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「防災」シリーズ05:多様性を認める社会づくりと防災

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シリーズ05:

多様性を認める社会づくりと防災


✔ 男性は避難所運営本部?女性は炊き出し?
✔ 多様な人々の「違い」への配慮とは
✔ それぞれの役割を活かす社会づくりが防災力向上につながる
研究主査 中村由美
[Sep 11, 2019] 
チラシおよび当日配布資料

「女性のための災害対応力向上講座」チラシおよび当日配布資料

2005年、「防災基本計画」に男女共同参画の視点が初めて盛り込まれ、2013年に内閣府は「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」を策定しました。その背景には、これまでの災害時の経験から、避難所における男女のニーズの違いと必要な配慮について認識されるようになったことがあります。

防災における男女共同参画の観点や課題を学ぶために、「女性のための災害対応力向上講座:誰もが安心できる避難所の運営を目指して」(福岡県主催)に参加しました。一日のプログラムで、講演や避難時用グッズの制作体験、グループでの避難所図上訓練(HUG)*を体験しました。
* HUG:静岡県が開発した避難所運営を模擬体験するためのカードゲーム(参照元:http://www.pref.shizuoka.jp/bousai/e-quakes/manabu/hinanjyo-hug/about.html

男性は避難所運営本部?女性は炊き出し?
まず「災害対応に⼥性の視点を活かす重要性」と題して、浅野幸子氏*の講演が行われました。浅野氏は、過去の震災で避難所の運営にも関わってこられ、実際に避難所で女性の避難者のニーズの収集などの活動もされてきました。講演の中で、浅野氏は避難所運営に関する一枚の図を示しました。その図の中には、「男性は運営本部の中で、人手が足りずに、ほとんど休むこともできずに疲弊している」一方で、「炊き出しは女性が行っており、重い食材も女性が運んでいる」というような様子が描かれています。いわゆる固定概念としての男女の役割分担が、そのまま避難所運営にも当てはめられていることがイメージできます。

しかし、もしかすると、女性の中に指揮を取った経験がある人がいるかもしれません。男性の中に料理が得意な人がいるかもしれません。また、男女問わず、衛生・栄養・育児・介護の知識のある人がいるかもしれません。つまり、性別にとらわれずに、その人の個性や能力に基づいて役割分担を行うことで、スムーズに避難所が運営される可能性が高くなるのではないでしょうか。

減災と男女共同参画

減災と男女共同参画 研修センター提供(作者:同センター 浅野幸子氏)

とはいえ、非常時の、ただでさえ混乱と疲弊が生じている中で、適切な役割分担について判断を行うことは難しいと考えられます。そこで大事になるのが、日頃の取り組みです。例えば、居住地から域外に通勤している人が多い地域の場合、昼間に地震が発生したとすると、居住地の主な避難者は子育て中の女性、幼児、地域の学校に通う児童や中高生、高齢者です。このような人たちが避難所の主な担い手となることは想像に難くありません。このような事態を踏まえて、浅野氏は、日頃の避難訓練の企画や運営に女性や子供の視点を取り入れ、実践的な体制を整えていくことの重要性を述べました。
* 減災と男女共同参画 研修推進センター共同代表および早稲田大学地域社会と危機管理研究所招聘研究員

多様な人々の「違い」への配慮とは
一つの避難所には、様々な人たちが避難してきます。避難行動要支援者や要配慮者とされる乳幼児、高齢者、怪我や病気を患っている人、外国人居住者や旅行者、そのほか、性別も性自認も、宗教、食文化、生活習慣も異なる人たちが集まります。そうした一人ひとりの「違い」と状況に対して、いかに配慮していくべきなのでしょうか。

講座の最後に、参加者5~6名のグループに分かれてHUG(避難所運営ゲーム)を行いました。チームメンバーは避難所の運営者であるとの設定です。警固断層を震源とする地震が発生したという想定のもと、発災後、大雨の中で、避難所に次々と地域の人たちが避難してきます。年齢・地域・家族構成・性別・国・持病の有無、ペット連れ等、避難者の様々な情報を考慮しながら、メンバーは避難所運営に関する判断を瞬時に下さなければなりません。
当日のHUGの流れをもとに整理

HUGを終えた後、グループごとに判断に迷った点等の発表を行いましたが、果たして決定が最善のものだったのかどうか、とても迷ったとの意見が多くみられました。一人ひとりの「違い」への配慮が必要なことは頭では理解しているものの、“言うは易く行うは難し”だということを、実際にHUGを通じて痛感しました。

この迷いの理由は、誰にどのような配慮をすべきかが分からないことに起因すると言えます。一人ひとりの「違い」への配慮に関するヒントは、浅野氏のお話にあった「どのような手助けが必要かは当事者にしか分からないので、当事者に聞くことが大事。」という言葉にあるのではないでしょうか。その人に必要な手助けを聞き、また、当事者が必要なことを話しやすく、対応について一緒に考えていくことができるような体制や雰囲気づくりが、解決への糸口になるのだと感じました。

話し合う図

話し合う図(筆者作成)

それぞれの役割を活かす社会づくりが防災力向上につながる
今回の講座のテーマには「女性のための」と掲げられていましたが、講座を通じて気づいたのは、防災力向上のための鍵は、女性の役割はもちろん、性別に限らずに個々人の役割をどう活かすかを考えていくことにあるということでした。災害への「備え」という場合、ともすれば「わざわざ何かをしなければならない」と身構えてしまい、難しいことのように感じてしまうかもしれません。もちろん、備蓄品のように、非常時に向けて特別に準備していく必要があるものもあります。ですが、平時の社会のあり方が災害時にもそのまま活きると考え、日頃から多様性への認識を深め、個人の特性を活かせるような社会を作っていくことも、防災力向上には欠かせない取り組みであるとの気づきが得られた一日となりました。

 

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