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スタッフコラム

(公財)福岡アジア都市研究所(URC)のスタッフが、各々の研究活動や交流事業を通じて学んだこと、印象に残ったことなどを紹介します。ご関心のあるタイトルをクリックすると、コラム全文を読むことができます。
8月
14
先端技術を活用したマグロ養殖
8月 14 @ 09:00
お刺身のイメージ写真

※写真はイメージです。

2019年6月18日、日経BP主催の「九州デジタルイノベーション2019」にて、双日の村上氏による講演「マグロ養殖事業におけるIoT・AI活用事例 日本の水産業活性化に向けた取組概要」を受講しました。後継者不足や高齢化が問題となっている漁業は、年間売上300万円以下の漁業者が全体の7割も占めるそうです。

約4万匹を養殖する双日ツナファーム鷹島株式会社のマグロ養殖場では、IoTやAI、ビッグデータを活用した、①給餌最適化に向けた取組、②尾数の自動カウント、③(赤潮などの)危険予測による、餌代の削減と省力化が目指されています。いけすに設置されたセンサーで、水温、溶存酸素濃度、塩分濃度等をモニタリングし、餌あげの量やタイミングとマグロの育成状況等を記録したビッグデータとの相関性を調べることで、将来的には、特定の時期に特定の大きさにまで成長するための最適な給餌方法(量・タイミング)をAIで予測できるようになると期待されています。
実証実験を通じて、以下の4つの課題が明らかになったそうです。

①現場とITをつなぐ人材(IT通訳)が不足していること
②適切な協力者や知見者探しが大変であること
③属人化したノウハウや勘の個々人の解釈が存在し取捨選択に時間がかかること
④AI活用には多くの時間とデータを要すること

課題はあるものの、IoTやAIの活用は、収益性の向上、持続可能な海洋環境への寄与、消費者目線への波及・寄与が期待できることから、今後も「日本水産業の高度化への挑戦」を継続していくとお話しされていました。

普段は美しい刺し盛りに感嘆の声を上げながら食させていただくだけですが、その生産元は技術革新とともに着々と進化していることを学びました。

情報戦略室 山田美里
http://urc.or.jp/event/column-20190814
8月
23
シニア・カップルへの質問の答え
8月 23 @ 09:00
image photo

※写真はイメージです。

先日、シニア世代のご夫婦と話す機会がありました。日本各地から講演や講義をするために招聘されるような仕事を今も続けている80代の夫が、数か月前に仕事仲間と移動中に突然倒れ、怖い思いをしたそうです。その後の処置が良かったためすっかり回復したが、いつどうなるか分からない歳ですからねぇとおっしゃるので、失礼とは存じながらも、ついつい「“終活”とか意識されることはありますか?」と尋ねてしまいました。

人生の終わりを意識し始め、まずアクションを起こしたのは、「墓じまい(お墓の処分)」と「家の処分」だったそうです。お墓に関して、あとに残す人たちに負担をかけたくないという想いや、「ゼロ葬」というシンプルな葬法の選択肢についても教えていただき大変勉強になりました。住宅街の一戸建ての家を処分し、湾岸エリアのマンションに引っ越した現在の、ご夫婦の居住形式に対するお考えは大変興味深いものでした。

ごみ出し、ごみ置き場の当番掃除、屋内の階段の上り下りなど、一戸建ての時に身体的負担となっていたことは、マンションの管理人やエレベーターのおかげで解消されたとのこと。想定外であったのは、周りに干渉されず景色も良いと思われた最上階角部屋で感じる「箱に住んでいるような感覚」と、以前は得られていた近所の人たちからの「ほどよい刺激」の少なさでした。一戸建ての時は、早朝にバイク音が聞こえれば「近所の〇〇さんは今朝は早いね」と寝起きに思い、炊事場の窓から通りを歩く男女の人影が見えれば「〇〇さんの長男は彼女でもできたのかな」と思うなど、近所の生活の気配を感じることができていました。時にはごみの出し方について近所の人と小競り合いになることもあったそうですが、そんな衝突すら夫婦の会話の良いネタになっていたそうです。

