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リレーコラム 15. 福岡の発展をささえる都市情報

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[March 3, 2016] Fukuoka Growth 2015-2016 GlobalCityStatus リレーコラム   View this post in pdf pdficon_small (1.03MB)

15. 福岡の発展をささえる都市情報
~URC都市政策資料室38年間の歩みとこれから~

✔都市情報は政策立案のための重要なリファレンス
✔URC都市政策資料室は職員のみならず市民に開放
✔都市とアジア情報を主軸とした「知の交流拠点」へ
テキスト:都市政策資料室司書 山崎 三枝
URC都市政策資料室(2016年3月現在)

URC都市政策資料室(2016年3月現在)

オープンデータが進む現代にあっても、インターネットで入手できない情報はまだまだ多くあります。とくに、都市にかかわる情報は、図や写真も多いため、とりわけ過去の資料については原典を直接あたらない限り、取得することは極めて困難です。この状況は、オープンデータが今後進んでも、なかなか変わることはないと思われます。URC都市政策資料室(以下「資料室」)は、福岡市が全国に先駆けて策定した記念すべき『第一次総合計画』以降の計画書や関連資料がすべて揃っている資料室として、総合計画の改定や新たな政策立案のためのリファレンス提供に寄与してきました。もちろん、URCの都市政策研究を推進するための、「知のストレージ」としての役割を担い続けていることは、いうまでもありません。

本コラムでは、資料室が現在の姿に発展した経緯を記すとともに、今後の展望についても考えてみたいと思います。

資料室は、昭和53年12月に福岡市総務局企画調整部の資料室として福岡市役所北別館の8階に設置されました。設置の目的は、企画調整部に寄贈される福岡市内外の行政資料をはじめ国の答申等資料、シンクタンクの報告書等の散逸を防ぎ、必要な時に即座に使用できる体制を整えるためです。その他、企画立案に関わる図書、雑誌を収集していました。当時の広さは25平方メートル、蔵書は約3,500冊、雑誌42タイトルで閲覧席2つというささやかなもので、同じフロアは他に電算室があるだけの静かな空間でした。翌年度には専任の司書を置き、本格的にサービスが開始され、8月からは広報誌、「資料月報」(隔月刊)が発行されました。

昭和63年8月、「福岡都市科学研究所(現在の福岡アジア都市研究所も含め「URC」)」が設立されたため、資料室は同じ建物の6階にできたURCに併設されることになりました。資料室の面積は約90平方メートルに拡大し、蔵書は約10,000冊、雑誌80タイトル、閲覧席11となり、さらに福岡市職員に限られていた利用は一般開放となりました。

その後、シンクタンクに併設する資料室として、研究や事業推進に必要な資料・情報をその都度収集・提供し、資料管理システムの効率化をはかり、URCの機能に応じてスペースの縮小、拡大、サロン化等が行われています。

平成16年4月、URCとアジア太平洋センターとが統合され、「福岡アジア都市研究所」となったのを機に、資料室もアジア太平洋センター資料・情報室と統合し、約180平方メートル、蔵書約33,000冊、雑誌320タイトル、閲覧席18と大きく変わりました。その後、平成18年4月、160平方メートル、閲覧席9と少し縮小し、現在に至りますが、蔵書約40,000冊、雑誌260タイトルとなっています。

情報資料連絡会参加機関一覧(一般開放のみ)

「光吉健次回顧展-明日の建築と都市展-」(2015年3月)

「光吉健次回顧展-明日の建築と都市展-」(2015年3月)

資料室の強みは、「第1次総合計画以降の福岡市の総合計画及び総合計画関連資料」などの重要資料が揃っていることが挙げられます。昨年、福岡市役所1階ロビーおよび県立美術館において「光吉健次(URC初代理事長 以下「初代理事長」)回顧展-明日の建築と都市展-」が開催された際には、資料室も全面的に協力しました。福岡市における初代理事長の活動についてのまとまった情報を、資料室の持つアーカイブ機能によって幅広く提供することができました。

左) 平成26年度第1回ミニセミナー「『福岡・天神時間旅行』上映会」(2014年5月14日) 右2枚) 平成27年度第3回ミニセミナー「日本の玄関、大陸の玄関:戦前福岡・釜山の都市政策」(2016年2月24日)

左) 平成26年度第1回ミニセミナー「『福岡・天神時間旅行』上映会」(2014年5月14日)
右2枚) 平成27年度第3回ミニセミナー「日本の玄関、大陸の玄関:戦前福岡・釜山の都市政策」(2016年2月24日)

また、資料室の情報提供の形も、資料を受け入れし、並べて利用者を待つだけでなく、平成18年より随時「ミニセミナー」(小規模講演会)を開催し、都市に関する知識の普及に努めています。講師は開始時からしばらくは、URCの内部職員が務めていましたが、最近は外部講師も招へいし、提供する話題の幅も広がっています。

広報誌として「URC資料室だより」を月刊で発行しています。資料室の話題だけではなく、URCの調査研究の話題やURCが事務局業務を受託している「福岡地域戦略推進協議会(FDC)」の話題も掲載しています。

そして今、資料室は新たな一歩を踏み出そうとしています。インターネットの普及など近年の情報化の進展等もあり、資料室に求められているものが変わってきているのではないかと感じています。資料・情報の取捨選択を行い、蔵書をコンパクト化し、空いたスペースをミニセミナーを発展させた情報発信のために活用する準備をしています。利用者のコワーキングスペースとしての機能も考えています。しかし、知の源泉としての資料が軸足であることは変わりません。これまで収集した貴重な資料や、URCのアーカイブを形成し、活用することも大切です。アジア太平洋センターの資料・情報室が独自に収集した資料は、国内他図書館に所蔵していないものが多いのです。これらの活かし方をどうするか、今後、他図書館との協議を行いながら資料の継承・活用方法を考えていきたいと思っています。

科学技術イノベーションの飛躍的な進歩とともに、今後10から20年後には、現在の約半分の職業がなくなると予測されています。図書館や資料室も、今後大きく変わると思われますが、消滅することはないのではないでしょうか。なぜならば、イノベーションは、結局のところ、人と人の交流・接触によって生み出され続け、図書館や資料室は、イノベーションを創出する場として活用されるべきだと思うからです。URCの資料室も、都市とアジア情報に軸足を置いた「知の交流拠点」へと変革していけるように、今後とも引き続き取り組んでいきます。

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