RSS Feed

スタッフコラム

(公財)福岡アジア都市研究所(URC)のスタッフが、各々の研究活動や交流事業を通じて学んだこと、印象に残ったことなどを紹介します。ご関心のあるタイトルをクリックすると、コラム全文を読むことができます。
11月
11
最後の一本の藁(山田)
11月 11 @ 09:00

※写真はイメージです。

先日、語学学校の英語講師として来日し福岡に住んで1年半というアメリカ人と話す機会がありました。就労ビザの在留期間は数年残っているものの、30代後半になる彼女は、なるべく早く結婚し出産したいらしく、来年は欧州のおそらくスペインに移住することを検討しているそうです。日本には、自分と似たような文化背景を持ち、なおかつ英語でコミュニケーションできる男性との出会いが少ないことが理由だそうです。

しばらくアメリカに帰るつもりはないように聞こえたので、そもそも何故日本に来たのか尋ねたところ、最近アメリカでネタのようによく使われているという諺を交えて話してくれました。白人至上主義がひどくなり、人種差別の対象になりやすい背景を持つ彼女にとって、アメリカが居心地の良い国ではなくなってきてしまったことが来日を決めた理由だそうですが、2017年に国の方向性が大きく変わったことは、「the last straw(最後の藁)」だったそうです。

最後の藁というのは、「The straw that broke the camel’s back.(ラクダの背中を折った藁)」という諺からきています。ラクダの背中に麦わらをどんどん載せていったところ最後の一本でついに背中が折れてしまったという状況をあらわすこの諺は、日本の諺の「堪忍袋の緒が切れた」と似たような意味で、積もり積もった我慢が限界に達し爆発した、最後の一押しになったという時に使うことができます。

南部貧困法律センターによると、アメリカで活動するヘイトグループは1,020団体(2018年)で、1999年からの調査で過去最多を記録し、このうち白人愛国主義団体は、2017年から約50%増え148団体となったそうです。(https://www.splcenter.org/fighting-hate/intelligence-report/2019/year-hate-rage-against-change

幼い頃から、飲食店や商店で無視されるなど人種差別を感じることはあったそうですが、2017年以降、仲の良い友人の親族や仲間がSNSで白人至上主義を発信するようになるなど、間接的な交友関係にまで影響を及ぼし始めたそうです。長年住んだ国を離れる決心をするほど、彼女にとって辛い経験が重なったことが推測できました。

情報戦略室 山田美里
http://urc.or.jp/event/column-20191111
11月
22
人の頭とコンセプト ~“マーケティングは死んだ”か~(畠山)
11月 22 @ 09:00
イメージ写真

イメージです

「アタマ、使ってる?」
私が好きな映画の、ポスターのキャッチコピー(公開時)です。

情報戦略室では、研究活動や福岡市の施策に資する情報(データ等)を収集、分析し、関係者への提供や外部に発信しています。
民間企業では、情報を収集、分析して、戦略を練ることは、マーケティングという概念で語られますが、活動領域は市場調査から物流、広告、販売まで幅広く、最近ではビッグデータの解析まで、その範疇に入るようになりました。

一方で、マーケティングよりも手段ありきで、消費者の誘導を主眼に置いたやり方も見られます。まず市場を制して、後々優位に進めるためです。乱立する電子決済で、最初に大きな見返りを提供してシェアを取りに行くような例もみられます。
このほか、作為的な情報で印象操作するような、「ステルス・マーケティング」も一時期話題にのぼりましたが、これらは、本来のマーケティング活動からは逸脱したものにみえます。

より早く答え(=結果)を求められる時代、手段を優先するのも無理はないかもしれません。
かつて、何人かのミュージシャンが、「ロックは死んだ」と、主に商業化された音楽シーンを揶揄しました。スピーディーな行動が求められる時代、「マーケティングは死んだ」のでしょうか。
もちろん答えは否です。今も、あらゆる企業や組織でマーケティング活動を行っています。手段だけでは導けない戦略があるからにほかなりません。

