スタッフコラム【Archived】


※写真はイメージです。
2019年6月18日、日経BP主催の「九州デジタルイノベーション2019」にて、双日の村上氏による講演「マグロ養殖事業におけるIoT・AI活用事例 日本の水産業活性化に向けた取組概要」を受講しました。後継者不足や高齢化が問題となっている漁業は、年間売上300万円以下の漁業者が全体の7割も占めるそうです。
約4万匹を養殖する双日ツナファーム鷹島株式会社のマグロ養殖場では、IoTやAI、ビッグデータを活用した、①給餌最適化に向けた取組、②尾数の自動カウント、③(赤潮などの)危険予測による、餌代の削減と省力化が目指されています。いけすに設置されたセンサーで、水温、溶存酸素濃度、塩分濃度等をモニタリングし、餌あげの量やタイミングとマグロの育成状況等を記録したビッグデータとの相関性を調べることで、将来的には、特定の時期に特定の大きさにまで成長するための最適な給餌方法(量・タイミング)をAIで予測できるようになると期待されています。
実証実験を通じて、以下の4つの課題が明らかになったそうです。
①現場とITをつなぐ人材(IT通訳)が不足していること
②適切な協力者や知見者探しが大変であること
③属人化したノウハウや勘の個々人の解釈が存在し取捨選択に時間がかかること
④AI活用には多くの時間とデータを要すること
課題はあるものの、IoTやAIの活用は、収益性の向上、持続可能な海洋環境への寄与、消費者目線への波及・寄与が期待できることから、今後も「日本水産業の高度化への挑戦」を継続していくとお話しされていました。
普段は美しい刺し盛りに感嘆の声を上げながら食させていただくだけですが、その生産元は技術革新とともに着々と進化していることを学びました。
http://urc.or.jp/event/column-20190814

※写真はイメージです。
先日、シニア世代のご夫婦と話す機会がありました。日本各地から講演や講義をするために招聘されるような仕事を今も続けている80代の夫が、数か月前に仕事仲間と移動中に突然倒れ、怖い思いをしたそうです。その後の処置が良かったためすっかり回復したが、いつどうなるか分からない歳ですからねぇとおっしゃるので、失礼とは存じながらも、ついつい「“終活”とか意識されることはありますか?」と尋ねてしまいました。
人生の終わりを意識し始め、まずアクションを起こしたのは、「墓じまい(お墓の処分)」と「家の処分」だったそうです。お墓に関して、あとに残す人たちに負担をかけたくないという想いや、「ゼロ葬」というシンプルな葬法の選択肢についても教えていただき大変勉強になりました。住宅街の一戸建ての家を処分し、湾岸エリアのマンションに引っ越した現在の、ご夫婦の居住形式に対するお考えは大変興味深いものでした。
ごみ出し、ごみ置き場の当番掃除、屋内の階段の上り下りなど、一戸建ての時に身体的負担となっていたことは、マンションの管理人やエレベーターのおかげで解消されたとのこと。想定外であったのは、周りに干渉されず景色も良いと思われた最上階角部屋で感じる「箱に住んでいるような感覚」と、以前は得られていた近所の人たちからの「ほどよい刺激」の少なさでした。一戸建ての時は、早朝にバイク音が聞こえれば「近所の〇〇さんは今朝は早いね」と寝起きに思い、炊事場の窓から通りを歩く男女の人影が見えれば「〇〇さんの長男は彼女でもできたのかな」と思うなど、近所の生活の気配を感じることができていました。時にはごみの出し方について近所の人と小競り合いになることもあったそうですが、そんな衝突すら夫婦の会話の良いネタになっていたそうです。
高齢者の孤独感や疎外感を軽減するためや、認知症を予防するために、様々な催しや交流の場が設けられていますが、そういう場に出掛けることに抵抗がある人もいるでしょう。わざわざ出かけなくても得られる「ほどよい感情の起伏」が、シニア・カップルのマンション生活に足りないもののひとつであることが分かりました。
http://urc.or.jp/event/column-20190823

東京・神楽坂通りと裏路地
乃木坂、六本木けやき坂、今ではアイドルのイメージが強い名のその坂道は、東京の都心部にあります。
一方で、福岡市の中心部は、総じて平坦で、徒歩や自転車の移動が比較的容易なまちです。その名に惹かれて人々が集まるような、広く名の知れた「坂道」をあまり聞きません。桜坂から平尾、小笹にかけてなど、一部起伏に富むエリアはありますが、「赤坂」「桜坂」は、エリアの地名で、特定の坂道をさすものではありません。
東京に行くと、神楽坂界隈を散策します。文字通り、神楽坂通りという名の坂道にはさまざまな店舗が並んで賑わい、さらに裏路地の小さな名もなき坂にも穴場的な店舗が点在し、独特の風情を感じさせます。都市観光は、駅前やメインストリートの大型商業施設とともに、こうした坂道や路地の個性的な魅力が大事なように思います。坂のあるまちの自然な造形は、見上げると一瞬躊躇するものの、上った先の風景、そこから見下ろす景色など、変化に富んだ魅力や発見を期待させます。
然るに、都心部の天神や博多エリアは、ほぼ坂のない街です。視覚的な魅力は、坂道の自然な造形が期待できない分、ビル・建物、街路など人工物に頼る部分が大きくなります。路地には個性的で魅力ある店舗等は多数あるものの、初めて訪れる人は、賑わいの先にある個性、ビルに隠れたその魅力に気付くことは難しいのではないでしょうか。
神戸、長崎、函館など、坂の魅力で多くの観光客を引き付ける観光都市の「坂道グループ」に負けないよう、本来、広範囲に散策しやすい「平たい都市」福岡市の強みをいかし、新たな発見、隠れた魅力を予感させる視覚的な仕掛けを随所に設けて、市民だけでなく、訪れる人にも、「その先の福岡」の個性や魅力を知ってもらいたいものです。
http://urc.or.jp/event/column-20190830

上からマカオにて①、マカオにて②、香港にて、深センにて
2019年7月5日、「福岡市-広州市 友好都市40周年記念セミナー」にて、在広州日本総領事館の石塚総領事の講演「広東・香港・マカオ大湾区構想の現状と展望」を聴きました。
「広東・香港・マカオ大湾区構想」とは、香港、マカオ、広州、深センのエリアを一体化させて大経済圏を築く構想です。2016年に広東省から出てきたアイディアで、2018年には国家級プロジェクトに昇格し、2019年2月には「広東・香港・マカオ大湾区発展計画綱要」が発表され、2022年までに世界的ベイエリアの基礎を形成し、2035年までに完成させる目標が掲げられたそうです。
香港・マカオ間は橋の開通により、広州・香港間は高速鉄道の開通により、それぞれ45分程度での移動が可能となったように、インフラ整備も着々と進んでいます。
躍進的発展の進む広東・香港・マカオ大湾区への進出が日本企業にもたらすチャンスは以下の5点との紹介がありました。
① 6,600万人が住む域内総生産(GRP)11兆元(約160兆円)を超える高度成長市場(GRP成長率も全国平均を上回る6.8%)
→巨大マーケットの取り込み
② (大陸や香港、海外からの)優秀な人材が集まるイノベーション拠点
→高度人材の確保、イノベーション活力の取り込み
③ビジネスコストの低下
→競争力強化
③ 規制緩和の先行(e.g.緩和されている規制が香港を経由して大湾区にも適用される可能性)
→金融サービス業など
⑤新領域への参入
→スマート製造(AI、IoT+ものづくり)、ヘルスケア・バイオ医薬、新エネ・環境
広東・香港・マカオは中国政府にとって重要な経済圏であり、この「広東・香港・マカオ大湾区構想」を何があろうとも推し進める方向であるように感じました。
http://urc.or.jp/event/column-20190904

①歩行者に道を譲る清掃ロボット、②全自動運転バス、③顔認識で入るスーパーマーケット
中国・北京の南西およそ100㎞の場所に位置する雄安新区(ゆうあんしんく)は今、世界から注目されている都市のひとつです。つい先日の8月28日、東京都の小池知事もここを視察していました。
2017年に発表された「雄安新区」構想は、「千年の大計」と呼ばれる習近平政権の一大国家プロジェクトであり、2050年までに広さ1,770㎢にも及ぶ新しいタイプの都市を誕生させることが目標です。目玉は、IoTやAI等の技術を用いて、生活インフラや基礎インフラをインターネットに接続して管理する「スマートシティ」の創出です。
現在、雄安新区の「先行開発区」では、阿里巴巴集団(アリババ)のクラウド技術を使った百度(バイドゥ)の自動運転「アポロ計画」が試行されています。また、顔認証で支払いをする無人スーパーやホテルも開業しています。大手IT企業が進出し、今まで人間が行っていたことが、次々と自動で行われるようになりつつあるのです。
深センや上海に比べ、天の利(時期)や地の利(位置)に恵まれてないため、雄安新区の建設はまだ大々的に進んでいるようには見えません。しかし、エネルギー分野のスマートグリッド、人流と物流を統合した移動監視システム、さらに顔認証やキャッシュレスなど、雄安新区は、新しい技術の力で、より精緻な需給システムの構築や都市ガバナンスモデルの転換に、一縷の希望をもたらしています。
http://urc.or.jp/event/column-20190918
福岡アジア文化賞第30回記念「歴代受賞者によるシンポジウム」(9月10日(火)於福岡国際会議場)より、印象に残った受賞者らのメッセージをご紹介します。
※メッセージは、著者による理解や意訳を含みます。
2018年(第29回)学術研究賞 末廣昭氏:
アジアの変化の“スピード”に目を向けること。フランスは高齢化社会(高齢化率7%)から高齢社会(高齢化率14%)に到達するのに114年を要し、日本は24年、韓国やベトナムにおいては10数年というスピードで到達している。
2017年(第28回)大賞 パースック・ポンパイチット氏 & クリス・ベーカー氏:
Quantity of payment(収入の量)よりもquality of life(生活の質)への意識が高まってきている。出版の時代とは異なり、インターネットや翻訳等の技術が、多様な文化に触れることを容易にした。
2015年(第26回)芸術・文化賞 ミン・ハン氏:
グローバル化は経済だけではなく、文化においても起こっている。我々はグローバル化によってもたらされた“新しい文化の価値”に対応しなければならない。文化と経済の境目は薄まり、文化は、より高く深いレベルで経済に影響を与えている。
2012年(第23回)芸術・文化賞 キドラット・タヒミック氏:
ハリウッドのスーパーヒーローではなく、地域のローカールヒーローを取り戻すこと。美しい棚田は祖先らのたゆまぬ努力の上に存在する。我々は、そうした身近なヒーローの超越的な能力を称えなければならない。
シンポジウムでは、「伝統的文化への理解」、「文化とグローバル化の融合」、「経済と文化のバランス」などの言葉が飛び交い、さらにはそこに、明確な解や数値化できる指標がないとの指摘が加えられました。これらの実現が、どのような形でなされるのか、論理的に表現できるものなのか、その奥深さに思いを馳せると、私の脳はしばしの混乱状態に陥りました。
http://urc.or.jp/event/column-20190925