高齢者の孤独感や疎外感を軽減するためや、認知症を予防するために、様々な催しや交流の場が設けられていますが、そういう場に出掛けることに抵抗がある人もいるでしょう。わざわざ出かけなくても得られる「ほどよい感情の起伏」が、シニア・カップルのマンション生活に足りないもののひとつであることが分かりました。

情報戦略室 山田美里
http://urc.or.jp/event/column-20190823
8月
30
「坂道」都市の造形と平たい都市の叡智
8月 30 @ 09:00
streets in tokyo

東京・神楽坂通りと裏路地

乃木坂、六本木けやき坂、今ではアイドルのイメージが強い名のその坂道は、東京の都心部にあります。

一方で、福岡市の中心部は、総じて平坦で、徒歩や自転車の移動が比較的容易なまちです。その名に惹かれて人々が集まるような、広く名の知れた「坂道」をあまり聞きません。桜坂から平尾、小笹にかけてなど、一部起伏に富むエリアはありますが、「赤坂」「桜坂」は、エリアの地名で、特定の坂道をさすものではありません。

東京に行くと、神楽坂界隈を散策します。文字通り、神楽坂通りという名の坂道にはさまざまな店舗が並んで賑わい、さらに裏路地の小さな名もなき坂にも穴場的な店舗が点在し、独特の風情を感じさせます。都市観光は、駅前やメインストリートの大型商業施設とともに、こうした坂道や路地の個性的な魅力が大事なように思います。坂のあるまちの自然な造形は、見上げると一瞬躊躇するものの、上った先の風景、そこから見下ろす景色など、変化に富んだ魅力や発見を期待させます。

然るに、都心部の天神や博多エリアは、ほぼ坂のない街です。視覚的な魅力は、坂道の自然な造形が期待できない分、ビル・建物、街路など人工物に頼る部分が大きくなります。路地には個性的で魅力ある店舗等は多数あるものの、初めて訪れる人は、賑わいの先にある個性、ビルに隠れたその魅力に気付くことは難しいのではないでしょうか。

神戸、長崎、函館など、坂の魅力で多くの観光客を引き付ける観光都市の「坂道グループ」に負けないよう、本来、広範囲に散策しやすい「平たい都市」福岡市の強みをいかし、新たな発見、隠れた魅力を予感させる視覚的な仕掛けを随所に設けて、市民だけでなく、訪れる人にも、「その先の福岡」の個性や魅力を知ってもらいたいものです。

情報戦略室 畠山 尚久
http://urc.or.jp/event/column-20190830
9月
4
広東・香港・マカオ大湾区でのビジネスチャンス
9月 4 @ 09:00

上からマカオにて①、マカオにて②、香港にて、深センにて

2019年7月5日、「福岡市-広州市 友好都市40周年記念セミナー」にて、在広州日本総領事館の石塚総領事の講演「広東・香港・マカオ大湾区構想の現状と展望」を聴きました。

「広東・香港・マカオ大湾区構想」とは、香港、マカオ、広州、深センのエリアを一体化させて大経済圏を築く構想です。2016年に広東省から出てきたアイディアで、2018年には国家級プロジェクトに昇格し、2019年2月には「広東・香港・マカオ大湾区発展計画綱要」が発表され、2022年までに世界的ベイエリアの基礎を形成し、2035年までに完成させる目標が掲げられたそうです。

香港・マカオ間は橋の開通により、広州・香港間は高速鉄道の開通により、それぞれ45分程度での移動が可能となったように、インフラ整備も着々と進んでいます。
躍進的発展の進む広東・香港・マカオ大湾区への進出が日本企業にもたらすチャンスは以下の5点との紹介がありました。
① 6,600万人が住む域内総生産(GRP)11兆元(約160兆円)を超える高度成長市場(GRP成長率も全国平均を上回る6.8%)
→巨大マーケットの取り込み
② (大陸や香港、海外からの)優秀な人材が集まるイノベーション拠点
→高度人材の確保、イノベーション活力の取り込み
③ビジネスコストの低下
→競争力強化
③ 規制緩和の先行(e.g.緩和されている規制が香港を経由して大湾区にも適用される可能性)
→金融サービス業など
⑤新領域への参入
→スマート製造(AI、IoT+ものづくり)、ヘルスケア・バイオ医薬、新エネ・環境