最近では、AI(人工知能)が、ビッグデータを瞬時に解析し、人が気付かないような事実を導くのも事実ですが、そこから先にどのような仮説を導くかは、人の力、センスが必要です。
事実としての情報をどう分析し、活用するかの仮説を導くかの視点~利根川進氏は「コンセプト」と表現*1~こそ、マーケティング活動の本来の目的で、その先に広がる無限の可能性であり、人のクリエイティビティが発揮される余地が大きい部分です。
「コンセプト」は、未知の世界を夢見て描く人の創造性が重要で、同時に事実に基づく客観的で、恣意的ではない視点が必要。マーケティングに携わる人間は、“夢見るリアリスト”であるべきといえるでしょう。

私も、日々冒頭の問い掛けを意識しながら、より有益な「コンセプト」を見つけていきたいと思います。

情報戦略室 畠山 尚久
http://urc.or.jp/event/column-20191122


*1: 「精神と物質 分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか」(立花隆・利根川進1990年文藝春秋社刊)の中で、ノーベル生理学・医学賞受賞の利根川進氏が調査・研究からの仮説の導き方について「コンセプト」の重要性を説いている

12月
11
アフリカでビジネスを始めるのにお勧めの国は?(山田)
12月 11 @ 09:00

アフリカの地図

2019年9月に開催された「アフリカ・イノベーションセミナー」(主催:ジェトロ福岡、国際ビジネスセミナー実行委員会)に参加し、アフリカでの事業展開に取り組んでいる方々のパネルディスカッションを聞きました。

「アフリカでビジネスを始めるのにお勧めの国は?」の質問に対し、4名のパネリストらから、ルワンダ、ナイジェリア、ケニアの名前があがりました。いずれも英語が主要言語のひとつになっており、英語でコミュニケーションをとることのできる人材の豊富さがビジネスにおいて鍵となるそうです。ルワンダは賄賂に対する取り締まりが厳しくアフリカで最も汚職が少ない国と言われていること、国際機関が多く立地するナイロビを首都とするケニアは教育水準が高く4Gなど通信インフラが普及していること、ナイジェリアは人口増加が著しく2019年の約2億人から2050年には4億人へと倍増すると推計されていること(国連「人口推計2019」)などが、ビジネスを展開する際の魅力であるようです。

私はアフリカを訪れたことがなく、「ナイロビの蜂」や「ホテル・ルワンダ」「ブラッド・ダイヤモンド」などの映画をきっかけとした浅い知識しか持っていないため、このようなセミナーを通じてアフリカの新たな一面を学べることは貴重な機会だと思いました。今後アフリカに関して学ぶ機会を増やしていきたいと考えています。

情報戦略室 山田美里
http://urc.or.jp/event/column-20191211
12月
16
看護の現場から(山田)
12月 16 @ 09:00

※写真はイメージです。

この夏、二人の高校時代の同級生と久しぶりに会いました。二人とも病院で看護師として働いているので、最近の職場の様子をたずねました。

入院患者は高齢の方が多く、50の病床は満床であるにも関わらず、食事が必要な方は2名だけで、他の方は胃ろうなどの経管栄養法や静脈栄養法により栄養を摂取していることを一人が話すと、別の病院で働くもう一人も似たような状況であると言いました。社会の高齢化に直面する職場のひとつだと改めて認識しました。

看護助手と二人で1日に5名程度の患者さんの入浴介助を行い、床ずれを防ぐための体位変換も定期的に行っているそうです。看護師の高齢化も進むなか、患者さんを抱きかかえたり持ち上げたりする際の腰への負担に苦しんでいる年上の同僚も多いと同級生の一人が話しました。勤務する病院が介護職員を雇ってくれれば少しは負担が軽くなるのに、病院が求人を行う気配はちっともないそうです。もう一人の同級生の病院では介護職員を雇ってくれたらしく、随分楽になったといいます。

2019年4月から施行された新たな外国人材受入れのための在留資格「特定技能」の対象となる産業分野には介護分野が含まれています(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html)。二人とも外国人の同僚はまだ居らず、国際という言葉とは縁遠い職場だと考えているようでしたが、今後その可能性が出てくるかもしれません。