(最上部)張氏講演スライド、(2枚目以下)「人を運ぶドローン」試乗体験
2019年9月20日、「福岡市-広州市 友好都市40周年記念セミナー」にて、中国広州市に本拠地を置くドローン開発企業eHANG(イーハン)の副総裁張氏の講演を聴きました。
2016年に世界で初めて乗客を乗せることができるドローン(UAV/無人航空機)を発表したeHANGは、中国のほか、オーストリアやオランダ、カタールなどで飛行試験を行ってきています。また、広州市政府とMoUを結び、有人ドローンの更なる開発や市政府専用のドローン・コントロール・センターの共同開設を目指し動き始めています。広州市と友好都市である福岡市にも自社サービスを提供していきたいと張氏が話されたので、福岡市で具体的にどのような活用例を想定しているか質問しました。
福岡では、①離島へ物資の運搬、②観光面(名所の遊覧飛行など)での活用、③公共サービスとして臓器や血液、医療用品の運搬での活用が考えられると答えてくれました。また、すでに無人ドローンでの活用事例も報告されてはいますが、災害救助のために、有人ドローンにより、遭難者を搬送することもできるようになるのではと話されていました。
後日、市役所ロビーでeHANGのドローンに試乗させてもらいました。機内前方に通常あるはずの操縦ハンドルは無く、この機体にはパイロットは乗らないのだと改めて認識するとともに、張氏が講演の最後に話された「夢はもうすぐ実現します、『Future is Now』です」という言葉も思い出しました。
eHANGの「人を運ぶドローン」の展示・試乗体験は、福岡市役所1階ロビーで10月6日(日)まで行われています。皆さんもぜひ未来(感)を感じてみてください。
http://urc.or.jp/event/column-20190930

当日配布資料および石川氏の講演の様子
2019年9月7日、「福岡国際女性シンポジウム Media×Gender ~Moving towards 203050!~」に参加しました。「女性とメディア」は、1995年の第4回世界女性会議(北京会議)で採択された北京行動綱領にも含まれており、ジェンダーを考える際に、メディアは重要な論点であることがわかります。
冒頭、石川雅恵氏(UN Women:国連女性機関 日本事務所長)の基調講演がありました。
メディアは、“映像”、“文字”、“音”などを通じて何かを表現するものであり、人々の行動にも影響を及ぼしていますが、講演の中で、「ジェンダーに基づく固定的役割意識」(「女性だから」、「男性だから」、こうすべきという意識)の形成にも影響を与え得ることが指摘されました。メディア情報の中には、「女性らしさ」「男性らしさ」という表現が含まれているものも少なくないためです。特に懸念として挙げられたのは、そのような意識が子供の頃に形成され、男女問わず、その後の人生の選択に大きく影響することでした。
後半のパネルディスカッションでは、本田哲也氏(株式会社本田事務所 代表取締役/PRストラテジスト)から、イギリスにおけるジェンダーステレオタイプ表現に関する規制(https://www.asa.org.uk/news/gender-stereotyping-new-rule-and-guidance.html)や、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルにおいて、SDGsやジェンダーを基準に、世界中の広告等が審査されるという事例が紹介されました。
個人が性別的役割ということに捉われずに、個々の生き方を選択できる社会になっていけばと考える機会となりました。
http://urc.or.jp/event/column-20191007

(上)イメージ写真、(下)会場配布資料
2019年9月6日、「テレワークによる障がい者雇用促進セミナー」に参加しました。2018年4月より法定雇用率が0.2%引き上げになったことも背景に、障がいのある方の雇用に対する関心は高まってきています。テレワークは、ICT(情報通信技術)を活用して時間や場所に捉われない柔軟な働き方を可能にする方法です。
まず、合同会社ムーブの小島浩一氏(代表社員)より、在宅テレワーク就労支援の取り組みについて紹介が行われ、次に先進事例報告として、西部ガス絆結株式会社の船越哲朗氏(代表取締役社長)および社員の大蔵健司氏・友谷由紀子氏より、「苦手を補い合う」という考えのもと組織運営を行っているというお話や、テレワークの実演が行われました。最後に、(株)テレワークマネジメントの倉持利恵氏(障がい者テレワークコンサルタント)より、テレワークによる働き方の事例が紹介されました。
特に印象的だったのは、船越氏のお話の中の「障がいがあっても納税者になり、高齢者を支える」という言葉でした。今回のセミナーを通じて、テレワークのような柔軟な働き方が、難病や障害による体調面の不安や、通勤が困難なため働くことに難しさを抱えている人にとって、就労機会だけではなく、「社会に貢献し、社会で生きる」という希望をもたらす手段にもなり得るのだと気づきました。
http://urc.or.jp/event/column-20191011
福岡市は,「一人一花」運動*1を進めています。まちなかの花壇など,「一人一花」のサインを見ることも増えました。市民らの協力のもとに,まちに花を増やす取組みは,パリ(仏),コペンハーゲン(デンマーク)など海外の都市にもみられます。
自然豊かな野辺に咲く花は美しいものですが,まちの中では,人の手がなければ,花を増やすことは困難です。植栽,手入れなど,人の意思=想いがあって,まちは花で彩られます。
まちの魅力づくりは,都市の普遍的な課題です。自然や景観,歴史的な遺産など,固有の魅力をいかすとともに,人の想いや創意工夫で,まちの魅力を高める取組みが必要です。各都市が知恵を絞る中で,各所にアート作品を展示し,まるごと美術館などと称して,まちの回遊を促す取組みもみられます。花があふれるまちも,アート作品同様,訪れる人の回遊を促す可能性を持っています。
生け花(華道)が,人の創意工夫で,花に新たな価値を付加し,野花とは異なる感動を人に与えるように,人の想いと感性で,まちを彩る花が,心に残る風景を創り出すかもしれません。
万葉集にみるように,古くから,人は花に想いを映し,託して,花に,目で愉しむ以上の,特別な価値を見出してきました。散る花にさえ儚い想いを重ねるほど~e.g.風に散る 花橘を袖に受けて 君が御跡と思ひつるかも・詠み人知らず~に。
まちは人がつくるものです。人の感性が,花とまちを結びます。無機質なまちよりは,人の想いが感じられるまちの方が,魅力的なはずです。花に寄せる人の想いと,花をいかす人の創意工夫で,まちを美しく。誰もが気軽に参加できる一人一花で,美しく。
http://urc.or.jp/event/column-20191018
*1: 一人一花運動:市民・行政・一人ひとりが, 公園や歩道,会社,自宅など,福岡市のありとあらゆる場所での花づくりを通じて,人のつながりや心を豊かにし,まちの魅力や価値を高める,花によるまちづくりを目指す取り組み(福岡市「一人一花」ホームページより)

※写真はイメージです。
先日、語学学校の英語講師として来日し福岡に住んで1年半というアメリカ人と話す機会がありました。就労ビザの在留期間は数年残っているものの、30代後半になる彼女は、なるべく早く結婚し出産したいらしく、来年は欧州のおそらくスペインに移住することを検討しているそうです。日本には、自分と似たような文化背景を持ち、なおかつ英語でコミュニケーションできる男性との出会いが少ないことが理由だそうです。
しばらくアメリカに帰るつもりはないように聞こえたので、そもそも何故日本に来たのか尋ねたところ、最近アメリカでネタのようによく使われているという諺を交えて話してくれました。白人至上主義がひどくなり、人種差別の対象になりやすい背景を持つ彼女にとって、アメリカが居心地の良い国ではなくなってきてしまったことが来日を決めた理由だそうですが、2017年に国の方向性が大きく変わったことは、「the last straw(最後の藁)」だったそうです。
最後の藁というのは、「The straw that broke the camel’s back.(ラクダの背中を折った藁)」という諺からきています。ラクダの背中に麦わらをどんどん載せていったところ最後の一本でついに背中が折れてしまったという状況をあらわすこの諺は、日本の諺の「堪忍袋の緒が切れた」と似たような意味で、積もり積もった我慢が限界に達し爆発した、最後の一押しになったという時に使うことができます。
南部貧困法律センターによると、アメリカで活動するヘイトグループは1,020団体(2018年)で、1999年からの調査で過去最多を記録し、このうち白人愛国主義団体は、2017年から約50%増え148団体となったそうです。(https://www.splcenter.org/fighting-hate/intelligence-report/2019/year-hate-rage-against-change)
幼い頃から、飲食店や商店で無視されるなど人種差別を感じることはあったそうですが、2017年以降、仲の良い友人の親族や仲間がSNSで白人至上主義を発信するようになるなど、間接的な交友関係にまで影響を及ぼし始めたそうです。長年住んだ国を離れる決心をするほど、彼女にとって辛い経験が重なったことが推測できました。
http://urc.or.jp/event/column-20191111

