「第3極」の都市plus3:02.北欧の住みやすい都市Helsinki & Stockholm、福岡の姉妹都市 Busan

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02.北欧の住みやすい都市Helsinki & Stockholm、福岡の姉妹都市 Busan

2016年Monocleで7位に評価されたFukuoka
今年もMonocleによるMost Liveable Cities in The Worldが発表されました。気になる福岡の順位ですが、昨年の12位から過去最高となる7位に順位を上げました。福岡については、以下のように講評されています。

Under the inventive mayor Takashima, this thriving city on the island of Kyushu, is becoming ever more green, bike-friendly, and business-savvy.
独創性あふれる高島市長のもと、九州で成長しているこの都市は、かつてないほど環境に優しく、自転車に友好的で、ビジネスに精通してきている。(URC翻訳)

FUKUOKA NEXTのかけ声のもと、国家戦略特区など現在進められているさまざまな取り組みの成果が、福岡のランキング上昇として表れてきました。人口増加や経済成長のみならず、都市環境向上への取り組みも評価されていることが今回のポイントだといえそうです。

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世界で最も住みやすい都市は?
世界には、Monocle以外にも「住みやすい都市」のランキングがあります。グローバルに展開するコンサルティング・ファームのMercerは、毎年Quality of Living Surveyを公表しています。また、英国エコノミスト調査部門のEconomist Intelligence Unit(EIU)もGlobal Liveability Rankingを公表しています。
これら2つのランキングに、福岡は現在のところランク・インしていません。MercerとEIUのランキングの上位25都市と、Monocleの25都市を並べてみました。3つのランキングすべてに、あるいは2つのランキングにランク・インしている都市が多いことに気が付きます。これら複数のランキングの上位にランク・インすることも、福岡の今後の大きな目標だといえます。

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世界で最も豊かで住みやすい都市は?
Mercer、EIU、Monocleの3つのランキングの上位25都市の何れかにランク・インしている都市は、全部で42都市です。これらの都市を、国別に仕分けると、ドイツが最も多い7都市になります。次いで、カナダとオーストラリアからそれぞれ5都市ランク・インしています。
日本からは、福岡、東京、大阪、京都の4都市がランク・インしており、国別でみると4位です。こうやってみると、日本の都市の住みやすさは、世界的にも評価されてきていることがわかります。ちなみに、アジアからは、日本以外ではシンガポールと香港のみがランク・インしています。
しかし、住みやすいのと同時に、日本よりも経済的な豊かさを享受していると考えられる国の都市は、少なくありません。国別の一人当たりGDPにおいて、日本より上位の国に所属する都市は、35を数えます。なお、ここに占める都市はすべて先進国の主要都市であり、国の一人当たりGDPよりも都市の一人当たりGDPのほうがさらに高いと想定されます。

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小さな国の豊かで住みやすい都市は?
次に、35都市の所属する国の人口規模の大きい順に、都市を並べ替えます。人口の多い国は自国内の市場規模が大きいため、人口の多い国の都市は人口の少ない国の都市と比べて、集積によるさまざまな恩恵を受けやすくなります。そのため、人口規模1,000万人を超えるようなメガ・シティもしばしば誕生します。それは、規模が大きいほうが経済的なメリットが大きいからにほかなりません。
しかし、国の人口が1,000万人を下回るような小さな国の都市は、メガ・シティになりたくても、なりようがありません。にもかかわらず、豊かさと住みやすさを両立している都市があります。ここでは、13都市がそのような都市に該当しました。

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小さな国の豊かで住みやすいコンパクトシティは?
13都市には、アジアからシンガポールと香港が残りました。両都市とも歴史的に、英語を公用語としながら海外市場に展開し、自国市場に依存しない経済発展を遂げてきました。これら2都市は、住みやすさの評価も高く、私たちも学ぶべきことは多くあります。一方、両都市ともに、限られたテリトリーにもかかわらず、都市は巨大化しつつあります。
ここでは、福岡と同じ価値観を共有する意味で、コンパクトな都市を抽出します。コンパクトシティの明確な定義はありません。国連ハビタットは今年3月に、「都市と国土計画に係る国際ガイドライン」を発行しました。ガイドラインは、26都市の事例を掲載しており、そのなかで福岡の「コンパクトで暮らしやすいまちづくり」がモデルとして紹介されています。
福岡都市圏の人口は約250万であることから、ここではその約半分から2倍以内の100万~500万の都市圏人口規模の都市を抽出します。その結果、7都市が、小さな国の豊かで住みやすいコンパクトシティとして浮上しました。なお、人口規模100万以下の都市も、もちろんコンパクトです。しかし、人口が少ないとサービスの需要も少ないため、公共施設などの機能面において、一定の人口を有する都市と比べて見劣りする場合があります。