情報戦略室 山田美里
http://urc.or.jp/event/column-20191216
12月
25
終わりの始まり(唐)
12月 25 @ 09:00
①ホテル近くの光景、②会場となった大学キャンパス、③授賞式会場にあるLED電光スクリーンは圧巻

①ホテル近くの光景、②会場となった大学キャンパス、③授賞式会場にあるLED電光スクリーンは圧巻

11月22日~24日、今年のアジア都市景観賞授賞式参加のために香港に行ってきました。開催直前に現地の情勢が不安定となり、我々の香港行きも危ぶまれましたが、結果的に7か国150人以上が参加した盛会となりました。

授賞式会場は香港高等教育科技學院(Technological and Higher Education Institute of Hong Kong)柴灣キャンパスにありました。この大学の規模は大きくはありませんが、ツインタワーを擁するキャンパスはユニークで数々のデザインアワードも受賞しています。また、メイン会場の壁に備え付けられている幅20mもあるLED電光スクリーンには驚かされました。とりわけ印象に残ったのは、おしゃれな学内レストランでのビュッフェランチで、学食とは思えない美味しい洋風料理を次々と堪能できました。

 昼間の学園は、日差しが燦燦と降り注ぐなか、学生の姿を見ることもなく、静寂そのものでした。教室横の掲示板には政府批判やストライキを呼びかける張り紙が張ったままで、水死した女子学生を悼む折り紙の鶴たちが佇んでいました。中国大陸出身者への怒りをあらわにした壁新聞を横目に、警備員が出入りする者のチェックを厳しく行っていました。

香港情勢の混迷を象徴する場面は、式典の会場にもありました。背景ボートには5年前の「雨傘運動」を彷彿させるようなデザインが印されていて、そのデザインボートを背景に、香港政府の代表が景観賞主催団体に感謝の楯を贈呈していました。

 「改革・開放」が始まった40年前までの香港は、中国大陸と外の世界をつなぐショーウインド的な存在でした。テレサ・テンたちの甘い歌声に乗せられ、大陸の若者が香港に憧れ、外の世界に夢と希望を託しました。また世界からのヒト、モノ、資金も、ここ香港を経由して大陸になだれ込んでいました。しかし時が流れ、今の香港にはかつてのような眩しさは感じられません。

「東洋の真珠」と呼ばれていた香港にとって、2019年が「終わりの始まり」の年でないことを祈ります。

主任研究員 唐 寅
http://urc.or.jp/event/column-20191225
1月
8
防災シミュレーションゲームを通じた意見交換の大切さ(山田)
1月 8 @ 09:00

写真:区画整理が完了した順に住宅街の通りに花の名が付けられ、パネルが設置されている。パネル中央部の赤い点は建設規制に関わる道路中心を示す。

発災からまもなく25年となる阪神淡路大震災で大きな被害を受けた兵庫県神戸市長田区野田北部地区を訪問した際(2019年度URC総合研究「防災」シリーズ02)、この地域のまちづくりに長年携わっている河合氏(野田北ふるさとネット事務局長・野田北部まちづくり協議会会長)から伺ったお話のなかで印象に残ったことのひとつに、災害後の状況を想像しながらプレイする防災ゲームによる意見交換の大切さがあります。

被災者は、発災直後から何年にも渡る復興期において、様々な選択を迫られます。自らの命を守るための行動に始まり、近隣住民の救出から避難所での過ごし方、さらには生活再建と市街地復興の両立実現にまで、個人だけでなく地域コミュニティの集団意向が意思決定に影響してきます。そして意思決定に関係する人が増えれば増えるほど、決定までに時間を要します。住宅が密集していた野田北部地区における市街地整備のための合意形成は、特に長い時間が必要であったことをうかがい知ることができました。

その野田北部地区のまちづくりに深く関わった河合氏が日頃からの備えとして大切だと話してくれたのが、「クロスロード」()という防災シミュレーションゲームでした。これは、複数人でプレイするゲームで、被災後のあらゆる場面における行動判断をYesかNoか選びその理由を説明し、その後全員でその問題について話し合うものです。