イメージです
「アタマ、使ってる?」
私が好きな映画の、ポスターのキャッチコピー(公開時)です。
情報戦略室では、研究活動や福岡市の施策に資する情報(データ等)を収集、分析し、関係者への提供や外部に発信しています。
民間企業では、情報を収集、分析して、戦略を練ることは、マーケティングという概念で語られますが、活動領域は市場調査から物流、広告、販売まで幅広く、最近ではビッグデータの解析まで、その範疇に入るようになりました。
一方で、マーケティングよりも手段ありきで、消費者の誘導を主眼に置いたやり方も見られます。まず市場を制して、後々優位に進めるためです。乱立する電子決済で、最初に大きな見返りを提供してシェアを取りに行くような例もみられます。
このほか、作為的な情報で印象操作するような、「ステルス・マーケティング」も一時期話題にのぼりましたが、これらは、本来のマーケティング活動からは逸脱したものにみえます。
より早く答え(=結果)を求められる時代、手段を優先するのも無理はないかもしれません。
かつて、何人かのミュージシャンが、「ロックは死んだ」と、主に商業化された音楽シーンを揶揄しました。スピーディーな行動が求められる時代、「マーケティングは死んだ」のでしょうか。
もちろん答えは否です。今も、あらゆる企業や組織でマーケティング活動を行っています。手段だけでは導けない戦略があるからにほかなりません。
最近では、AI(人工知能)が、ビッグデータを瞬時に解析し、人が気付かないような事実を導くのも事実ですが、そこから先にどのような仮説を導くかは、人の力、センスが必要です。
事実としての情報をどう分析し、活用するかの仮説を導くかの視点~利根川進氏は「コンセプト」と表現*1~こそ、マーケティング活動の本来の目的で、その先に広がる無限の可能性であり、人のクリエイティビティが発揮される余地が大きい部分です。
「コンセプト」は、未知の世界を夢見て描く人の創造性が重要で、同時に事実に基づく客観的で、恣意的ではない視点が必要。マーケティングに携わる人間は、“夢見るリアリスト”であるべきといえるでしょう。
私も、日々冒頭の問い掛けを意識しながら、より有益な「コンセプト」を見つけていきたいと思います。
http://urc.or.jp/event/column-20191122
*1: 「精神と物質 分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか」(立花隆・利根川進1990年文藝春秋社刊)の中で、ノーベル生理学・医学賞受賞の利根川進氏が調査・研究からの仮説の導き方について「コンセプト」の重要性を説いている
2019年9月に開催された「アフリカ・イノベーションセミナー」(主催:ジェトロ福岡、国際ビジネスセミナー実行委員会)に参加し、アフリカでの事業展開に取り組んでいる方々のパネルディスカッションを聞きました。
「アフリカでビジネスを始めるのにお勧めの国は?」の質問に対し、4名のパネリストらから、ルワンダ、ナイジェリア、ケニアの名前があがりました。いずれも英語が主要言語のひとつになっており、英語でコミュニケーションをとることのできる人材の豊富さがビジネスにおいて鍵となるそうです。ルワンダは賄賂に対する取り締まりが厳しくアフリカで最も汚職が少ない国と言われていること、国際機関が多く立地するナイロビを首都とするケニアは教育水準が高く4Gなど通信インフラが普及していること、ナイジェリアは人口増加が著しく2019年の約2億人から2050年には4億人へと倍増すると推計されていること(国連「人口推計2019」)などが、ビジネスを展開する際の魅力であるようです。
私はアフリカを訪れたことがなく、「ナイロビの蜂」や「ホテル・ルワンダ」「ブラッド・ダイヤモンド」などの映画をきっかけとした浅い知識しか持っていないため、このようなセミナーを通じてアフリカの新たな一面を学べることは貴重な機会だと思いました。今後アフリカに関して学ぶ機会を増やしていきたいと考えています。
http://urc.or.jp/event/column-20191211

※写真はイメージです。
この夏、二人の高校時代の同級生と久しぶりに会いました。二人とも病院で看護師として働いているので、最近の職場の様子をたずねました。
入院患者は高齢の方が多く、50の病床は満床であるにも関わらず、食事が必要な方は2名だけで、他の方は胃ろうなどの経管栄養法や静脈栄養法により栄養を摂取していることを一人が話すと、別の病院で働くもう一人も似たような状況であると言いました。社会の高齢化に直面する職場のひとつだと改めて認識しました。
看護助手と二人で1日に5名程度の患者さんの入浴介助を行い、床ずれを防ぐための体位変換も定期的に行っているそうです。看護師の高齢化も進むなか、患者さんを抱きかかえたり持ち上げたりする際の腰への負担に苦しんでいる年上の同僚も多いと同級生の一人が話しました。勤務する病院が介護職員を雇ってくれれば少しは負担が軽くなるのに、病院が求人を行う気配はちっともないそうです。もう一人の同級生の病院では介護職員を雇ってくれたらしく、随分楽になったといいます。
2019年4月から施行された新たな外国人材受入れのための在留資格「特定技能」の対象となる産業分野には介護分野が含まれています(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html)。二人とも外国人の同僚はまだ居らず、国際という言葉とは縁遠い職場だと考えているようでしたが、今後その可能性が出てくるかもしれません。
http://urc.or.jp/event/column-20191216

①ホテル近くの光景、②会場となった大学キャンパス、③授賞式会場にあるLED電光スクリーンは圧巻
11月22日~24日、今年のアジア都市景観賞授賞式参加のために香港に行ってきました。開催直前に現地の情勢が不安定となり、我々の香港行きも危ぶまれましたが、結果的に7か国150人以上が参加した盛会となりました。
授賞式会場は香港高等教育科技學院(Technological and Higher Education Institute of Hong Kong)柴灣キャンパスにありました。この大学の規模は大きくはありませんが、ツインタワーを擁するキャンパスはユニークで数々のデザインアワードも受賞しています。また、メイン会場の壁に備え付けられている幅20mもあるLED電光スクリーンには驚かされました。とりわけ印象に残ったのは、おしゃれな学内レストランでのビュッフェランチで、学食とは思えない美味しい洋風料理を次々と堪能できました。
昼間の学園は、日差しが燦燦と降り注ぐなか、学生の姿を見ることもなく、静寂そのものでした。教室横の掲示板には政府批判やストライキを呼びかける張り紙が張ったままで、水死した女子学生を悼む折り紙の鶴たちが佇んでいました。中国大陸出身者への怒りをあらわにした壁新聞を横目に、警備員が出入りする者のチェックを厳しく行っていました。
香港情勢の混迷を象徴する場面は、式典の会場にもありました。背景ボートには5年前の「雨傘運動」を彷彿させるようなデザインが印されていて、そのデザインボートを背景に、香港政府の代表が景観賞主催団体に感謝の楯を贈呈していました。
「改革・開放」が始まった40年前までの香港は、中国大陸と外の世界をつなぐショーウインド的な存在でした。テレサ・テンたちの甘い歌声に乗せられ、大陸の若者が香港に憧れ、外の世界に夢と希望を託しました。また世界からのヒト、モノ、資金も、ここ香港を経由して大陸になだれ込んでいました。しかし時が流れ、今の香港にはかつてのような眩しさは感じられません。
「東洋の真珠」と呼ばれていた香港にとって、2019年が「終わりの始まり」の年でないことを祈ります。
http://urc.or.jp/event/column-20191225

写真:区画整理が完了した順に住宅街の通りに花の名が付けられ、パネルが設置されている。パネル中央部の赤い点は建設規制に関わる道路中心を示す。
発災からまもなく25年となる阪神淡路大震災で大きな被害を受けた兵庫県神戸市長田区野田北部地区を訪問した際(2019年度URC総合研究「防災」シリーズ02)、この地域のまちづくりに長年携わっている河合氏(野田北ふるさとネット事務局長・野田北部まちづくり協議会会長)から伺ったお話のなかで印象に残ったことのひとつに、災害後の状況を想像しながらプレイする防災ゲームによる意見交換の大切さがあります。
被災者は、発災直後から何年にも渡る復興期において、様々な選択を迫られます。自らの命を守るための行動に始まり、近隣住民の救出から避難所での過ごし方、さらには生活再建と市街地復興の両立実現にまで、個人だけでなく地域コミュニティの集団意向が意思決定に影響してきます。そして意思決定に関係する人が増えれば増えるほど、決定までに時間を要します。住宅が密集していた野田北部地区における市街地整備のための合意形成は、特に長い時間が必要であったことをうかがい知ることができました。
その野田北部地区のまちづくりに深く関わった河合氏が日頃からの備えとして大切だと話してくれたのが、「クロスロード」(※)という防災シミュレーションゲームでした。これは、複数人でプレイするゲームで、被災後のあらゆる場面における行動判断をYesかNoか選びその理由を説明し、その後全員でその問題について話し合うものです。
例えば、「避難所に1000人が避難しているが、弁当が500個しか届いていない。避難所の運営側であるあなたは、弁当を配布する(Yes)か?配布しない(No)か?」の問いに対し、YesかNoかを答えます。Yesであれば、高齢者や子どもから先に配布するという理由がでるかもしれませんし、Noであれば、もう500個入手してから配るという理由がでるかもしれません。どちらが正解かというものではなく、このゲームを通じて、多様な考えや視点を知ることができます。
災害が発生したらまず自分の命を守ることが大事であり、その理由は自分の命があれば他人の命を救うことができるかもしれないからという河合氏の話は印象的でした。それに加え、発災直後から始まる長い復興期に備えるために、「クロスロード」のようなツールを使ってコミュニティにおける意見交換の機会をもつことも大切だと教えていただきました。
※【引用】クロスロードとは、阪神・淡路大震災で、災害対応にあたった神戸市職員へのインタビューをもとに作成された、カードゲーム形式の防災教材。「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」(文部科学省)の一環として、矢守克也氏(京都大学防災研究所准教授)、吉川肇子氏(慶應義塾大学商学部准教授)、網代剛氏(ゲームデザイナー)によって開発された。(出典:「内閣府防災情報のページ」http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h20/11/special_02_1.html)
http://urc.or.jp/event/column-20200108

