリーズ01: アジアのまだ知らない都市群
1.収集対象都市の抽出
①行政境界によらない「都市エリア」での比較
国や地域によって、「市」の概念が異なり、行政境界による「市」の比較では、面積規模など比較対象として適当でない場合もあることから、ここでは、世界990の都市圏域ごとの人口をまとめた統計報告「Demographia World Urban Areas」(DEMOGRAPHIA)を使用し、同報告の定義による東アジア・東南アジア地域の都市エリアから抽出しました。
同報告書の「都市エリアの定義」は、「連続した、またはほとんど連続した既成市街地」とされ、建物の連続性などをもとにしており、市町村などの境界線とは異なり、より都市エリアとしての実体的なまとまりに近いものです。
同報告書における「福岡都市エリア」の人口は 2,368,000人(2023年)で、行政区分による「福岡都市圏」の人口264.2万人(同推計人口)とは異なります。
なお、本調査の性質上、福岡都市圏域以外の国内都市エリアは、調査対象から除外しました。
*各都市エリアは、実際の行政境界による市域を越える場合もあれば、行政境界の市域の方が都市エリアを越え大きな場合もあります。
②人口規模・人口密度からみた“ネクスト・シティ”選定
東アジア・東南アジア地域の、“ネクスト・シティ”の情報収集の対象を抽出するために、第一段階として、まずは都市を形成する最もわかりやすい要素として、人口規模・集積状況から選定を行います。
メガシティではなく、福岡市に近い規模の集積状況であることを条件とし、『「第3極」の都市』と同水準の人口規模150万人~400万人の都市エリアを選定しました。
東アジア・東南アジア地域で、人口1,000万人以上のメガ・シティは18都市あり、400万人以上になると50都市にも及びます。一方で、150万人~400万人の都市エリアは、45都市が該当しました。
ただし、人口規模は近似でも、都市エリアが広大で、人口密度が低い都市は性質が異なるため、k㎡あたり人口2,000人未満を除外しました(参考:福岡市4,695人/k㎡)。
この結果、調査対象として、次表の40都市を選定しました。国・地域別の内訳は、中国が24都市と最も多く、次いでインドネシアが5都市などとなっています。
該当都市一覧は以下の通りです。
図表1 東アジア・東南アジアの福岡市に人口規模が近い都市エリア一覧
図表2 各都市エリアの位置
2.抽出40都市の基本情報
抽出した都市の基本情報として、都市エリア中心市の人口(行政境界による市人口)、人口増加率(同・1年あたり)、域内総生産額(同・GRP)は以下の通りです。
①中心市(行政境界)人口と人口増加率
Demographia World Urban Areasの都市エリア定義が、行政境界によらない市街地の集積地域のため、市域境界が都市圏域を越える都市もあり、その分市の人口規模ではメガシティ規模になるケースもあります。特に、中国の多くの都市は、行政境界の市域人口が、都市エリア人口を大きく上回る大規模な市となっています。
人口増加率は、中国各都市はほとんどが増加傾向であるのに対し、韓国やインドネシアの都市は減少しています。
図表3 40都市の中心市(行政境界)の人口
図表4 40都市の中心市(行政境界)の人口増加率(1年あたり)
②市内総生産(City’s Gross Regional Product)
各都市エリア中心市の市内総生産(USドル換算)は、中国の大規模な都市や台湾の都市では、市内総生産が1000億ドルを超える都市も多くみられるのに対し、福岡市は約700億ドル(2020年度)で、概ね中位の規模です。また、東南アジアの都市は、市内総生産額は低くなっています。
一方、市域人口で除した1人あたりGRPは、福岡市は約43,000ドル(2020年レート)で、台湾2都市に次ぐ高さとなっています。
図表5 市内総生産 図表6 市民一人当たりGRP
Source:各都市/Each City
ここまで、人口規模で抽出した都市エリア人口が福岡市に近い40都市の人口、GRPをみてきましたが、市域境界の人口が大きかったり、経済活動規模が小さかったり、必ずしも福岡市と比較することが適当でない都市エリアもあります。
今後は、各都市の個別の概要を紹介しながら、福岡市との類似性や比較の妥当性などをみていく予定です。