リレーコラム 13. 福岡マラソンへの期待


13. 福岡マラソンへの期待
~ランナーの目線から~
✔東京マラソンを皮切りに市民マラソンがランニング人口を牽引
✔順調に増加する市民マラソンも、やがて淘汰の時代へ!

一昨年創設されて2回目の新しい大会ですが、前回は落選してしまいましたので、今回が初参加でした。3年前までは、フルマラソン大会に出るなど全く思いもしなかった私ですが、今では大都市の市民マラソンに積極的に申し込むようになっています。そのような背景も加味しながら、ランナー目線で「福岡マラソン」について見てみたいと思います。
市民マラソンの新設ラッシュ
福岡マラソンが開催される11月は秋~初春のフルマラソンのシーズンインの月になります。福岡マラソンは今回2回目のまだ新しい部類の大会になりますが、2015年も「おかやまマラソン」「金沢マラソン」「富山マラソン」「さいたま国際マラソン」など、大きな市民マラソンが新設されています。
月刊誌「ランナーズ」を発行するアールビーズ社の統計によると日本陸連公認コースのフルマラソンは2004年の49から2014年は72大会に増えています。特に、東京マラソンが始まった2007年以降では、2倍以上の増加を見せています。
ランニング人口の拡大
笹川スポーツ財団の「スポーツライフに関する調査報告書」によると、2014年の調査から、成人のジョギング・ランニングの週1回以上の実施者は550万人と推計されています。
マラソンブームの起爆剤となった東京マラソン開設以降の2008年から、習慣的なジョギング・ランニングの実施者は全体として増加傾向にあります。(【図表1】参照)
東京マラソンの成功を手本として、それまでの主流だった郊外型のコース設定が都市型へと変わってきているそうで、普段走ることのできない見慣れた都心部や繁華街のコース設定は、多くの市民ランナーを惹きつけていると言えるでしょう。
また、一般的に、市民マラソンが新設された開催地でのランナー人口は急激に増えると言われており、これまでマラソン大会に出場したことがなかった層が、地元の一大イベントととらえて、完走に向けて習慣的に取り組む様になるそうです。最近では、出走権の抽選の際に「地元優先枠」を設ける大会も増えており、このことも地元のランナー人口の増加に一層拍車をかけていると思われます。(福岡マラソンでは、定員10,000人中2,000人が福岡・糸島市民優先枠)
ちなみに、私の習慣的なランニングのきっかけは、3年前に高校時代の同級生との飲み会の席で健康管理の話になり、ランニングを習慣にしている者・ランニングを習慣付ようとして挫折した者が意外と多く「皆でレースに出場しよう。それをモチベーションに練習しよう。」という酔っ払い特有の威勢の良い話になった事からです。
それまでの私は、普段の不摂生からくる体重増加を気にして、時々思い出したようにランニングをしていましたが、長続きするはずもなく、大会には出場したこともエントリーしたこともありませんでした。
酒席での誓いを機に、少しずつトレーニングして最初は10kmの大会に何度か出場・完走し、以後ハーフからフルマラソン完走へとステップアップできました。10km大会に初めて出場した時はゴールまでずいぶん遠く感じたものでしたが、今では普段の練習で10km以上の距離を走るようになっています。
比較評価されるマラソン大会
近年新設された市民マラソン大会は、運営手法や企画が既存の大会に似たものが増えていると言います。大会の創設が決定してからレースの開催に至るまでには長い準備期間が必要であり、その間、担当者たちが東京マラソンをはじめとした、既存の人気を博している大会を視察・出走してお手本にしてくるそうですので、必然的に評価の高い大会の「良いとこ取り」となって似たものになってくるのでしょう。
前出のアールビーズ社が運営するインターネットのポータルサイト「ランネット」では、全国の主要な市民マラソン大会への出場申込み等、市民ランナーに便利な機能のほかに、実際に参加したランナーがその大会を100点満点で評価する「大会レポ」というコーナーが存在します。「インフォメーション」・「会場」・「スタート、コース、フィニッシュ」・「記録、表彰」・「全体の感想」といったテーマで24項目の運営状況を評価するシステムになっています。(【図表2】参照)
これは、いわゆるランナー目線での大会の採点簿とも言えるもので、大会主催者にとって重要な参考データになると言われています。
では、この評価に基づいて福岡マラソンの相対的な位置を見てみましょう。
下の表は新設された大会と福岡近隣都市の大会、そしてベンチマークとなる東京マラソンを加えた直近3年間の評価一覧表です。
地元の福岡マラソンの評価(随時更新)を見ると、初回の2014年「67.2」今回の2015年「86.7」(2015/12/18現在)と大きく改善しており、主催者の運営向上の取組が飛躍的な伸びにつながっているものと思います。しかしながら、90点台のポイントを獲得している大会も多いことから、相対的に福岡マラソンはまだまだ改善の余地があると言えるでしょう。
評価項目を個別に「ランネット」HPで見ると、「スタート前の給水」「見やすく正確な距離表示」「参加賞」「コストパフォーマンス」「次回大会の参加」に改善の余地があるようです。
ランナーからの提言
一昨年新設された福岡マラソンは、抽選倍率4.3倍と人気のある大会です。日本国内でも抽選倍率4倍超の大会は限られ、福岡マラソンの他には、東京(11.3倍2016年)・大阪(4.5倍2015年)・神戸(4.3倍2015年)・京都(4.3倍2016年)しかありません。
福岡はコンパクトシティと言われるだけに、九州一の繁華街天神の道路をスタートし、都市部そして自然豊かなエリアへと変化に富むコースを走る魅力は、唯一無二と言ってよいでしょう。そして、他県から訪れるランナーにとっては、旅行地としての魅力にもあふれた大会だと思います。
一方で、昨今の市民マラソンの新設ラッシュによって、開催日の重複や近接による併願当選者の辞退問題などが新たに表面化しています。インターネットによって複数の大会エントリーが簡単にでき、各大会の情報も容易に得られる今では、ランナーの選別は一層進み、魅力のない大会はやがて淘汰されていくと言われています。
福岡マラソンをさらに魅力ある大会に育てていくためには、前出の「ランネット」のランナーレポートをはじめとしたランナーの声にしっかり耳を傾ける必要があるでしょう。
出場経験のある地元ランナーの一人として、福岡マラソンのますますの発展を心から願ってこのレポートの結びといたします。
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過去のコラム: http://urc.or.jp/category/research_publication/publication/fukuokagrowth-2015-2016-column