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Fukuoka Growth 16 自然と共生する都市の進化

東日本大震災の記憶も新しいところですが、日本は地震が多く、過去にも度々大規模な地震災害にみまわれ、甚大な被害を受けてきました。一方で、被災の経験をいかし、地震に対する備えや減災の取り組みは、さまざまな分野で広がり、進化してきました。
自然と共生することは、ときに猛威をふるう自然災害に備え、人々の生活環境を維持、進化させることであり、ビジネスなどの経済活動についても無縁ではありません。東日本大震災を機に、BCP(Business Continuity Planning;事業継続計画)の策定が注目されるようになったのも、不測の事態に備え、リスクを回避するとともに、被害を最小限に抑える=損失を最小限に抑えることを目的としたものです。
近い将来、日本は再び大規模な地震の発生が予想されており、特に、東京をはじめ太平洋沿岸に集中する国内の主要大都市は、地震や津波による甚大な被害が予想されています。これらの都市が同時に都市機能を麻痺すると、国家としての機能も停滞する危険があり、さまざまな機能の分散やバックアップ体制の強化が求められています。
民間企業にとっても、経営資源の分散やバックアップによって、災害時の損失を抑えることが、株主や顧客、従業員の利益を守るための、危機管理上の重要な経営課題となっています。
福岡市は、国内にあっては比較的地震や津波の影響が小さいと予想されており、都市の規模や基盤、人材など、一定の集積があることから、バックアップ機能やリスクの回避先としては、国内で最も可能性の大きな大都市であるといえます。

また、自然との共生は、生活の質を左右する重要な要素ですが、福岡市は、コンパクトな市街地を取り囲む山と海に面したバランスの良い市域を有し、都心部などにおける高い利便性と、周辺部における良好な自然環境のもと、高い生活の質による暮らしやすさが、世界的に高い評価を得ています。
世界的に人材の流動化が強まり、クリエイティブな産業に従事する人は、生活の質を重視して仕事と質の高い生活を両立する都市に住む傾向にあり、世界経済の中心がアジア地域へシフトする中で、次代の付加価値を生み出す人材の集積を図る上で、福岡市は大きなアドバンテージを持っています。
農業や漁業及びそれを素材とする食産業など、自然の恵みをいかした産業も根付いており、自然と共生する社会づくりは、環境保全、防災対策に加えて、地域の付加価値づくりという面でも、大きな可能性を秘めているといえます。

福岡市は、急速に都市化が進み、市街地は拡大しましたが、自然環境の保全に努め、市街地においては都市公園など創出系の自然を増やす取り組みを進めてきたほか、過去の大雨災害の被害などを教訓に、防災面でも、自然との共生を念頭に、さまざまな取り組みが進められています。
福岡市は、自然との共生によって、経済活動を活性化し、新しい都市の進化の形を示すことが期待されます。福岡市における自然と共生する社会は、都市の進化とは相反するものでなく、新たな付加価値を生み出す源泉でもあります。  

(2014年2月20日 情報戦略室 畠山 尚久)

図表1.福岡市の平均気温年間推移(2013年・平年値) 図表2.可住地・林野と主要湖沼面積比率【主な大都市比較】
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※グラフはクリックで拡大できます。
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