広東・香港・マカオは中国政府にとって重要な経済圏であり、この「広東・香港・マカオ大湾区構想」を何があろうとも推し進める方向であるように感じました。

情報戦略室 山田美里
http://urc.or.jp/event/column-20190904
9月
18
雄安新区、スマートシティの先駆け
9月 18 @ 09:00
①歩行者に道を譲る清掃ロボット、②全自動運転バス、③顔認識で入るスーパーマーケット

①歩行者に道を譲る清掃ロボット、②全自動運転バス、③顔認識で入るスーパーマーケット

中国・北京の南西およそ100㎞の場所に位置する雄安新区(ゆうあんしんく)は今、世界から注目されている都市のひとつです。つい先日の8月28日、東京都の小池知事もここを視察していました。

2017年に発表された「雄安新区」構想は、「千年の大計」と呼ばれる習近平政権の一大国家プロジェクトであり、2050年までに広さ1,770㎢にも及ぶ新しいタイプの都市を誕生させることが目標です。目玉は、IoTやAI等の技術を用いて、生活インフラや基礎インフラをインターネットに接続して管理する「スマートシティ」の創出です。

現在、雄安新区の「先行開発区」では、阿里巴巴集団(アリババ)のクラウド技術を使った百度(バイドゥ)の自動運転「アポロ計画」が試行されています。また、顔認証で支払いをする無人スーパーやホテルも開業しています。大手IT企業が進出し、今まで人間が行っていたことが、次々と自動で行われるようになりつつあるのです。

深センや上海に比べ、天の利(時期)や地の利(位置)に恵まれてないため、雄安新区の建設はまだ大々的に進んでいるようには見えません。しかし、エネルギー分野のスマートグリッド、人流と物流を統合した移動監視システム、さらに顔認証やキャッシュレスなど、雄安新区は、新しい技術の力で、より精緻な需給システムの構築や都市ガバナンスモデルの転換に、一縷の希望をもたらしています。

主任研究員 唐 寅
http://urc.or.jp/event/column-20190918
9月
27
福岡アジア文化賞歴代受賞者からのメッセージ
9月 27 @ 09:00

福岡アジア文化賞第30回記念「歴代受賞者によるシンポジウム」展示物

福岡アジア文化賞第30回記念「歴代受賞者によるシンポジウム」(9月10日(火)於福岡国際会議場)より、印象に残った受賞者らのメッセージをご紹介します。
※メッセージは、著者による理解や意訳を含みます。

2018年(第29回)学術研究賞 末廣昭氏:
アジアの変化の“スピード”に目を向けること。フランスは高齢化社会(高齢化率7%)から高齢社会(高齢化率14%)に到達するのに114年を要し、日本は24年、韓国やベトナムにおいては10数年というスピードで到達している。

2017年(第28回)大賞 パースック・ポンパイチット氏 & クリス・ベーカー氏:
Quantity of payment(収入の量)よりもquality of life(生活の質)への意識が高まってきている。出版の時代とは異なり、インターネットや翻訳等の技術が、多様な文化に触れることを容易にした。

2015年(第26回)芸術・文化賞 ミン・ハン氏:
グローバル化は経済だけではなく、文化においても起こっている。我々はグローバル化によってもたらされた“新しい文化の価値”に対応しなければならない。文化と経済の境目は薄まり、文化は、より高く深いレベルで経済に影響を与えている。

2012年(第23回)芸術・文化賞 キドラット・タヒミック氏:
ハリウッドのスーパーヒーローではなく、地域のローカールヒーローを取り戻すこと。美しい棚田は祖先らのたゆまぬ努力の上に存在する。我々は、そうした身近なヒーローの超越的な能力を称えなければならない。

シンポジウムでは、「伝統的文化への理解」、「文化とグローバル化の融合」、「経済と文化のバランス」などの言葉が飛び交い、さらにはそこに、明確な解や数値化できる指標がないとの指摘が加えられました。これらの実現が、どのような形でなされるのか、論理的に表現できるものなのか、その奥深さに思いを馳せると、私の脳はしばしの混乱状態に陥りました。

