Fukuoka Growth 15 都市の経済成長を牽引する都心の役割 2014.2.5 Version1.0(pdf/1.50MB) 福岡市は150万人あまりが暮らす大都市ですが、コンパクトなエリアに市街地が形成されており、都心部を中心に都市の機能がまとまり、世界の中でも暮らしやすい都市として高い評価を得ています。高い生活の質と適度な都市の規模を持つ「コンパクトシティ」として、多くの人が集まり、日本一人口増加率の高い大都市として、今後もしばらくは人口の増加が続く見込みの国内でも稀有な都市です。 しかし、日本全体でみると、既に人口減少社会に陥っており、大都市の中でも、人口減少に転じているところもあります。 これまで、都市への過度な集中に伴う都心部における人や交通の過密性の問題、地価高騰などの弊害が、首都圏をはじめ、福岡市においても一部で散見されましたが、今後は、都市においても、人口減少による低密度な市街地の拡大によるさまざまな問題が予想されます。都市機能が無秩序に拡散・散在することで、都心部の求心力が弱まることで、「まち」の質が低下するだけでなく、都市施設の維持管理、福祉施策等の行政コストの増大、特に高齢者の移動負担の増大、過度な自動車依存によるCO2排出量の増加などが、過疎地域だけでなく「都市問題」として表面化すると考えられます。福岡市は、天神や博多地区などの都心部に多くの機能がまとまっており、現在も九州一円から多くの人がさまざまな目的で訪れ、移り住む吸引力を発揮しています。過度な集中の問題も危惧されますが、今の福岡市の強みである生活の質や求心性を維持し、都心部のポテンシャル向上によって周辺地域全体の牽引力を高めていくという考え方に立つことが重要です。 「コンパクトシティ」は、都市が小さくまとまっていることでなく、基幹交通路線沿線など郊外の小拠点との棲み分けや機能分担がなされた上で、都心部の機能が集約、確立されて、求心力を保ったまま郊外地域と共存する都市構造を持つことが、あるべき姿といえます。かつて郊外に人口が流出し、都心の空洞化・ドーナツ化現象と言われた時代から、「都心回帰」と呼ばれる都心部人口の増加傾向が強まり、福岡市においても中央区、博多区の人口増加率が他区より高い状況です。都心部に住む人が増え、求められる機能も、生活者視点を含むものに変わってきています。 加えて、観光やビジネスなど、海外を含む域外との交流人口の増加は、都市の活力を高めるために不可欠な条件であり、都心部は域外の人が訪れ、街を判断・評価する「顔」の役割を担うと同時に、市民と交流し、価値を見出す重要なエリアです。国内の各都市は、これまでどちらかと言うと個性を感じさせない景観や空間が形作られてきましたが、世界の大都市の都心部には、魅力あるイメージ形成を促す特徴的な街区も多く、訪れる人の期待感を高めるところも少なくありません。 福岡市、そして都市圏、九州全体を牽引するために、都心部の強みを効率的に発揮できるよう、今後は、住む人や来訪者にとって快適で利便性の高い魅力的な空間づくりを目指すとともに、都心部自体が海外などからの来訪目的となるような機能の集積と再構築を進め、求心性を維持、高めていかねばなりません。 都心部の博多駅周辺や天神地区、港湾地区などでは、今後もいくつかの開発計画が控えていますが、これらの開発を機とした、都心部エリア全体の機能と魅力の再構築を図り、国際的にみても存在感のある次代の都心部像を描いていくことが重要です。(2014年2月5日 情報戦略室 畠山 尚久) 図表1.福岡市の区分別人口増加率 図表2.1㎡あたり年間販売額(2012年)【全市・博多区・中央区・都市圏比較】 ※グラフはクリックで拡大できます。