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九州/福岡県のなかの福岡都市圏/福岡市との類似都市
以上の分析の結果、「小さな国の豊かで住みやすいコンパクトシティ」は、大きい順に、ウィーン、コペンハーゲン、ストックホルム、オークランド、ヘルシンキ、オスロ、チューリッヒの7都市となりました。魅力的な都市ばかりですが、さらに絞り込みを進めます。
最後に、それぞれの都市の国の人口と、その中での都市の人口集中率をみます。7都市の属する国の人口は、およそ500万~1,000万です。これらは、福岡県(約510万)~九州(約1,300万)の人口規模に相当します。
次に、7都市それぞれの国における人口集中率をみます。ヘルシンキは、国の人口546万に対して都市の人口は146万で集中率は約27%です。福岡県のなかでの福岡市の状況に非常に近いといえます。ストックホルムは、国の人口970万に対して都市の人口は196万で集中率は約20%です。九州のなかでの福岡都市圏の状況と似通っています。
福岡と同様の規模の後背地を持ち、福岡よりも経済的に豊かであり住みやすいとされるコンパクトシティとして、ヘルシンキとストックホルムが最終的に残りました。また、これら2都市は、福岡やほかの「第3極」の都市と同じく、IRBCのメンバーです。

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日本の末端都市とヨーロッパの末端都市
福岡は、日本の政令指定都市のなかで、2番目に首都東京から離れています。国土の中では末端に位置しています。それゆえ、首都圏経済へのアクセスには限界があり、地域独自の経済圏のなかでの成長を遂げてきました。また、古来より東洋のみならず、西洋へのゲートウェイとしても発展してきた都市です。
ヘルシンキとストックホルムも、ヨーロッパでの立ち位置は福岡の日本での立ち位置と似ています。ヨーロッパ第3都市のベルリンからでもそれぞれの都市までは、およそ1,000キロ離れており、ヨーロッパでは末端に位置しています。これら末端都市の高い経済力と、住みやすさの評価は、どのように生み出されているのでしょうか。

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福岡と類似する姉妹都市
「第3極」の都市plus3では、アジアの都市もベンチマークする方針をかかげました。日本よりも経済的に豊かで、住みやすさの評価の高い都市は、シンガポールと香港しかありません。しかし、これら都市は、コンパクトさの面で、福岡のベンチマークにはふさわしくありません。IRBCには、韓国のテジョンも加盟しているため、候補として考えられますが、グローバル都市としての評価、あるいは住みやすい都市としての評価は未だ得られていません。
そこで、福岡市の姉妹都市をみてみることにします。オークランド市(米国)、アトランタ市(アメリカ合衆国)、ボルドー市(フランス)、オークランド市(ニュージーランド)、広州市(中国)、イポー市(マレーシア)、釜山広域市(大韓民国)の7都市になります。
2014年の「第3極」の都市の選定プロセスにおいて、最終段階の一歩手前まで絞り込まれた都市に、アトランタ(米国)、バーミンガム(英国)、釜山(韓国)、ケープタウン(南アフリカ)、クラクフ(ポーランド)が含まれていました。これら都市は、首都でなく、メガ・シティでもない、グローバル都市として評価される都市でしたが、住みやすい都市としての世界的評価がなかったため、選ばれませんでした。しかし、これらには、福岡市の姉妹都市が2都市も含まれていました。アトランタと釜山です。

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韓国の末端都市:釜山
釜山は、韓国の東南端に位置する、韓国第2の都市です。しかし、首都ソウルが人口2,000万をこえる巨大都市圏を形成する一方で、釜山都市圏の人口は400万にも届きません。釜山は、韓国内では比較的温暖で、物価も安く、生活の質ではソウルよりも高いとされています。ソウルまでの距離はおよそ300キロあるのに対して、福岡までは約200キロの近さです。福岡と釜山は古くから玄界灘を境とした交流が盛んで、姉妹都市であるばかりでなく、行政交流都市でもあります。
釜山は、韓国では末端に位置しますが、東南アジア、そして日本を含む巨大市場への韓国側のゲートウェイでもあります。近年のクルーズ船やインバウンドは、福岡と同様に急増していると考えられます。
このような観点から、「第3極」の都市plus3では、アジアからは釜山を、福岡のベンチマーク都市に追加します。

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「第3極」の都市plus3の都市力は?
福岡の新たなベンチマークとなる3都市を追加し、いよいよ9都市からなる「第3極」の都市plus3の都市力を比較していきます。
9都市の都市圏域の人口規模を比較すると、最も小さいヘルシンキと最も大きいメルボルンには2倍以上の格差が生じています。この格差は、都市力にも大きく影響するのでしょうか?
次回からの更新をご期待ください!

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テキスト:情報戦略室長 久保隆行