イメージです
アンケート調査を行い、結果を分析する際、全体の値とともに、性別、年代別、居住地別などさまざまな属性分析を行うのが常です。
最近では、性別は、LGBTの配慮から、選択肢に「男性」「女性」を選べない人のために、「その他」を加えるところもあります。しかし、本来、「その他」にもさまざまな属性があり、一括りに扱うと、各属性の意見を正確には汲み取れません。
属性を聞くor尋ねるor問うことは、個人の分類というより、その属性の人はどう考えるかを把握するためのものですが、特に、性別は、デリケートな問題も含み、調査を行う機関は、どこまで配慮し、踏み込むべきか、模索している段階といえます。
一方で、「性別」に分析した場合、「男性」と「女性」には、明らかな傾向差がみられることが多く、意識や行動面などで異なる特性を示します。我々調査に携わる人間が、当たり前のように「性別」に分析してきたことを省みる必要はありますが、従来の「男性」と「女性」の特性を炙り出すことにも意義はあるはずで、全数分析だけでは見えてこない課題も浮き彫りになります。
アンケート調査は、主に多数派の意識を明るみにするため、数値の多い(高い)項目を重視しがちです。少数派の意見にも目を配る必要はあるものの、全てを扱うことは困難なため、可能なものには対応しながら、さらに少数派を深掘りするには、対象を絞った上で、調査手法、分析手法を、別途検討する必要があります。
いずれにしても、これまでの視点だけでは、十分でないことは間違いありません。多様性を受け入れ、インクルーシブ*2な考え方が求められる社会で、配慮を示すだけでなく、調査の手法、結果の分析まで含めて、どのような調査の形がベターなのか、より多様な意見を把握する方策の検討が求められています。
以下は余談です。
LGBTの視点が求められる時代。「男性」「女性」だけでも、完全に理解し合うことは難しいと感じるものですが、昔、ホストをしていた後輩の言葉に、全ての答えがあるようで、目から鱗が落ちる思いでした。
「男も女も、お互い尊敬し合っていれば、それでいいんじゃないですか」
違うからこそ、尊敬できることがあるということ。男性、女性、さまざまな人たち、理解し合えないことはあっても、お互い違うからこそ、尊敬し合うことが大事ということでしょう。
違いをタブー視することなく、多様性を尊重し、異なる立場の人がともに学び合い、高め合う社会が、目指すところである気がします。
http://urc.or.jp/event/column-20200115
*1: Rainbow Flag: LGBTの尊厳を守る社会運動を象徴する旗。使われる多彩な色はLGBTコミュニティの多様性を表す
*2: インクルーシブ理念~ Inclusive:ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)から来る言葉で、あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合う」という社会政策理念。「排除的、排他的」を表す「エクスクルーシブ~exclusive」の対義語

イベントの様子
先週、福岡市の官民協働型スタートアップ支援施設「フクオカグロースネクスト(FGN)」で開催された 「イノベーション大国イスラエル~中東のシリコンバレーと呼ばれる理由~」(2020年1月16日)にて、「日本・イスラエルのビジネス環境の違い」についてのトークセッションを聞きました。
日本とは違うイスラエルの大きな特徴は、①ボトムアップの文化、②ディベート(討論)能力の高さ、③スピードの速さだそうです。
日本では国をマネジメントするためにヒエラルキーが必要でトップダウン式での活動が浸透しましたが、歴史的に国を失ったイスラエルの人々は、生きのびるためのコミュニケーションを大事にしたため、階級に関係なく意見を述べたり意思決定を行ったりするボトムアップ式の活動が浸透したそうです。
また、情報共有や意見交換などのコミュニケーション活動が活発に行われ、ディベートが日常茶飯事となったことで、ディベート能力も高まりました。登壇者の一人であるイスラエル人ヨニー氏のお母様は、「ディベートが人の頭を冴えさせる」とよく言っていたそうです。議論で相手を打ち負かそうとするため、論理的な思考力が鍛えられたそうです。
日本とイスラエルのスピード感の違いは、日本企業の機会損失に繋がる可能性があるとの指摘も登壇者らから挙がりました。例えば企業同士の連携を進める際、日本企業が「検討中」として数か月や一年も決断に時間をかけている間に、イスラエル企業の規模が大きくなり提携相手として適さなくなったり、(買収などで)企業自体が存在しなくなったりすることもあるそうです。
今年3月には日本とイスラエルを結ぶ定期直行便が初めて就航します(http://www.jwing.net/news/15571)。アグリテックやデジタルヘルス分野での連携はポテンシャルが高いとのことで、イスラエルでの事業展開に挑む日本企業が増えるかもしれません。その際、日本企業は、ヨニー氏曰く「スムーズにフレキシブルなアプローチ」で取り組む必要があるでしょう。
※イベントの様子は、福岡市の公式Youtubeチャンネルで視聴できます。
http://urc.or.jp/event/column-20200124

イメージです
「ソーシャル・インクルージョン」(社会的包摂)は、障がい者など、あらゆる人が孤立しないよう、包み、支え合う社会を意味します。
目に見える障がい、見えない障がい、障がいと診断されなくても生きにくさを感じる人も含め、相互に受け入れ、認め合い、活躍できる包摂性の高い社会の実現には、周囲の理解と配慮は必要です。それは、「特別視」とは違う、「普通に受け入れる」ことが重要といえます。
若い人などに人気のミュージシャンが、過去に高機能自閉症と診断されたとデリカシーのない記事がありました。彼を特別視するこのオールドタイプの記者より、若い人は、はるかにインクルーシブな理念を身に付け、過去の診断など関係なく彼を受け入れ、才能を認めています。
人とのコミュニケーションが重要と言われてきました。間違いではありません。しかし、これを苦手、苦痛と感じる人もいて、うまく話せなかったり、生きにくさを感じたりします。多くの企業等では、「コミュニケーション能力」は評価項目であり、「コミュニケーション能力欠如」とされる人の中には、コミュニケーションを面倒と感じる人もいれば苦痛に感じる人もいるでしょう。多くの人に支持されるこのミュージシャンにも、生きにくさを感じる若い人が、共感する部分があるのかもしれません。
弱肉強食のビジネスの世界では、あらゆる人が孤立せず活躍することは、難しい課題です。しかし、技術の進化、AIの導入などによって、人とビジネスの関わり方は変化し、人は、よりクリエイティビティが求められます。今年の、米アカデミー賞を席巻した「パラサイト」のポン・ジュノ監督は、壇上のスピーチで、マーティン・スコセッシ監督の「最も個人的なことが、最もクリエイティブだ(The most personal is the most creative)」という言葉を引用しました。声の大きさやコミュニケーション番長だけでなく、個々の能力が重視され、多様な人が活躍できる選択肢が広がる優しい社会へと変化する可能性もあります。
2018年度のURC総合研究「Society 5.0」では、技術の包摂性の重要さを指摘しました。技術は、一部の人のための、特別なものでなく、全ての人が、当たり前に使える技術でなければなりません。都市も同様で、多様な人が、当たり前に活躍する社会の環境をつくることが、「都市の成長」と「生活の質の向上」の両立につながるはずです。
http://urc.or.jp/event/column-20200226

イメージです
昨年の暮れ、月の勤務時間の振替調整のため、1週間ほど毎日朝1時間遅く出勤し、「一人朝カフェウィーク」を試みました。忙しいときでも、忙しいときほど、お茶を楽しむ余裕を持ちたいものですから。
天神にある職場の周辺で、散策がてら気の利いたカフェを探したものの、朝から開いているのはチェーン店カフェくらいで、いろいろ徘徊してみたものの、そもそも個人でやっているようなカフェは見つけきれず。結局、毎日チェーン店、意識高い系の人が集うカフェで、往来の見せ物になりながらコーヒーを啜るしかありませんでした。
福岡市は、飲食業が盛んで、毎年、新たに開業する店も多いですが、家賃、地価の高価な都心部に出店することは、大きな企業が手掛けるチェーン店は別として、個人では容易ではないはずです。
志高く、こだわりを持つ若い人がお店を開くのは、都心から外れた場所や郊外、住宅地などが多い気がします。どうせ行くなら、こういう店に行きたいのです。
市内の早良区に住む自分の、お気に入りのカフェ、パン屋、菓子店など、全てが、自宅の周りで事足りて、常日頃、極上の便利さを感じていましたが、もしかしたら、福岡市の9割以上の人が評価する住みやすさ(PDF)も、郊外のこうした魅力的な店が充実していることが、一因かもしれません。
逆に言えば、都心部が、企業主導の店が中心で、それはそれで便利さや魅力はあるものの、ナショナルチェーンの店ばかりでは、他の都市との違いは見えにくくなります。
これから、福岡市の都心部は、ビルなどの規模も大きくなって、ますます機能が充実し、魅力が増すことは間違いないですが、訪れる人が、買物や飲食を楽しむだけでなくて、若い人、女性、高齢者など、多様な人が、起業やさまざまな活動など、自ら何かをするための関わりを持てるような、多くの人に門戸を広げる、そんな仕組みがあればいいなと思います。
日本全国、都心部の再開発が盛んになっていますが、どこの都心部も同じような店ばかりでは、差別化はできません。福岡市の都心部が、多様な個性が集まる場orエリアor空間になれば、多くの人を引き付ける魅力につながると期待しています。
http://urc.or.jp/event/column-20200309
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の発生と、それに伴う緊急事態宣言の発出によって、生活や経済が一変し、なお状況は日々変化しています。
これからさまざまな統計にも、この影響が、数字として色濃く現れてくると思われます。
まずは、人々の命と健康を守るための行動と、医療関係者をはじめとする私たちの日常を守るために闘い、活動している方々への連帯を胸に。
そして、さまざまな活動の自粛を余儀なくされる今だからこそ、この危機を乗り越え、これまで経験したことのない変化を、社会の進化へと結びつけるために、これからなすべきことを、しっかりと考えていくときなのかもしれません。
福岡地域戦略推進協議会(FDC)206団体による「YELL FUKUOKA/エール・フクオカ行動宣言」
https://yellfukuoka.com/
http://urc.or.jp/event/column-20200422
ここ数カ月で、多くの報道でテレワーク*1という用語を見聞きする機会が増えました。2月末より、コロナ感染症拡大防止の観点から、政府がテレワークを推奨してきたことや、各企業がテレワーク勤務に移行してきたことが背景にあります。4月7日の緊急事態宣言以降、政府の方針のなかでは、まん延防止の項目において、「特定都道府県は、まずは在宅勤務(テレワーク)を強力に推進する」*2というより強い表現が用いられるようになり、テレワークを一層促す流れになっています。
緊急事態宣言を受けて、企業の動向や従業員の働き方にも如実な変化が見られ始めています。パーソル総合研究所の調査結果(4月10日~12日調査、正社員対象)によれば、緊急事態宣言対象地域となった7県において、従業員のテレワーク実施率は38.8%、会社からのテレワーク推奨・命令率は53.3%と、約1月前に比べてそれぞれ約2.3倍、約1.9倍となりました(グラフ参照)。4月7日を境に、より多くの人たちの働き方に変化が生じてきていることがわかります。
URCの2018年度の調査*3によると、全国におけるテレワーク普及率は2割未満と決して高いとは言えませんでしたが、いま、テレワークの認知度は急速に高まってきています。一方、グラフ右の「会社からのテレワーク推奨・命令率」と左の「従業員のテレワーク実施率」の間に開きがあるのも事実です。例えば4月は14.5ポイントの差があります。業務内容等の様々な理由により、テレワークを実施できない人たちもいるのであり、こうした現状を無視して、楽観的に「テレワークが普及してきた」と見ることもできません。なぜテレワークの実施が困難なのか、職種のみならず、制度面の課題、従来の仕事の進め方の課題等についても慎重に見ていく必要があると考えられます。
今後、社会全体の働き方に変化が生じることは、間違いありません。私たちの働き方に変化が訪れているいまだからこそ、テレワークをテーマに働き方や課題などについて考察していきたいと思います。
http://urc.or.jp/event/column-20200501
*1 ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方((一社)日本テレワーク協会の定義参照)
*2 「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月28日(令和2年4月7日改正))(https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/kihon_h_0407.pdf, 2020年4月22日閲覧)
*3 URC2018年度総合研究報告書「Sosiety5.0~福岡市における「人」が中心の未来社会~」

