RSS Feed

リレーコラム 04.「9軸ワイヤレスモーションセンサ」を開発した…

FG2015_pagebanner04

FG3_2015-2016_topbanner_02

H26SougouKyousou_banner_280x90

20140611FGbook_banner

SRP-BODIK

[July 22, 2015]  Fukuoka Growth 2015-2016 GlobalCityStatus リレーコラム   View this post in pdf pdficon_small (868KB)

04. 「9軸ワイヤレスモーションセンサ」を開発した地場企業の活躍
福岡市の「知識創造都市」としての一面

✔ソフトウェア研究開発拠点百道浜地区の情報通信業従業者割合は46.1%
✔世界レベルの技術を誇る福岡の先端技術企業「株式会社ロジカルプロダクト」
テキスト:特別研究員 岡田 允
当研究所では、福岡市の「グローバル創業・雇用創出特区」政策にも絡む「スタートアップ都市」づくりに向けた政策課題について調査・研究を実施してきました。
その中で、これまでの福岡市の都市・産業政策の評価を踏まえて「スタートアップ都市」づくりの政策課題を抽出しようと、福岡ソフトリサーチパーク事業の充実過程やゲーム産業等の集積動向などをまとめました。

fggcs2015_04_data02fggcs2015_04_data01
福岡市早良区百道浜における福岡ソフトリサーチパーク事業は、NEC、日立製作所、富士通、旧松下電器産業(現パナソニック)、日本IBM、麻生、韓国の大宇、旧福岡シティ銀行(現西日本シティ銀行)の6社・グループの誘致に成功し、後に(株)ソニーが加わったことでシステムLSI設計あるいはソフトウェアの研究開発拠点となり、2012年の百道浜エリアの情報通信業の事業所数は65事業所、従業者数は5,707人、割合は46.1%に及びます。システムLSI関連産業の福岡市内立地件数は、2000年の18社から、2010年の136社へと急増するなど大きな成果を上げるとともに、福岡市が新しい価値を創り出す知識創造都市としての成長基盤を創り出しました。

fggcs2015_04_photo01福岡ソフトリサーチパークで、大手電機メーカーの情報開発部門技術者間および大学等との研究交流、さらには地場中小企業との研究交流の仲介役を果たしたのが、九州大学の協力の下で福岡市が設立した(公財)九州先端科学技術研究所(略称ISIT、旧(財)九州システム情報技術研究所)です。

fggcs2015_04_photo02ISITは、当初、①第一研究室(システムLSI設計技術)、②第二研究室(ソフトウェア設計技術及びインターネット技術)、③第三研究室(ロボット技術及びヒューマンインタフェース技術)の3研究室でスタートしましたが、その後、④ナノテク研究室や⑤有機光デバイス研究室を設置し、拡充されています。さらに、福岡県と九州大学による「シリコンシーベルト福岡」プロジェクトの中核施設である「ふくおかIST」の(公財)福岡システムLSI総合開発センター等関連施設の福岡ソフトリサーチパークへの立地にも寄与したものと考えられます。

ところで、そのISITや(公財)福岡システムLSI総合開発センターの開発研究プロジェクトに参加しながら、研究開発力を向上させ、先端技術企業へ転換を果たした地場企業があります。
それは、福岡市南区に所在する(株)ロジカルプロダクト社(従業者数23人)です。

1994年に電子機器設計会社として創業した同社は、電子機器設計、特に無線関係の受託業務が中心で、経営の安定と成長のためにも自社製品を持ちたいとの強い意向を持っており、2000年度の競争的資金プロジェクト(公募元:中小企業総合事業団)「超小型実働ひずみ履歴計測装置の開発…」をISIT、九州大学、他企業1社と共同で提案・実施しました。2004年には、知的クラスター創成事業の「超低消費エネルギー化モバイル用システムLSIの開発」への研究協力企業として参加し、さらに、2006年にも戦略的創造研究推進事業、翌年に知的クラスター創成事業(第2期)、2008年には地域イノベーション創出研究開発事業に参加しています。

9軸ワイヤレスモーションセンサ:運動計測からロボット、人間工学、バーチャル・リアリティ、リハビリテーションまで、様々な用途に応用可能。

9軸ワイヤレスモーションセンサ:
運動計測からロボット、人間工学、バーチャル・リアリティ、リハビリテーションまで、様々な用途に応用可能。

この間の2006年には、ロボット産業振興会議のロボット開発技術力強化事業「ロボット用低消費電力無線通信モジュールの開発と応用」で小型無線モジュールを開発しています。これは、ロボット用の無線モジュールで、それまで有線でコントロールしていた「ロボットコンテスト」などがワイヤレスでできるようになっていたものが、ノイズに弱く不便であったため、新たにISITや福岡工業大学等と共同で開発したものです。
この「小型無線モジュール」が、国立スポーツ科学センターの目に留まり、センサーと組み合わせてハンマー投げの室伏広治選手のトレーニングに用いられたのを契機に、改良を重ね2009年に「9軸ワイヤレスモーションセンサ」という自社製品を発売しました。

スポーツコーチングカム: カメラへの直接タギング入力可能。映像のDB化、必要部分の切り出し等の作業が劇的に簡略化。

スポーツコーチングカム:
カメラへの直接タギング入力可能。映像のDB化、必要部分の切り出し等の作業が劇的に簡略化。

さらにISITとの共同研究で、ロボット産業振興会議の開発支援を得て、筋電・心拍等の生体計測用ワイヤレスモーションセンサやセンサー情報を解析して表示するシステムを改良することで種々のスポーツに使われるようになり、現在では、ほぼ全国の大学で使用される状況となっています。なお、海外ではメンテナンスが難しいため、販売は国内に限られているそうです。同社の会社概要の取引先には、東京大学をはじめ全国の大学名が挙げられています。同社の売上高のほぼ半分がこれら自社製品から得られているそうです。

さらに、回転や振動している機器の状態をセンサーで計測し、無線でキャッチする同製品の需要は産業用にも広がりつつあります。また、2012年10月に国際宇宙ステーションから放出された福岡工業大学の小型衛星(愛称:にわか衛星)の製作にも関わるなど、地場の先端技術企業として活躍しています。

福岡市の知識創造都市機能をフル活用し、(株)ロジカルプロダクト社に続く、先端技術型地場企業が次々と生まれることを期待したいと思います。

(株)ロジカルプロダクト社提供の製品写真以外の写真はいずれもイメージ(福岡市内撮影)
Print This Post Print This Post