例えば、「避難所に1000人が避難しているが、弁当が500個しか届いていない。避難所の運営側であるあなたは、弁当を配布する(Yes)か?配布しない(No)か?」の問いに対し、YesかNoかを答えます。Yesであれば、高齢者や子どもから先に配布するという理由がでるかもしれませんし、Noであれば、もう500個入手してから配るという理由がでるかもしれません。どちらが正解かというものではなく、このゲームを通じて、多様な考えや視点を知ることができます。

災害が発生したらまず自分の命を守ることが大事であり、その理由は自分の命があれば他人の命を救うことができるかもしれないからという河合氏の話は印象的でした。それに加え、発災直後から始まる長い復興期に備えるために、「クロスロード」のようなツールを使ってコミュニティにおける意見交換の機会をもつことも大切だと教えていただきました。

※【引用】クロスロードとは、阪神・淡路大震災で、災害対応にあたった神戸市職員へのインタビューをもとに作成された、カードゲーム形式の防災教材。「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」(文部科学省)の一環として、矢守克也氏(京都大学防災研究所准教授)、吉川肇子氏(慶應義塾大学商学部准教授)、網代剛氏(ゲームデザイナー)によって開発された。(出典:「内閣府防災情報のページ」http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h20/11/special_02_1.html

情報戦略室 山田美里
http://urc.or.jp/event/column-20200108
1月
15
「性別」と「性の違い」~ RAINBOW (*1) ~What Color Do You See?(畠山)
1月 15 @ 09:00
イメージ写真

イメージです

アンケート調査を行い、結果を分析する際、全体の値とともに、性別、年代別、居住地別などさまざまな属性分析を行うのが常です。
最近では、性別は、LGBTの配慮から、選択肢に「男性」「女性」を選べない人のために、「その他」を加えるところもあります。しかし、本来、「その他」にもさまざまな属性があり、一括りに扱うと、各属性の意見を正確には汲み取れません。
属性を聞くor尋ねるor問うことは、個人の分類というより、その属性の人はどう考えるかを把握するためのものですが、特に、性別は、デリケートな問題も含み、調査を行う機関は、どこまで配慮し、踏み込むべきか、模索している段階といえます。

一方で、「性別」に分析した場合、「男性」と「女性」には、明らかな傾向差がみられることが多く、意識や行動面などで異なる特性を示します。我々調査に携わる人間が、当たり前のように「性別」に分析してきたことを省みる必要はありますが、従来の「男性」と「女性」の特性を炙り出すことにも意義はあるはずで、全数分析だけでは見えてこない課題も浮き彫りになります。

アンケート調査は、主に多数派の意識を明るみにするため、数値の多い(高い)項目を重視しがちです。少数派の意見にも目を配る必要はあるものの、全てを扱うことは困難なため、可能なものには対応しながら、さらに少数派を深掘りするには、対象を絞った上で、調査手法、分析手法を、別途検討する必要があります。
いずれにしても、これまでの視点だけでは、十分でないことは間違いありません。多様性を受け入れ、インクルーシブ*2な考え方が求められる社会で、配慮を示すだけでなく、調査の手法、結果の分析まで含めて、どのような調査の形がベターなのか、より多様な意見を把握する方策の検討が求められています。

以下は余談です。
LGBTの視点が求められる時代。「男性」「女性」だけでも、完全に理解し合うことは難しいと感じるものですが、昔、ホストをしていた後輩の言葉に、全ての答えがあるようで、目から鱗が落ちる思いでした。
「男も女も、お互い尊敬し合っていれば、それでいいんじゃないですか」
違うからこそ、尊敬できることがあるということ。男性、女性、さまざまな人たち、理解し合えないことはあっても、お互い違うからこそ、尊敬し合うことが大事ということでしょう。
違いをタブー視することなく、多様性を尊重し、異なる立場の人がともに学び合い、高め合う社会が、目指すところである気がします。

情報戦略室 畠山 尚久
http://urc.or.jp/event/column-20200115


*1: Rainbow Flag: LGBTの尊厳を守る社会運動を象徴する旗。使われる多彩な色はLGBTコミュニティの多様性を表す


*2: インクルーシブ理念~ Inclusive:ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)から来る言葉で、あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合う」という社会政策理念。「排除的、排他的」を表す「エクスクルーシブ~exclusive」の対義語

Print This Page Print This Page