イメージ写真
コロナによってニューノーマルがやってくる。「やってくる」というのは、そもそも他人まかせで、どのような転換が必要か望ましいかを検討し、自らをその変化の一部に位置づける、あるいは自分自身が変化になるべきであろう。“Be the change you want to see in the world”(マハトマ・ガンジー)である。私のニューノーマルのささやかな試みとして、URC内で、ウェブ上のインハウスセミナーを企画した。在宅勤務により、顔を合わせる機会が減少した所内において、情報共有、意見交換、スキルアップの一助になればとの考えからである。やってみると、セミナー用にテーブルを並べる必要もなければ、資料を印刷することもなく、そもそもデスクから移動する必要さえない。直前まで他の業務をしていられるので気軽、というのは主催者だけでなく参加者もそうであろう。しいて言えば、イヤホンを忘れずに、というところである。対応しなければならないニューノーマルではなく、社会の新たな一面を作り出すワクワク感を忘れず取り組んでいきたい。
http://urc.or.jp/event/column-20200513

イメージ写真
いま、テレワーク勤務を行う人が増えている一方で、ハンコや書面提出等の従来の業務の進め方ゆえに出勤せざるを得ないという意見も聞かれます。例えば、ある調査では、“緊急事態宣言中にハンコの押印が必要で今月出社した、もしくはする予定”と回答した人が約40%という結果も示されています*1。決して少なくない割合であり、「ハンコを押すために出社した。」という交通広告が共感を集めたというのも頷ける話です*2。
一方、契約書、請求書、各種申請用紙、荷物の受け取り用の伝票等、私たちは日常生活の中で様々なものにハンコをついています。また、「ハンコが押された紙の契約書が「本物」だと認められる根底にはハンコが金庫で厳重に管理され、ハンコを使う社内手続きの流れもしっかりと確立されているはずだという「信頼」がある。」*3というように、手続きとしての安心感があるのも確かです。こうして見てみると、ハンコが私たちの生活や意識にいかに浸透しているのかに改めて気づかされます。
ハンコ文化の一件に止まらず、いま私たちは、外出、買い物、仕事等のあらゆる場面において、従来のやり方を見直さざるを得ないことが多々あるでしょう。もちろん誰しも、新たな物事を受け入れる際に不安を抱くのは当然です。ですが、これまで当たり前にやってきた方法を再考し、望ましい方法とは何なのかを勇気を持って判断していくことが、いまの事態へ立ち向かっていくために求められているのだと強く感じます。
http://urc.or.jp/event/column-20200525
*1 電子契約未導入企業に務めるテレワーク中の社員への質問、n=154。 「イースタンプ、「電子契約・電子請求書に関する調査」を実施」、財経新聞、2020年4月27日(https://www.zaikei.co.jp/releases/994086/、2020年5月1日閲覧)
*2 「「ハンコを押すために出社した」在宅勤務ができない人の心を“代弁”した広告に共感」、FNN PRIME online、2020年4月21日( https://www.fnn.jp/articles/-/32640、2020年5月1日閲覧)
*3 「脱「対面・紙・ハンコ」へ首相指示 コロナ契機にデジタル化」 、日本経済新聞(電子版)、2020年4月27日
社会全体のウェブ環境の整備や「その利用」によって、地方に新たなチャンスがやってくる。そう感じる背景には、近頃の情報収集における変化がある。
最近は、ウェブで打ち合わせをする機会が増え、「3時から別の打ち合わせが入っていますが、それまでなら大丈夫です」なんて言われることもしばしばで、これまで当たり前に考えられてきた移動時間・出かける準備諸々が全て不要になり、時間の使い方が飛躍的に自由になった。これまでであれば東京のどこかのビルの一室で行われていた会議がウェブ開催になったことで、フライトの手配や予算の確認、抱き合わせの打ち合わせのセッティングをしなくても参加できるようになった。
しかし、そうした時間やお金や手間の問題だけでなく、地方にとって追い風なのは、「ウェブ利用の“心の”壁」が取り払われつつあること。電話で問い合わせるには何となく先方に失礼かもしれない…、専門家会議はコの字に並べられたテーブルで厳かに行われるもの…という考え方が外出自粛の影響で否応なく一新され、今では、「ちょっとこの後ウェブでどう?」なんて軽い誘いも可能となったり、腰が引けてしまうような小難しい会議もポチっとするだけで傍聴できるようになった(※私的な意見です)。
兎にも角にも、ウェブを介した情報収集&コミュニケーションの増大による地方の力を見せつけるチャンス!が訪れているのである。情報の収集にとどまらず、発信側にとっても、これまで取り込めていなかった層の声を聞いたり、届かなかったメッセージを行きわたりやすくしたりということがウェブの利用により場所を問わず可能になる。ウェブ利用の心の壁が取り払われた社会では地方の力を遺憾なく発揮できるのである。情報革新の心の壁を取り除き、地方のチカラを発揮する、ニューノーマル、はじめました。
http://urc.or.jp/event/column-20200608

出所:厚生労働省「第1-3回「新型コロナ対策のための全国調査」からわかったことをお知らせします。第4回「新型コロナ対策のための全国調査」の実施のお知らせ」表3を基に作成(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11109.html、2020年5月2日閲覧)

イメージ写真
厚生労働省によるLINE調査の第1回から第3回までの結果(4月30日公表)では、各都道府県のオフィス中心の人のテレワーク実施割合の推移が示されています。これをグラフで表すと、実施率1~5%未満の県の数が減少してきた一方で、5~10%未満の県の数が増加し(図1)、さらに上位の都府県では第3回調査時点までに実施割合が伸びていることがわかります(図2)。
全国的にテレワークの実施が進んできたと見ることもできますが、都道府県ごとのテレワーク実施割合には差があります。4月7日の緊急事態宣言発令後に実施された第3回調査では、緊急事態宣言対象地域となった7都府県の実施割合は高いものの、実施率1~5%未満が9県、5%~10%未満が24道県という結果となりました。こうした差が生じた背景には、コロナ感染者数の増加傾向の違い以外にも、通勤にかかる時間の差、公共交通機関か自家用車かという通勤手段の差、各地域のテレワークに適している業種の多さや企業規模、テレワーク実施環境の整備が進んでいたかどうか等の様々な違いがあったと考えられます。企業のテレワーク実施環境の整備に対しては、ここ数か月で国や各自治体による各種支援策が打ち出されており、今後のテレワーク実施割合の上昇につながることが期待されます。
福岡市でも、テレワーク促進に向けて、地場中小企業・小規模事業者等を対象とするテレワーク促進事業が実施されました。同事業の一環である「福岡市テレワーク促進事業支援金」に対する認定済み企業数は約400件、追加申請件数は519件という結果が示されています*1。これらの件数からは、各企業のテレワークに対する関心の高さが読み取れるとともに、今回テレワーク導入の検討を通じて、多くの企業が従来の働き方を見直す機会を得た数字としても捉えることができます。
5月25日に全国の緊急事態宣言は解除され、再びオフィスへ通勤する人の姿が多く見られるようになってきましたが、従来の方法に後戻りするのではなく、前進を。ここ数カ月の働き方に対する企業や個人の試行錯誤の経験は、このまちで働く人たちの多様な働き方実現への明るい兆しであるのだと、筆者は感じています。
http://urc.or.jp/event/column-20200615
*1 福岡市ホームページ参照。同支援金は2020年5月7日に申し込みが開始され、5月22日に受け受けは終了している。