研究主査 菊澤育代
http://urc.or.jp/event/column-20190925
9月
30
有人ドローンにみる「Future is Now(未来は今ここにある)」
9月 30 @ 09:00

(最上部)張氏講演スライド、(2枚目以下)「人を運ぶドローン」試乗体験

2019年9月20日、「福岡市-広州市 友好都市40周年記念セミナー」にて、中国広州市に本拠地を置くドローン開発企業eHANG(イーハン)の副総裁張氏の講演を聴きました。

2016年に世界で初めて乗客を乗せることができるドローン(UAV/無人航空機)を発表したeHANGは、中国のほか、オーストリアやオランダ、カタールなどで飛行試験を行ってきています。また、広州市政府とMoUを結び、有人ドローンの更なる開発や市政府専用のドローン・コントロール・センターの共同開設を目指し動き始めています。広州市と友好都市である福岡市にも自社サービスを提供していきたいと張氏が話されたので、福岡市で具体的にどのような活用例を想定しているか質問しました。

福岡では、①離島へ物資の運搬、②観光面(名所の遊覧飛行など)での活用、③公共サービスとして臓器や血液、医療用品の運搬での活用が考えられると答えてくれました。また、すでに無人ドローンでの活用事例も報告されてはいますが、災害救助のために、有人ドローンにより、遭難者を搬送することもできるようになるのではと話されていました。

後日、市役所ロビーでeHANGのドローンに試乗させてもらいました。機内前方に通常あるはずの操縦ハンドルは無く、この機体にはパイロットは乗らないのだと改めて認識するとともに、張氏が講演の最後に話された「夢はもうすぐ実現します、『Future is Now』です」という言葉も思い出しました。

eHANGの「人を運ぶドローン」の展示・試乗体験は、福岡市役所1階ロビーで10月6日(日)まで行われています。皆さんもぜひ未来(感)を感じてみてください。

情報戦略室 山田美里
http://urc.or.jp/event/column-20190930
10月
7
ジェンダーに基づく固定的役割意識とメディア
10月 7 @ 09:00
当日配布資料および石川氏の講演の様子

当日配布資料および石川氏の講演の様子

2019年9月7日、「福岡国際女性シンポジウム Media×Gender ~Moving towards 203050!~」に参加しました。「女性とメディア」は、1995年の第4回世界女性会議(北京会議)で採択された北京行動綱領にも含まれており、ジェンダーを考える際に、メディアは重要な論点であることがわかります。

冒頭、石川雅恵氏(UN Women:国連女性機関 日本事務所長)の基調講演がありました。
メディアは、“映像”、“文字”、“音”などを通じて何かを表現するものであり、人々の行動にも影響を及ぼしていますが、講演の中で、「ジェンダーに基づく固定的役割意識」(「女性だから」、「男性だから」、こうすべきという意識)の形成にも影響を与え得ることが指摘されました。メディア情報の中には、「女性らしさ」「男性らしさ」という表現が含まれているものも少なくないためです。特に懸念として挙げられたのは、そのような意識が子供の頃に形成され、男女問わず、その後の人生の選択に大きく影響することでした。

後半のパネルディスカッションでは、本田哲也氏(株式会社本田事務所 代表取締役/PRストラテジスト)から、イギリスにおけるジェンダーステレオタイプ表現に関する規制(https://www.asa.org.uk/news/gender-stereotyping-new-rule-and-guidance.html)や、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルにおいて、SDGsやジェンダーを基準に、世界中の広告等が審査されるという事例が紹介されました。

個人が性別的役割ということに捉われずに、個々の生き方を選択できる社会になっていけばと考える機会となりました。

研究主査 中村由美
http://urc.or.jp/event/column-20191007
10月
11
テレワークの新たな可能性
10月 11 @ 09:00

(上)イメージ写真、(下)会場配布資料

2019年9月6日、「テレワークによる障がい者雇用促進セミナー」に参加しました。2018年4月より法定雇用率が0.2%引き上げになったことも背景に、障がいのある方の雇用に対する関心は高まってきています。テレワークは、ICT(情報通信技術)を活用して時間や場所に捉われない柔軟な働き方を可能にする方法です。

