Fukuoka Growth 12 付加価値の源流としての研究・開発 2013.12.5 Version1.0(pdf/1.46MB) 科学技術分野などにおけるさまざまな研究・開発は、学術的な重要性もさることながら、経済活動においても重要な意味を持ちます。世界経済の趨勢は、目に見える指標として、物流量や資金の動きから俯瞰することはできますが、素材の生産・産出から加工品の販売(消費)に至るまで、さまざまな国・地域が関わりながら、 「付加価値」が上乗せされていきます。 企業にとってみると、 「付加価値」は、競合他社との差別化や高い収益性を確保するために不可欠な要素で、競争力を高めるために、「付加価値」を生み出す「研究・開発」への投資が継続して行われます。 特に、グローバルに展開する企業は、世界規模の競争に勝ち抜くために、自社人材だけでは、日々進化する科学技術などの分野で研究・開発の成果を導くことのスピード化が図りにくいため、オープン・イノベーション*1として、専門の研究機関など社外との連携を強化する動きが広がっています。こうした連携は、企業にとっては、大学や研究機関へ委託、あるいは共同研究、資金提供などを通じて、研究の機会や設備等を提供する代わりに、研究成果を製品開発等にいかすことが可能で、大学や研究機関にとっては、最新の設備や技術開発、ノウハウを蓄積できるだけでなく、得られた資金から次の研究投資が可能になるなど、相互にWin-Winの関係を構築することが可能です。 この好循環が、地域の経済成長や高度人材の育成・集積にもつながることから、各国・地域とも、研究・開発を通した産学連携の取り組みを強めてきました。国内では、これまで域内の企業と大学等の連携を通した産業集積を促す取り組みが進められてきましたが、グローバルな企業が世界中の最先端技術、情報にアンテナを張り巡らせている今日においては、各研究機関が世界との結び付きを強めることで、最新の研究成果を積極的に活用し、地域経済や学術分野の活性化を図るという視点も求められています。福岡市においても、多くの企業や大学、研究機関が集積し、各機関の人材が恒常的にコミュニケーションをとることが可能な環境にある中で、「研究・開発」の成果よってさらに大きな「付加価値」を生み出す可能性を持っています。福岡市の企業や大学等が持つ個別の資源を、最も効果的に、スピーディーに活用し、産業の高付加価値化を促す取り組みを、グローバルな視野で展開してくことが重要です。 地域の資源をいかし、地域の企業との大学等の連携を強めて産業を振興することに加え、国内、海外で広く事業を展開する企業と地域の大学・研究機関の協働を増やすことや、地域の企業が域外の大学・研究機関と協働して最新の製品やサービスを開発するなど、福岡市と域外とのつながりを持つことは、グローバル化が進むこれからはきわめて重要です。産学連携のニーズは、個別の研究案件の単位でもさらに拡大すると予想され、先端分野の研究機関が集積する福岡市の強みをいかし、多様な産学連携の形で、地域が生み出す「付加価値」を高めて、経済成長に結び付けていかなければなりません。 世界の産学連携拠点においては、連携の発展要因として、Face To Faceのコミュニケーションの重要性があげられており*2、企業の集積と、伊都地区の九州大学を核とした高度な研究人材の集積など、双方を至近距離に持つ福岡市の可能性は極めて大きいといえます。 (2013年12月5日 情報戦略室 畠山 尚久) *1オープン・イノベーション:自社の技術だけでなく外部の持つ技術やアイデアを組み合わせて、革新的な商品やビジネスモデルを生み出すこと *2「欧州大学における産学連携拠点における調査研究報告書」(平静24年月・国立大学法人東京工業大学)より 図表1.福岡県国際特許出願件数推移(2008~2012年) 図表2.福岡市ISIT産学共同研究プロジェクト等件数 外部資金獲得額推移(2007年度~2011年度) ※グラフはクリックで拡大できます。