画像はイメージです
今や、映画、音楽、スポーツなど、さまざまなコンテンツをオンラインで楽しめる時代です。
一方で、生で観る迫力や臨場感は、体験した人だけが得られる特別なものです。
それぞれの良さがありますが、福岡市は、大規模なものから小規模、ニッチなものまで、文化・芸術分野に、直接触れる機会に恵まれた都市といえます。
一方、自ら趣味、特技をいかし、活動する人も多く、福岡市には、官民多くの小劇場、音楽等の練習場があり(http://www.fpap.jp/theatre/theatre.htm*i)、活動を支えています。
活動の成果は、発表会や公演等、人に見せる歓び、緊張感を持つことで、モチベーションが高まり、マズロー*iiいうところの承認欲求、自己実現欲求まで充足します。
オンライン配信等、手軽に披露できる時代です。それでも、直接オーディエンスに魅せて得られる興奮は格別でしょう。博多どんたく港まつりは、特設ステージなどで、老若男女が、音楽やダンス・踊りなどの芸を披露することも、「福岡市民の祭り」たる所以です。
観る。演る。魅せる。そして、もう一つの文化・芸術の醍醐味が、「推す」です。
好きなアーティストを応援する。理屈抜きに作品、活動を楽しむ応援もあれば、関連消費などによる金銭的な応援もあります。オンライン上でも「投げ銭」の仕組みが増えています。
推し方や対象も多様で、メジャー推しもあれば、自分だけの推しを見つけ、有名になれば「私が育てた」と、もはやマズローの5段階にも当てはまらないような独特の満足感を得る人もいます。
文化・芸術活動は、言うまでもなく、人のクリエイティビティが発揮される分野で、それは新たな価値の創造とも言い換えられます。オンライン時代だからこそ、活動や鑑賞する生の機会が充実することで、想像力が刺激され、新たな価値を生み出すきっかけとなり、心の充足は、日々の生活の質向上に影響し、都市の魅力や市民の幸福度向上につながることも期待されます。
http://urc.or.jp/event/column-20200622
*i: 出典NPO法人福岡パフォーミングアーツ。プロジェクト・営業状況等は各施設へ確認ください。
*ii: マズローの欲求5段階説:人間の欲求を「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5段階に理論化したもの。1つの欲求が満たされると次の欲求を満たそうとする基本的な心理的行動を表しています。

トロントの公園
カナダ東部のオンタリオ州は外出制限が一部緩和されてから数週間が経ち、緩和を段階的に進めようとしていますが、その州都であるトロント市から公園の写真が届きました。フィジカル・ディスタンシング(「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離を保つこと)」のより良い表現として広まり始めた言葉)を行うために、芝生に円が描かれています。週末にはこの円の中で佇む人が大勢いるそうです。(写真が撮影されたのは6月上旬平日の午後6時頃)
トロント市は、公園や公共広場において同居していない人と2メートル以内に近づくことを禁じ、罰金も科しているため、警官がパトロールしていますが、外出制限が厳格だった頃に比べると随分取り締まりは緩くなっており、円の枠に関わらず10名以上で集まっているグループもいたそうです。
今年は5月にも一時的に雪が降ったほど冬が長かったこともあり、また、秋もすぐにやって来るため、青々と輝く芝生で寛ぐことのできる時間は多くの人にとってかけがえのない時間となっているようです。
公園のフェンスに掲示されているトロント市の注意書きには次のように書かれています。
DO YOUR PART.(ドゥ・ユア・パート)
STAY APART.(ステイ・アパート)
「ドゥ・ユア・パート」は、直訳すると「あなたの役割を果たせ」ですが、この場合、「社会の一員としての役割を果たそう、責任ある行動を取りましょう」というような意味になります。「ステイ・アパート」は、「人との距離を取りましょう」です。日本の「三密」などで韻を踏んでいるのと同じように、「(ユ)ア・パート」と「アパート」の部分で韻を踏んでおり、馴染みやすい標語にするための工夫が見られます。
また、写真では見えにくいかもしれませんが、人との距離を取るべき2メートルがどのくらいなのかを説明する例えとして、ホッケーのスティックの長さが挙げられており、アイスホッケーが盛んなカナダらしい表現です。
http://urc.or.jp/event/column-20200629
参照:
https://www.cbc.ca/news/canada/toronto/covid-19-coronavirus-ontario-june-8-stage-2-reopening-1.5602779
https://www.toronto.ca/home/covid-19/covid-19-what-you-should-do/covid-19-orders-directives-by-laws/

画像はイメージです
以前からあったテレワークやオンライン会議が、コロナ禍を背景として一気に普及が進んだと言われます。無駄の排除や業務の効率化を理由として、さらに普及が広がる可能性はあります。100%取って代わるにはまだ壁はあるものの、働き方の選択肢が多様化したことは間違いないでしょう。
一方、天神、博多・・福岡市の都心部は、華やかな買い物や交流の場である一方、平日昼間の賑わいを支えるのは、多くの働く人です。百貨店をはじめ、飲食店、各種サービス店等にとっても、働く人は、平日の重要な顧客です。
テレワークやオンライン会議が本格的に普及した場合、平日の買い物、飲食、習い事、趣味活動・・などの需要減少が予想されます。効率化の一方で、失われるものが生まれることは、付加価値の拡大と生産性の向上は、(地域全体でみた場合は)比例しないということになります。一般に、効率化はメリット、非効率はデメリットととらえられますが、非効率なもの、一見無駄なものも、価値を生み出すという矛盾を孕んでいます。
自粛期間中、人が出歩かず、多くの飲食店等が苦境に陥るなど、さまざまな業種で活動が停滞しました。人の活動や消費で、世の中が支え合い、経済が成り立っているということを、改めて認識する機会となりました。
経済の語源とされる「経世済民」(世の中をよく治めて人々を苦しみから救うこと)は、私達一人ひとりも、その一部を担っていて、デメリットによる苦しみが生み出されるなら、それを避けることも、経済活動の一つといえます。
効率化だけを突き詰めるのでなく、非効率なもの、一見無駄に思えることに、いかに価値を重ねていくかも、忘れてはならない視点であり、都市の経済の多様性につながるのではないでしょうか。
福岡市の都心部は、今、生まれ変わりつつありますが、最先端のイノベーションを纏いつつ、効率性だけでは測れない多様な価値に彩られ、今後も、働く人をはじめ、さまざまな人が集まり、賑わい続けていくことを願います。
Afterコロナ、Withコロナなど、今後の社会のあり方を模索する動きが広まっています。
命を守る行動の次に必要なものは、自身の心のゆとりと他者への思いやりで、‘メリ・デメ’ や効率化だけでは見えてこない「新しい生活様式」や「働き方改革」が必要なのかもしれません。
http://urc.or.jp/event/column-20200706

画像はイメージです
以前、会議で自分以外が話している時は大抵目をつぶっている人がいました。最初は、話の内容が面白くないから眠っているかと驚きました。しかし他者の話が終わった途端、的確で冴えた発言をすることが度々あり、彼は眠っているのではなく、全神経を集中させ、聞きながら考えているのだと分かりました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で増加したオンラインで開催されるセミナー、いわゆる「ウェビナー(「ウェブ(Web)」と「セミナー」を掛けた造語)」をいくつか受講していく中で、私も彼のスタイルが自分に適していることに気付きました。
それは、英国を拠点に旅行関連データを提供するグローバル企業(OAG)が開催したウェビナーを受講した時のことです。進行役や講演者の話す映像は無く、資料のスライド画面と音声のみが配信されるウェビナーでした。話している人の顔の映像が無いことで、音声とスライド上の図表に集中することができ、内容がすんなりと頭に入ってきました。また、進行役と講演者達の会話には、ラジオドラマを聞いているかのような臨場感があり、飽くことがありませんでした。
一方で、講演者の顔の映像が画面に並んでいるウェビナーは、内容に集中することが難しく感じました。
人は目に見えるものから様々な情報を得ようと無意識に行動してしまうため、疲労がたまる上に、それほど親密ではない人の顔を50センチ程度しか離れていない位置から見続けることは実生活ではほとんどないため、違和感が生じ、苦痛に感じるそうです。*
ウェビナー増加のおかげで、開催場所に関係なく国内外の講演を受講することが可能になった今、しばらく断念している旅行を楽しむように、国内外の多様なスタイルのウェビナーを楽しみたいと思います。
http://urc.or.jp/event/column-20200713
*参考:
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001351.html
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/042800264/
https://hbr.org/2020/04/how-to-combat-zoom-fatigue

画像はイメージです
福岡市中心部で乗るタクシーのドライバーが女性であることは、最近ではそれほど珍しいことではなくなったように思います。年に数回は女性のタクシードライバーに遭遇するようになりました。始発便に乗るため福岡空港まで送ってもらったタクシーの女性ドライバーが、「日焼けをしたくないから、夜間から明け方にかけてしか乗務しないようにしているんです」と話してくれたこともあります。
タクシー車内に表示する運転者証の交付数によると、2019年3月末の女性乗務員数は全国で9,723人(福岡県は519人)、運転者総数に占める構成比は3.3%(全国)で、過去最高の構成比となっています。(※2)
そのようななか、先日乗ったタクシーはドライバーが女性の個人タクシーでした。「女性ドライバーの個人タクシーは初めてです」と伝えると、「福岡で個人タクシーをしている女性は15人しかいないんですよ」と教えてくれました。
福岡市統計書によると、福岡の個人タクシーの届出台数は1,521台、乗員人数は3,771人となっています(※1)。この数字は2018年度の実績であり、福岡市近郊の市町村も含んでいるため、単純に女性の割合を計算できませんが、教えてくれた15人の女性個人タクシードライバーは同乗員人数の0.4%に満たないことを考えると、女性の個人タクシーに乗車できたことは貴重です。激レアです。私は幸運な気持ちになりました。
「個人タクシーを始めるには、10年以上タクシー会社での乗務経験があり、さらに筆記試験に合格する必要があるため、ベテランの方が多い。」と前述の女性ドライバーが説明してくれました。遠回しに、運転に関して安心してくださいと私に伝えたかったのかもしれないと、後から気付きました。
個人的には、夜間に女性ドライバーのタクシーだと安心感が増すので、女性の増加は大歓迎です。
http://urc.or.jp/event/column-20200817
※1: 福岡市統計書(令和元年(2019年)版)。福岡市,春日市,大野城市,筑紫野市,太宰府市,糸島市,古賀市,那珂川市,糟屋郡の事業者の平成30年度実績
※2: 一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会「女性乗務員採用状況調査結果(平成31年)」