まず、合同会社ムーブの小島浩一氏(代表社員)より、在宅テレワーク就労支援の取り組みについて紹介が行われ、次に先進事例報告として、西部ガス絆結株式会社の船越哲朗氏(代表取締役社長)および社員の大蔵健司氏・友谷由紀子氏より、「苦手を補い合う」という考えのもと組織運営を行っているというお話や、テレワークの実演が行われました。最後に、(株)テレワークマネジメントの倉持利恵氏(障がい者テレワークコンサルタント)より、テレワークによる働き方の事例が紹介されました。

特に印象的だったのは、船越氏のお話の中の「障がいがあっても納税者になり、高齢者を支える」という言葉でした。今回のセミナーを通じて、テレワークのような柔軟な働き方が、難病や障害による体調面の不安や、通勤が困難なため働くことに難しさを抱えている人にとって、就労機会だけではなく、「社会に貢献し、社会で生きる」という希望をもたらす手段にもなり得るのだと気づきました。

研究主査 中村由美
http://urc.or.jp/event/column-20191011
10月
18
花の価値と可能性~Flowers of Romance 花に想いを,万葉の時代から~
10月 18 @ 09:00

花の写真2枚

福岡市は,「一人一花」運動*1を進めています。まちなかの花壇など,「一人一花」のサインを見ることも増えました。市民らの協力のもとに,まちに花を増やす取組みは,パリ(仏),コペンハーゲン(デンマーク)など海外の都市にもみられます。
自然豊かな野辺に咲く花は美しいものですが,まちの中では,人の手がなければ,花を増やすことは困難です。植栽,手入れなど,人の意思=想いがあって,まちは花で彩られます。

まちの魅力づくりは,都市の普遍的な課題です。自然や景観,歴史的な遺産など,固有の魅力をいかすとともに,人の想いや創意工夫で,まちの魅力を高める取組みが必要です。各都市が知恵を絞る中で,各所にアート作品を展示し,まるごと美術館などと称して,まちの回遊を促す取組みもみられます。花があふれるまちも,アート作品同様,訪れる人の回遊を促す可能性を持っています。
生け花(華道)が,人の創意工夫で,花に新たな価値を付加し,野花とは異なる感動を人に与えるように,人の想いと感性で,まちを彩る花が,心に残る風景を創り出すかもしれません。

万葉集にみるように,古くから,人は花に想いを映し,託して,花に,目で愉しむ以上の,特別な価値を見出してきました。散る花にさえ儚い想いを重ねるほど~e.g.風に散る 花橘を袖に受けて 君が御跡と思ひつるかも・詠み人知らず~に。
まちは人がつくるものです。人の感性が,花とまちを結びます。無機質なまちよりは,人の想いが感じられるまちの方が,魅力的なはずです。花に寄せる人の想いと,花をいかす人の創意工夫で,まちを美しく。誰もが気軽に参加できる一人一花で,美しく。

情報戦略室 畠山 尚久
http://urc.or.jp/event/column-20191018


*1: 一人一花運動:市民・行政・一人ひとりが, 公園や歩道,会社,自宅など,福岡市のありとあらゆる場所での花づくりを通じて,人のつながりや心を豊かにし,まちの魅力や価値を高める,花によるまちづくりを目指す取り組み(福岡市「一人一花」ホームページより)

11月
11
最後の一本の藁
11月 11 @ 09:00

※写真はイメージです。

先日、語学学校の英語講師として来日し福岡に住んで1年半というアメリカ人と話す機会がありました。就労ビザの在留期間は数年残っているものの、30代後半になる彼女は、なるべく早く結婚し出産したいらしく、来年は欧州のおそらくスペインに移住することを検討しているそうです。日本には、自分と似たような文化背景を持ち、なおかつ英語でコミュニケーションできる男性との出会いが少ないことが理由だそうです。