①特別史跡水城跡の碑、②水城資料館、③堤防を横切る高速道路(全て筆者撮影)
盂蘭盆(仏教)と中元(道教)、今年も2つの宗教の節気が一緒にやってきました。コロナ禍で遠出できないため、盆休み中に自転車に乗って福岡近郊の史跡巡りをしました。その一つは大宰府にある水城跡です。
国道3号線に沿って福岡市から南下して太宰府市に入ったところに「特別史跡水城跡」の碑が立ち(写真①)、隣に土塁(堤防)の一部を抉って造った「水城資料館」と展望台があります(写真②)。
水城は「日本書紀」に登場する名所旧跡。「於對馬嶋・壹岐嶋・筑紫國等置防與烽。又於筑紫築大堤貯水、名曰水城」(巻第廿七天智天皇)と記されています。
史書によると、水城は白村江の戦(663年)で敗北した翌664年に、日本(天智天皇)が大宰府政庁を防衛するために築造した軍事施設です。当時、圧倒的強さを誇る唐や新羅の連合軍が進撃してくるかもしれないという危機的状況のなか、日本は遣唐使を派遣して唐との和睦交渉に駆け回る一方、対馬・壱岐に烽火・防人、筑紫に水城を築きました。
水城の堤防の長さは1.2km、基底部の幅は80m、そして高さは10mを超えていました。堤防の南側(博多側)に幅60m、深さ4mの大濠が掘られ、御笠川から引いてきた水を貯え、博多湾からの敵軍侵入を阻止する防御態勢を整えたのです。
濠は鎌倉時代(13世紀)に埋められましたが、堤防は今もかつての姿をとどめています。景観に配慮するため、堤防を横切る高速道路の高さも、水城跡の頂部より低く下げられたそうです(写真③)。
一年足らずでこれだけの大規模な防衛施設を築造したことから、当時の人々が大陸・半島に抱いた警戒感を垣間見ることができます。幸いなことに、水城もまた中国の万里の長城と同じく、実戦に使われたことは一度もなかったそうです。
日中韓を巻き込んだ白村江の戦、その関連遺跡である水城跡はこれからインバウンド旅行客から注目されるかもしれません。それに朝倉の恵蘇八幡宮も加えれば、より充実した周遊コースとなるでしょう。恵蘇八幡宮裏手の御陵山には、天智天皇の母親にあたる斉明天皇の御殯斂地跡があります。彼女は新羅遠征の陣頭指揮をとるために661年5月に奈良から九州へと赴いたものの、2ヵ月後に朝倉の地で崩御され、ご遺体は一時期この朝倉の地に安置されていたそうです。白村江の戦はその2年後でした。
http://urc.or.jp/event/column-20200828

天神地下街
天神地下街を歩いていると、10メートルほど前方から車いすに乗った女性が向かってきているのが目に入りました。進行の妨げにならないようにと思い、意識して通りの端の方を歩きましたが、人通りの少ない時間帯で広々と通れるにも関わらず、ごく近い距離ですれ違ったことに疑問を感じ、振り返って車いすの方を見ると、私の歩いていたまさに通りの端を進んでいるのが見えました。その瞬間、通りの端の舗装がスムーズな場所を通りたかったのだと分かりました。
天神地下街は、石畳が敷かれ、景観や雰囲気の良さが自慢の一つですが、車いすを使う方にとっては、その凹凸がスムーズな通行を難しくするのかもしれません。通りの端の舗装がスムーズな場所は、そうした方への配慮によるものと改めて気付きました。自分の想像力の足りなさを反省するとともに、これからはなるべく石畳の部分を通るようにしようと思いました。
福岡市が2019年9月に実施した調査では、調査対象の身体障がい者のうち、「外出時」の移動手段として7.2%の方が車いすを使うと回答しており、福岡市全体の身体障がい者数から推計すると、約3,350人の方が、車いすを使って外出していることになります。(※1)
同調査で、「障がい者の人権に関して問題があると思うこと」を尋ねたところ、最も多い約3割の人が「道路の段差や建物の階段など外出先での不便が多いこと」と回答しています。(※2)また、「障がいがある人が暮らしやすい社会をつくるために、地域社会や企業に、特に力を入れてほしいと思うことは何か」を尋ねたところ、約半数の人が「公共交通機関や建物、店舗、住居などを障がい者が利用しやすいようにつくる」ことを望んでおり、最も多い回答となっています。(※3)
福岡市は、ユニバーサルデザインの理念に基づき、「みんながやさしい、みんなにやさしいユニバーサル都市・福岡」の実現を目指し、市内施設のバリアフリー整備状況の紹介(バリアフリー・マップ)や、小規模店舗などを対象としたバリアフリー改修の手引きの作成などを行っています。車いすで外出しやすい環境の整備が進むことを願います。
http://urc.or.jp/event/column-20200928
※1: 福岡市『福岡市障がい児・者等実態調査報告書』(2020年3月)。p.3, p.36. 「身体障がい者調査」における760人の回答者のうち696人が外出すると回答。このうち7.2%が移動手段として車いすを選択(複数回答)。福岡市の18歳以上の身体障がい者数(身体障害者手帳の所持者)は50,989人(2019年6月30日時点)。
※2: 前掲書, p.81.
※3: 前掲書, p.86.
2年前の旅行で天草(熊本県)を訪れた時から、いつか有明海を挟んだ対岸の島原半島(長崎県)を訪れたいと思っていたのですが、先日やっとその旅が実現しました。
2011年に雲仙天草国立公園雲仙地域で地域再生行動計画「雲仙プラン100」が策定され、その一環としてユニバーサルデザインの調査や、ユニバーサルデザインの視点から雲仙温泉街を考えるワークショップとまちづくり勉強会が行われていたことを旅の直前に知り、ユニバーサルツーリズムについて学ぶことも楽しみの一つになりました。
観光名所の一つである雲仙地獄は、雲仙温泉中心街から徒歩圏内にあり、スロープ状の幅広い歩道が整備されていました。奥に進むとまだスロープが整備されていない区間もあり、車いすを利用する人が私と同じ景色を見ることができないことは少し残念でしたが、自然の造形をなるべく壊さずに歩道やスロープを整備して観光を振興する難しさも感じました。もしかすると、ロボット技術の発展とともに、古代ローマの輿担ぎが進化したようなサービスが誕生する日が来るかもしれません。
普賢岳や平成新山を間近に見ることができる「雲仙ロープウェイ」では、駐車場からロープウェイ乗り場までスロープ状の歩道が整備されていました。歩道の入り口付近に、「車椅子の単独利用不可」という看板が設置されており、「不可」という表現は、諦めざるを得ない人の気持ちを想像すると、少し胸が締め付けられましたが、介助者が同行していればロープウェイを利用することができるそうです。料金を支払いゴンドラに乗り込むまでの順路が階段になっているため、介助者の大きな助けが必要になります。
旅から戻った後、長崎県が2019年12月に実施したユニバーサルツーリズムのモニターツアーの記事を見つけました(https://www.nishinippon.co.jp/item/n/576795/)。参加した車いすを利用する男性は、「段差に板を置いてスロープ代わりにするなど、少しの工夫でクリアできることもある。お金をかけて設備を整えるよりも、ちょっとした心遣いが大事」と述べていました。ハード面での整備だけでなく、誰かが手伝ってくれると安心できるようなソフト面も充実した社会が望ましいと気づきました。
福岡空港にはユニバーサルツーリズムのワンストップ窓口を目指した「福岡空港しょうがい者・こうれい者観光案内所」が2019年11月にオープンしました。観光案内だけでなく、改善すべき課題やリクエストの聞き取りもできるワンストップ窓口になることを期待するとともに、困っている人を手助けする優しさやコミュニケーションが観光地でも見られるようになることを願っています。
http://urc.or.jp/event/column-20201104
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から開催が中止された「博多灯明ウォッチング」と「博多旧市街ライトアップウォーク」の特別展が福岡市役所一階の多目的スペースで2020年11月8日(日)まで開催されています。(詳細は「博多の魅力」イベント情報)
福岡市の博多部一帯を灯明の灯りで飾る「博多灯明ウォッチング」と、博多旧市街エリアの歴史ある寺社仏閣等をライトアップする「博多旧市街ライトアップウォーク」は、年々来場者が増え、今ではすっかり博多の秋の風物詩となりました。博多のまちの魅力を市民や観光客に伝え、まちの回遊性の向上に貢献しているようです。
入場無料の特別展では、両イベントの魅力が伝わる美しいパネル写真のほか、地域の子どもたちが作ったアイデア満載の灯明を観覧することができます。
開催を断念しなければならなかったことは関係者や楽しみにしていた方々にとって大変残念なことであったと思いますが、昼間の屋内展示により、イベントの新たなファンを発掘できる良い機会になるかもしれません。かわいらしい手作りの灯明に実際に明かりが灯った光景を想像して、来年は秋の夜の博多のまちを歩いてみたいと思う人も増えることでしょう。
http://urc.or.jp/event/column-20201106

画像はイメージです
福岡市のお隣、糸島市がイギリスの情報誌・モノクルの、「輝く街」世界3位に選ばれました。多機能性、多目的性に優れ、住むところと働くところと考えられていることが評価されています。
糸島市は、海も山も田園もあり、自然豊かでありながら、生活利便性も高く、福岡市へ通勤・通学する人も多数住んでいます(都市圏通勤・通学率表)。また、糸島市と福岡市にまたがるエリアに九州大学が立地し、学研都市としても発展しているほか、個人でさまざまな創作活動を行う人のための支援施設も設けられています。
福岡市を中心とした近隣17市町は「福岡都市圏」と呼ばれ、広さは札幌市とほぼ同じですが、人口は約260万人で、札幌市を大きく上回ります(人口表)。
糸島市のほかにも、福岡都市圏は多彩な魅力があります。宗像市(一部福津市)には世界遺産・「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群があり、人口増加中の福津市は、宮地嶽神社の「光の道」が話題となるなど観光客も増加しました。観光資源の宝庫・太宰府市は、話題の「鬼滅の刃」にちなみ宝満宮竈門神社で注目度がさらに増し、那珂川市は、全国放送のTV番組「アナザースカイ」で、異例の2週にわたりタレントの田村淳さんに激推しされるなど、ここにきて多くの人が、その魅力に気付き始めた気がします。
福岡都市圏の市町は、風光明媚な魅力にとどまらず、都市に近い利便性や刺激、そして多様な暮らし方、過ごし方ができる今の時代に合った洗練された魅力が、多くの人に支持されるのでしょう。
コロナ禍の影響か、東京都の転入超過(転入者>転出者)が、今年5月に7年ぶりに転出超過(転入者<転出者)となりました(総務省・住民基本台帳人口移動報告)。ただ、東京からの転出先は、近隣県が圧倒的に多く(くらしのマーケット調べ)、都会から遠く離れた大自然の田舎暮らしに憧れ・・というよりは、都会に近い利便性と住環境の良さをいいとこどりした、言わば“都会的な田舎”暮らし志向が主流です。
企業の動きに目を向けると、通販販大手ジャパネットが、主要機能の一部を福岡市へ移転すると発表しました。東京から見たら、福岡市が“都会的な田舎”なのかはわかりませんが、新しい価値観に基づく判断といえそうです。
大自然の中での本格的なキャンプに対し、郊外、都心問わず多様な過ごし方をするグランピング(グラマラス・キャンピング=贅沢なキャンプ)が注目されています。福岡市を含む福岡都市圏は、海あり山あり都会ありの、グラマラス・ローカル(贅沢な地方)、“グラマカル”なエリアと言えるかもしれません。
http://urc.or.jp/event/column-20201118
2ヶ月ほど前の話ですが、天神のど真ん中の交差点で歩行者用信号が青になったとき、カラスが横断歩道の脇に舞い降りるのが見えました。行き交う人の合間からカラスを見ると、誰かが落としたセーターのようなものが眼に入りました。よく見ると車に轢かれたのか、既に息絶えた猫でした。
早くどこかに連絡しないとカラスに突かれるかもしれない。また車に轢かれるかもしれない。どこに連絡すれば…気になりながらも何も行動できない自分に苛立ちつつ、横断歩道を渡り始めました。
次の瞬間、70代くらいの女性が猫の方に近づくのが目に入りました。ビニール袋をはめた右手で猫を持ち、道路脇の柵の側にそっと置いたのです。ちょうどその時、女性警察官二人が走って駆け付け、女性にお礼を伝えたあと、猫を収容するためにしゃがみ込むのが見えました。その向こうには、何事もなかったかのように歩き去る女性の後ろ姿がありました。
私は横断歩道を渡ったあとも、振り返りつつ一部始終を見続けました。ほんの20秒程の出来事でしたが、最初に猫を移動させた女性の素早い行動に感動しました。こういう風に、何をすべきか判断し、咄嗟に行動できるような方を見習いたいと強く思いました。
後日調べたところ、福岡市の道路上で動物の死骸を見つけた際は、市が処理を委託する業者に、直接電話連絡をすると対応してくれることが分かりました(https://www.city.fukuoka.lg.jp/kankyo/kateigomi/qa/FAQ2258.html)。また、幹線道路で動物の死骸を見つけた際は、全国共通・24時間受付無料の「道路緊急ダイヤル(#9910)」に通報すると、各道路管理者に対応するよう連絡してくれるそうです(https://www.mlit.go.jp/road/dia/)。
ちなみに福岡市の生活衛生関係事業統計によると、2019年度に動物愛護管理センターで収容した負傷猫の負傷原因として最も多いのは「交通事故」と推測されており、猫の交通事故が多く発生していることがわかります。
http://urc.or.jp/event/column-20210315

画像はイメージです
仙台市長が「福岡市をライバル都市として注視していく」と公言したことがニュースになりました。仙台市は、約110万人の人口を誇る大都市ですが、特に、福岡市の都心再生やスタートアップを促す取組みなどに注目されているようです。
首都圏、中京圏、近畿圏の国内三大都市圏以外に、各地方には中心となる大都市があり、札幌市(北海道地方)、仙台市(東北地方)、広島市(中国地方)、福岡市(九州地方)は、「札仙広福」として、比較対象とみられてきました。
その中で、仙台市は、福岡市に注目されたわけですが、URCの発行の「FUKUOKA Growth 2020」で扱っているデータから4都市を抽出すると、数字上は、福岡市は勢いがあるようにはみえます。
*例えばこれとか、これとか、これなど
各都市は、歴史や背景が異なり、単純に比較することはできませんが、福岡市の強みがあるとすれば、やはり九州地方にあるということかもしれません。4都市の後背人口、人口密度とも他の地方を大きく上回っており、福岡市が、現在、人口増加率で、首都圏の川崎市と1位、2位を競っているのも、九州との強いつながりのおかげによる部分が大きいです。九州各県とも、個性や強みを持っていますし。
今回の発言は、首都圏の人は、地方都市同士の話として、たいして関心も高くなかったと思いますが、今は、規模の大きさに胡座をかいて(ないと思いますが)数の論理で価値が決まる時代ではありません。小さくても、戦略次第で新たな価値やイノベーションを生むことは可能です。
規模ではなく質と戦略で高みを目指すべく、URC発行の「第3極の都市」では、早くから世界の質の高い都市をベンチマークして、福岡市がイノベーションを生み出し続ける都市となるためのヒントを探してきました。
「札仙広福」は、地方都市という括りでそれぞれの個性を蔑ろにする言葉に思えます。
東京や首都圏ではなく、福岡市を意識するという仙台市の尖った視点、素晴らしいと思います。首都圏への一極集中を止め、地方の自律を牽引する役割を担う部分は両市に共通しています。札幌市や広島市を含む各都市が、個性をいかして力を発揮し、互いに切磋琢磨することで、それぞれの地方はもとより、日本全体に活気を与えることにつながるのではないでしょうか。
http://urc.or.jp/event/column-20210329
お洒落な少し年上の友人が花瓶をプレゼントしてくれました。「花は好きだけど、花束をもらった時に飾るくらいで長続きしない。まともな花瓶もないからグラスを花瓶代わりに使っていて、花束が大きい時は倒れそうになる」と、以前私が話していたのを覚えていたようで、少し大きめの美しい花瓶を選んでくれました。
念願の花瓶のある生活が始まったものの、肝心の花を入手できず、しばらく空の花瓶を眺める生活が続いていました。「花屋が開いている時間に花屋に寄れない」「週末の買い出しでスーパーに寄るけれど、入り口付近に陳列されている花には何となく惹かれない」…実行しない言い訳はいくらでも並べることができます。
そのような中、イギリスの手作り焼き菓子を提供する小さな喫茶店に別の友人と二人で行く機会がありました。レコード盤のクラシック音楽が流れるコンパクトな店内で、紅茶と珈琲をおかわりしながらカウンター越しに店のマスターと音楽や演劇や文学について談笑し、気づけば2時間も滞在していました。その帰り道にスーパーに寄ったところ、入口の花コーナーで足が止まりました。ビニールに包まれ数百円の値札が付いた菊の花がいつもよりも素敵に見え、ついに買って帰りました。喫茶店での情緒あふれる時間で気分が高揚していたのでしょうか、一歩踏み出せた気がしました。
福岡県の切り花類の出荷量は全国3位(農林水産省「令和元年度花き生産出荷統計」)で、福岡市西区の北崎・元岡では年間4百万本近いバラが生産されています(グラフ1)。福岡市の花き産出額は主要大都市の中でも最も多く(グラフ2)、農業経営体あたり産出額も最も高くなっています(グラフ3)。近所の花屋の軒先に「北崎」の文字が印字された配送用段ボールを見かけると、地元で生産されたお花をちゃんと購入できるのだと分かり、嬉しくなります。
福岡市は「一人一花運動」を行っています。公園、街の中、歩道の一角など、身近な花に触れる機会が増えていますが、家の中にも花があると、情緒あふれる時間を過ごすことができるのではないでしょうか。
http://urc.or.jp/event/column-20210625

画像はイメージです
国土交通省より令和2年度の都市鉄道の混雑率調査結果が公表されました。コロナ禍による緊急事態宣や外出自粛等に合わせて、鉄道各社が運行本数の調整などを行った結果となっています。
各社、利用者減などの影響を受け、混雑率が大幅に低下した路線(区間)が多くみられます。(表1)
福岡市関連では、都市圏西部から都心に向かう地下鉄空港線「大濠公園→赤坂」間が115%、南部から都心に向かうJR鹿児島本線「二日市→博多」区間が104%などとなっていますが、最も混雑率が高かったのは、北東部から都心に向かう西鉄貝塚線「名島→貝塚」間の129%です。この混雑率は、首都圏でも上位に入る水準です。もちろん、車両の編成数、運行本数などが異なるので、単純な比較はできませんが、乗車したときに感じる「密」度は、首都圏の激しい混雑路線と同等ということになります。西鉄貝塚線沿線の千早駅周辺などで、マンションが急激に増えて人口が増加したことも、高い混雑率の一因と考えられます。
令和2年度の混雑率を前年と比較すると、福岡市近郊含め2割前後低下したところが多いですが、首都圏は、軒並み4割前後低下していることがわかります。
東京23区ではテレワーク実施率が地方と比較して高い水準となっており(図1)、企業がコロナ禍に対応した働き方を導入したことで、ラッシュ時の混雑率が低下したとみられます。
一方、混雑率の低下が比較的軽微な福岡市などでは、テレワークが十分には広がっていない状況がうかがえます。
改めて、コロナ禍前、令和元年度の首都圏の混雑率上位区間をみると、180~190%台という異常(=アブノーマル)な混雑率が、当時の普通(=ノーマル)だったことが分かります。
コロナが収束したとき、またこの異常な混雑率が戻るのか、それともテレワークなどが定着して、ニュー・ノーマルな通勤風景に変わるのかはわかりません。
まずはコロナの終息を願いつつ、来たるべきニュー・ノーマルな社会が、異常の少ない社会に進化していることが大事なように思います。
http://urc.or.jp/event/column-20210721