しばらくアメリカに帰るつもりはないように聞こえたので、そもそも何故日本に来たのか尋ねたところ、最近アメリカでネタのようによく使われているという諺を交えて話してくれました。白人至上主義がひどくなり、人種差別の対象になりやすい背景を持つ彼女にとって、アメリカが居心地の良い国ではなくなってきてしまったことが来日を決めた理由だそうですが、2017年に国の方向性が大きく変わったことは、「the last straw(最後の藁)」だったそうです。

最後の藁というのは、「The straw that broke the camel’s back.(ラクダの背中を折った藁)」という諺からきています。ラクダの背中に麦わらをどんどん載せていったところ最後の一本でついに背中が折れてしまったという状況をあらわすこの諺は、日本の諺の「堪忍袋の緒が切れた」と似たような意味で、積もり積もった我慢が限界に達し爆発した、最後の一押しになったという時に使うことができます。

南部貧困法律センターによると、アメリカで活動するヘイトグループは1,020団体(2018年)で、1999年からの調査で過去最多を記録し、このうち白人愛国主義団体は、2017年から約50%増え148団体となったそうです。(https://www.splcenter.org/fighting-hate/intelligence-report/2019/year-hate-rage-against-change

幼い頃から、飲食店や商店で無視されるなど人種差別を感じることはあったそうですが、2017年以降、仲の良い友人の親族や仲間がSNSで白人至上主義を発信するようになるなど、間接的な交友関係にまで影響を及ぼし始めたそうです。長年住んだ国を離れる決心をするほど、彼女にとって辛い経験が重なったことが推測できました。

情報戦略室 山田美里
http://urc.or.jp/event/column-20191111
11月
22
人の頭とコンセプト ~“マーケティングは死んだ”か~
11月 22 @ 09:00
イメージ写真

イメージです

「アタマ、使ってる?」
私が好きな映画の、ポスターのキャッチコピー(公開時)です。

情報戦略室では、研究活動や福岡市の施策に資する情報(データ等)を収集、分析し、関係者への提供や外部に発信しています。
民間企業では、情報を収集、分析して、戦略を練ることは、マーケティングという概念で語られますが、活動領域は市場調査から物流、広告、販売まで幅広く、最近ではビッグデータの解析まで、その範疇に入るようになりました。

一方で、マーケティングよりも手段ありきで、消費者の誘導を主眼に置いたやり方も見られます。まず市場を制して、後々優位に進めるためです。乱立する電子決済で、最初に大きな見返りを提供してシェアを取りに行くような例もみられます。
このほか、作為的な情報で印象操作するような、「ステルス・マーケティング」も一時期話題にのぼりましたが、これらは、本来のマーケティング活動からは逸脱したものにみえます。

より早く答え(=結果)を求められる時代、手段を優先するのも無理はないかもしれません。
かつて、何人かのミュージシャンが、「ロックは死んだ」と、主に商業化された音楽シーンを揶揄しました。スピーディーな行動が求められる時代、「マーケティングは死んだ」のでしょうか。
もちろん答えは否です。今も、あらゆる企業や組織でマーケティング活動を行っています。手段だけでは導けない戦略があるからにほかなりません。

最近では、AI(人工知能)が、ビッグデータを瞬時に解析し、人が気付かないような事実を導くのも事実ですが、そこから先にどのような仮説を導くかは、人の力、センスが必要です。
事実としての情報をどう分析し、活用するかの仮説を導くかの視点~利根川進氏は「コンセプト」と表現*1~こそ、マーケティング活動の本来の目的で、その先に広がる無限の可能性であり、人のクリエイティビティが発揮される余地が大きい部分です。
「コンセプト」は、未知の世界を夢見て描く人の創造性が重要で、同時に事実に基づく客観的で、恣意的ではない視点が必要。マーケティングに携わる人間は、“夢見るリアリスト”であるべきといえるでしょう。

私も、日々冒頭の問い掛けを意識しながら、より有益な「コンセプト」を見つけていきたいと思います。

情報戦略室 畠山 尚久
http://urc.or.jp/event/column-20191122


*1: 「精神と物質 分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか」(立花隆・利根川進1990年文藝春秋社刊)の中で、ノーベル生理学・医学賞受賞の利根川進氏が調査・研究からの仮説の導き方について「コンセプト」の重要性を説いている

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